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ファウスト〜騎士道卿の幻視〜ドンキホーテ再生譚  作者: ヨハン•G•ファウスト


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1/7

第一幕:貧困貴族

やあ、君。


今回の物語は、ファウストが天に召された後の話だ。

彼の壊れた魂は、

次の誰かに受け継がれた。

もしかして、君の時代にも彼の魂を持つ者がいるかもしれない。


ボクが誰かって?

語り部ファウストさ。

ヨハン・ゲオルク・ファウスト。

君と共に物語を見つめる者であり、

君の友だ。


今度のファウストの魂を引き継ぐ者がわかった。17世紀初頭のスペイン。1610年頃ーーハプスブルク朝時代のラ・マンチャ地方のとある村で、彼は生まれた。

名をアロンソ・F・キハーノといった。

Fとはファウストだ。

この秘密の名はボクらだけが、

知っているーー。

ボクたちは彼を、アロンソと呼ぼう。

でもーーそれよりもっと有名な名前がアロンソにはある。

人は後に彼をこう名付けたーー

狂気の騎士ドンキホーテーーとね。


さて、アロンソはスペインの下級貴族だ。ヒダルゴと呼ばれる連中だ。

彼らは貴族なんだけど、血筋とは関係なしに、武力ーーつまり騎士のような剣と盾の力で国に貢献してた。

でも、戦う機会がなくなると、その生活は貧しくなった。

生きているだけで日々、貧しくなっていった。

最大の原因としては、スペインのもう一方の貴族ーーグランデスと呼ばれる上級の貴族たちの存在だった。

彼らはスペイン王族に、絶対の信頼を寄せられてた。

スペイン王国が黄金期の時代ーーつまりサービスタイムに、ちゃっかりと王国の植民地からの富の誘導、自分たちの領地を拡大していった。

君は不思議に思うだろう。

スペイン王国の黄金期が終わって、

王族には分け与えられる領地なんてない。なのに、グランデスが領地をどうやって、手に入れる事ができたのかってね。ーー答えは簡単だ。持っているヤツから取り上げればいい。

グランデスはヒダルゴから、領地を奪った。貧困を利用して、ヒダルゴの行動を操作し、彼らの持っていた領地を手に入れた。具体的なやり方の一つが、グランデスは金を貸したんだ。ヒダルゴにね。王族の力の喪失は、ヒダルゴたちにとっては致命的だ。

無職と大して変わらない。

だから、借りた金は返せない。

破滅を遅らせただけの、ブザマな延命だった。

本来なら国から生活を保障されても良かった。

だけど、国は弱っていく。余裕がない。

この国の中の賢い悪魔たちのせいでーー弱体化は一気に加速していった。


ヒダルゴには昔話みたいに、騎士の力を示す機会も、倫理も、満足できる報酬も何もなかった。


貴族は、どこの国でも体面を気にする、変な稼ぎ方ができない。

スマートなお金稼ぎをやらなきゃいけない。でもーー剣と盾じゃやる事は限られていて、絶対に稼げない。

時代への抵抗は無意味だった。


こんな中でアロンソは生まれたんだ。

何年も、何十年も、ヒダルゴとしての絶望的な環境下で生きなきゃならない。貧困により、剣も盾も鎧さえも失う。売っぱらって腹の足し。


アロンソは戦が欲しかった。

自分が生きて盛り返す、

または華々しく死ねる場所が欲しかった。だけど、この思いはヒダルゴにしかわからない。

彼の周りにいる人たちは、ヒダルゴではない。平民だったーー。

このままでは頭がどうにかなる。

だから彼は別のことに、夢中になる必要があった。

ーーそれが騎士の本だった。

色んな騎士に関する物語を集めた。

どんなに空腹でも、食事を切りつめて貪り読んだ。自分だけのスペースに、騎士の本を詰め込んで、図書館代わりにした。彼の逃げ場所だ。字も満足に扱えない平民たちには、不要なものだったーーだから、いつも燃やされそうな危険があった。


彼が50歳ぐらいになった時ーー痩せた背の高い中年男性が、そこにいた。

身体は骸骨のようにやせ細ってた。

灰色の髪と髭を持ち、顔は痩せたせいで一層長く、だけど目だけは鋭く輝いていた。まるでみすぼらしさから、自分を守るかのように。


彼の現実は、ある時、ポキって折れた。もしかして夜中だったかもしれない。読書中だったかもーー。


彼はボロボロの安楽椅子から立ち上がって宣言した。


「ああ!天よ!我が生き方を見届けたまえ!この孤独な男は騎士となり、正義を貫きますーー!

ああ!天よ!あなたの1人の騎士として、この世の中に戦いを!私のための戦いを、見つけに行こう思いますーー」


この叫びは、近くのお手伝いやら、姪とかも聞いて不安になった。

彼女らは、力づくでも本を燃やせば良かったと後悔した。


(こうして、第一幕は騎士により幕を閉じる。)

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