3.勇者たちの役割
美女の言葉は、広間に静寂をもたらした後、再びざわめきを呼び起こした。
「この世界、エステリア王国において、恐るべき魔王が誕生いたしました。各地に魔物が跋扈し、城壁すら容易く破壊される事態となっております。勇者様方のみが、この危機を救う鍵……私どもの呼び声に応え、魔王を討伐していただけますでしょうか」
澄んだ声が響き渡る中、クラスメイトたちは顔を見合わせ、困惑の声を上げ始めた。「魔王?」「マジでファンタジー世界?」「映画じゃねーの?」――興奮と不安が入り混じった空気。だが、沖山修だけは眉をひそめ、心の中でつぶやいていた。
(あやしい……?)
修はよくこの手の小説を読んでいた。異世界転移もの、クラスごと召喚されるテンプレ展開。最初は華々しい歓迎、チート能力で無双してハーレム――だが、現実は違うパターンが多いのも知っていた。
クラスメイトのざわつきが大きくなる中、修の疑念は具体的な形を取っていく。あやしいというのは、この国が勝手に呼び出して使い捨てにするのではないかということだ。魔王退治の名目で、ただの道具として消費される。報酬も帰還の方法も曖昧なまま、都合よく切り捨てられる未来。
それとも、もっと厄介な話か。魔王は建前で、本当は戦争に駆り出されて人同士の争いに巻き込まれるのではないか。王国同士の領土争い、貴族の権力争い――召喚された「勇者」を最前線に放り込み、国内の犠牲を減らすための捨て駒。ステータス画面を見ても、チートとはいえ所詮Lv.1。使い捨てにされるには格好のスペックだ。
(油断できねえな……)
修はステータスをそっと閉じ、じっと美女と王の表情を観察し始めた。周囲の歓声とは裏腹に、彼の胸には冷徹な警戒心が芽生えていた。




