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追放勇者と隠された賢者屋敷  作者: 縮緬雑魚


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1.異世界転移

始めての投稿です。

誤字脱字設定ミスなど多々あるかと思います。

ご勘弁を・・・

沖山修は、どこにでもいるごく普通の高校二年生――のはずだった。

その日も変わらない一日のはずだった。昼休みが終わり、だるさをまとった空気の中でホームルームが始まる。 進路指導だの、生活態度だの、担任の声は眠気を誘うだけで、修は窓際の席でぼんやり外を眺めていた。 グラウンドの向こう、夏には甲子園を目指す野球部が汗を流す場所も、今は薄曇りの空の下で色を失って見える。

「――それから、来週の小テストだけどな」

担任が黒板を指で叩いた、その瞬間だった。

教室の蛍光灯よりもはるかに鋭い白光が、突然視界を塗りつぶした。 稲妻を至近距離で直視させられたような、刺すような輝き。耳鳴りとともに世界が遠のき、誰かの悲鳴が上がった気がしたが、それもすぐに光に呑み込まれていく。

――まぶしい。

――何が起きてる。

思考も言葉も、光の奔流に引きちぎられる。

やがて、ふっと足元の感覚が消えた。落ちる、というよりも、上も下も分からない場所に放り出されたような浮遊感。 修はとっさに机の縁を掴もうと手を伸ばしたが、その指先は空を切る。

次に目を開けたとき、そこは教室ではなかった。

白い天井も、落書きだらけの黒板もない。 代わりにあるのは、高い天蓋と、見上げるほど巨大なシャンデリアだった。 いくつものろうそくの炎が、宝石のように光を散らし、床に敷かれた赤い絨毯を金色に染めている。

「……どこだ、ここ」

かすれた声でつぶやき、修はゆっくりと上体を起こした。 足元には見慣れた指定のローファー、周囲には、見慣れた制服姿がいくつも転がっている。 教室にいたはずのクラスメイト全員が、同じように床に座り込んだり、呆然と立ち尽くしたりしていた。

だが、見慣れているのはそこまでだった。

彼らを取り囲むようにして、光沢のある鎧をまとった男たちが立っている。 肩当てや胸当てには紋章が刻まれ、腰には鞘に収められた長剣がぶら下がっていた。 魔法もドラゴンも出てきそうなファンタジー小説から、ページを破って飛び出してきたような騎士たちだ。

「剣……? コスプレ、じゃないよな」

一番近くの騎士を見て、修はごくりと喉を鳴らした。 鉄と油の混ざった匂い、金属同士が擦れ合う微かな音。制服越しに伝わる石畳の冷たさも含めて、どれもあまりに現実的すぎる。

騎士たちの視線が、一斉にこちらを向いた。警戒と緊張、そしてどこか期待を含んだ眼差し。

その視線の先――クラスメイトの輪の向こう、絨毯が一段高くなった場所に、二人の人物が座っていた。

一人は、年齢を重ねてもなお気品を失わない往年の男性。 銀に染まった髪をきちんと撫でつけ、額には宝石をはめ込んだ冠が光っている。 着込んだマントの縁には金糸で複雑な模様が縫い込まれ、その姿は、見慣れた歴史の教科書のどんな王侯よりも「王様らしい」王様だった。

もう一人は、その隣に優雅に立つ女性だ。 深い紺色のドレスが床まで広がり、胸元や袖口には細かなレースと宝石が散りばめられている。 黒曜石のような髪をまとめ上げ、白い首筋には真珠のネックレスがひときわ映えていた。 その整った顔立ちと、背筋の通った佇まいだけで、「美人」という言葉では足りないほどの存在感を放っている。

「……なんだよ、これ。夢、じゃないよな」

誰かが震える声で呟く。 けれど、誰もそれを否定できなかった。否定するための現実感を、ここはあまりにも欠いていた。

修は胸の鼓動を抑えようと深呼吸しながら、目の前の光景を必死に飲み込もうとする。

クラスごと、見知らぬ空間。

鎧の騎士。

冠を戴いた王と、豪奢なドレスの美女。

一つ一つの要素が、彼の中の常識を静かに塗り替えていく。

――ここは、俺たちの世界じゃない。

その直感だけが、はっきりと胸の奥で形になり始めていた。


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