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氷姫の契約婚 虐げられた令嬢は炎の腕に抱かれる  作者: ななみ沙和


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思惑1

 翌日、澪はひどく身体を揺すられ、あわてて目を覚ました。

 衿首をつかんで布団から引きずり出してきたのは、銀子である。


「……どういうつもりなの!?」


 金切り声で質問――というよりも恫喝され、澪は恐怖で震える。

 横合いから澪を奪い返したのは、煌貴だった。


「俺の妻に何をする」

「つ、妻!?」


 銀子が絶叫する。

 澪は煌貴に抱きしめられながら、早くなった鼓動をなだめる。


「そうだ。見れば、わかるだろう。何が起きたかくらいは」


 煌貴が澪を抱きしめながらあざ笑う。

 澪は、彼の挑発を聞きながら逃げたくなるのを必死に堪えた。

 ここにいるのがいたたまれない。澪は、勝手に結婚を決めた常識知らずで、牢から逃げた不届き者だ。


「牢から抜け出して、朱夏の当主を誘惑したなんて……。どれほど恥知らずなの!?」


 銀子が澪の背後から衿を摑もうとした。

 しかし、煌貴はその手をつれなく払う。


「いい加減にしろ。牢から抜け出すなんて、できるはずがないだろう。澪を連れ出したのは俺だ。俺が牢から助け出して、澪をここまで連れてきた」


 煌貴の説明を聞き、銀子は目を見張った。


「なんですって……」

「そちらの当主と話をしたい。澪を妻にすると伝える必要がある。……もうすでに俺は澪と結ばれて、結婚を誓った。そちらの当主は俺の義父になるわけだから、一応の挨拶は必要だろう」


 銀子は頬を引き攣らせ、信じがたいというように首を横に振る。


「……氷姫ではなく、そんな娘と結婚するだなんて」

「いいから、早く当主のところに行ってくれ。あと朝食と着替えの用意を頼む。澪にはきれいな着物を着せてやってくれ。俺の妻になるわけだから」


 放埓な物言いに、銀子は唇を歪めた。

 叫びそうになるのをこらえるように肩を上下させたあと、勢いよく背を向ける。

 むやみやたらと足音を立てて部屋を出ていく銀子の後ろ姿は、澪を不安にさせるばかりだった。


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