第四幕:老人のワガママ
やあ、君。善は急げと言うように、君にとっての良い事は、後回しにしないことだ。他人が何と言おうともーー。
第三幕では、ボクらのアロンソは、旅の準備を整えた。ボクは彼に詩を贈った。
さて、物語は進むよ。
まずアロンソは、二人の女から反対された。ーーウマを連れて行こうとしたからだ。
ウマは役にたつ。アロンソの何倍もだ。連れ出されたら困る。
アロンソと痩せたウマを並べても、ウマの方が、まだ価値があった。
でも、アロンソも切実だった。
騎士を歩かせる?
この中年のスケルトンボディを鎧の重さで更に追い込まなきゃいけないのか?
身体を追い込んでも、筋肉がつく余地なんてない。死活問題だ。
「お前たちは、狂ったのか?少し考えたら、ウマが必要だとわかるだろう!」と聞き分けのない子どものようにしゃがみ込んだ。荒屋の外でねーー疲れたからだ。
村人から見つめられては、終わりだった。ウマをアロンソに渡さなきゃならなかった。
彼女たちは、アロンソの後ろ姿を見送るしかなかった。
今度、畑の土を耕す時には、家政婦もがんばるしかない。家畜のようにね。
アロンソは勝利を胸に宿していた。
村の舗装されてない土をウマが歩く。
天気は晴れていた。
風が吹く。彼の頬を撫でた。
彼はオケを頭から被っていた。兜がわりだ。時折、目の前に落ちてきた。
うっとおしかった。
彼の気分は台無しになった。
「戦いは、吾輩を呼ぶ」
彼は呟く。馬に跨ったまま。
馬の名はロシナンテだ。
彼はこの名前を言い聞かせた。
自分と馬にね。
村は貧しかった。田舎の村だ。
村のあるラ・マンチャ地方は、マドリード南東の内陸高原だ。
村は広大な乾いた平原の中にぽつんとあった。村の周囲にはーー終わりのない茶色の大地が広がっていた。
夏は灼熱の太陽が照り、
冬は冷たい風が吹き抜けた。
雨は少なく土壌は痩せてた。
そこに村を作ろうと思った最初のヤツの正気を疑うレベルだ。
「ロシナンテ、吾輩もお前も、のたれ死ぬかもなーー」とアロンソは馬の頭を優しく撫でた。
「苦労をかけるーー」と微笑みながら。
だけど、馬は応えてくれない。
だんだんと、アロンソは怒りに燃えた。
人が恋しくなった。
頭のいいヤツではない、素直に話を聞くだけの男がほしかった。
チヤホヤされたいーー。
すでに村の外にでて、時間も経っていた。
だが、彼は村に戻った。従者を求めた。
さびしかったからーー。
(こうして、第四幕は従者で幕を閉じる。)




