姉妹
銀子は捕えられたあと、澪にほどこした細工について白状した。
冬至の前の澪が熱を出したあの日。澪に鍼を打ち、力を封じたことを。
涼が持つ氷の力を鍼に宿し、澪の力を凍らせる呪術を行使したのだという。
むろん、澪から氷姫の座を奪うための策略だったことは明らかだ。
銀子の計算どおり、澪は氷の網を出せなくなった。
氷姫の座は涼のものになった。
しかし、涼は氷姫としては力が弱く、しかも力はいっこうに強くならない。
仕方なく妖魔を集め、その気を奪うしかなかった。
そうやって無理やりに氷姫であり続けたのだ。
それでも、玄安家にとって、さしたる支障はなかった。
しかし、煌貴があらわれて、すべてを陽の下にさらしてしまった。
彼が澪の体内に刺さった氷の鍼を溶かしてくれた。
そして、澪と涼の立場は逆転することになったのだ。
煌貴と澪は座敷の上座に座らされていた。
その前に連れてこられたのは、涼と銀子だ。
紐でつながれ、その先を白燕が握っている。ふたりは無理やり座らされるが、銀子は露骨に顔をそらし、涼はどこを見ているかわからない遠い目をした。
「何か言いたいことがあるか?」
煌貴がふたりに問うが、銀子は憎々しげに澪と煌貴をにらみ、涼は無表情である。
「何もありませんわ」
「澪に詫びる気は?」
銀子は鼻で嗤う。
しかし、涼は表情を凍らせたまましとやかに頭を垂れた。
「……お姉さま、どうかお母さまをお赦しください。わたくしのために謀を企てたのです。すべて、わたくしに氷姫という栄誉を与えたいためですわ」
素直に詫びる涼に、澪はうつむく。
赦せないという思いと、これでも血を分けた妹なのだという情と、ふたつが胸の内に渦巻く。
「どちらにしろ、おまえたちには都で帝の裁きを受けてもらう。護国四家の罪を裁けるのは、帝だけだからな」
煌貴は突き放すように告げる。
真の氷姫である澪を陥れた罪は、帝だけがどう罰するか決められる。
もはや流ではどうにもできず、当主としての適性にさえ疑問符をつけられるありさまなのだ。
「承知しました。わたくしたちはもはや帝の慈悲にすがるのみ。どうぞ都にお連れください」
涼は深々と頭を下げる。そして、付け加えた。
「……お姉さま、ごめんなさい」
澪は胸を衝かれた気になった。
銀子が間にいたせいで、ふたりは関係をうまく結ぶことができなかった。
もしかしたら、違った未来があったかもしれないのにと思うと、目の奥が痛くなる。
「……涼、わたしは、あなたを赦すわ」
澪の言葉を聞き、涼はさらに深く頭を下げた。




