再会
その船には暁の女神が乗っているという。
「おお、こちらが噂に名高い暁の女神様でいらっしゃいますか。お目にかかれて光栄です。」
船を訪れた商人は、甲板に姿を見せていた少女の前で帽子を脱ぎ膝を折って礼をした。
船に女を乗せるのは縁起が悪いと言われる中、リナは幸運の印として崇められるようになっていた。
何せたまたま難破している海賊船を捕まえたり、たまたま嵐を避けて通ったり、好天に恵まれ予定より早く荷を下ろしたところで引き返しに駄賃の良い積み荷を得たりと、商売がかなりうまく行っていたからだ。
だが船員たちには困ったことに、内情ではあるがこの女神がときどき二人になることがあった。
「なんだ、私の命令だぞ。私の命が聞けないのかっ」
「いやっあの・・・はあ」
困惑ぎみの数人の船員の前でふんぞり返っている少女がいた。
その頭を後ろからわしっと掴む者がいた。
「こおらからかってんじゃねえぞ。」
「あっお頭!」
「お前らもだっ。仲間とこのガキくらい見分けろ。」
叱られた船員たちはすごすごと小さくなって去って行った。
少女はレオと目が合うとぷいっとそっぽを向き、とことこと悪気なく離れて行った。
レナはこうしてときどき船に遊びに来るようになっていた。
二人は周囲が呆れるくらい仲がよい。
「レナっ」
迎えに出てきたリナが走り寄る。
「姉様っ」
二人で抱き合った。
「元気にしていたか?」
「姉様も」
甲板で再開の抱擁を交わす二人を見ていたクロウが顎を撫でながらがボヤいた。
「ああして並ばれると、どっちだが見分けがつかねえスねえ。」
「そうかあ?ちっと似てるだけで違うだろ。」
この船の航海士である。フロンが船を降りた今、冷静で計算に強いクロウの出番が何かと増えていた。
忙しない足音を響かせて船の梯子を上がってくる者がいる。
「レナ様っ、共の者を放って行かれるなど危ないではありませんかっ」
走り寄ってくるキース。疑いようもなくその目はレナのみを目指している
「あいつも、分かるみたいだぜ。」
隣で腑に落ちない顔をしているクロウは首をひねった。
挨拶を済ませた二人は早速船内へ降りて行った。これからリナの部屋で積もる話などあるのだろう。
レナの護衛の兵を収容すると、船は飛び立った。
天気も良く波は穏やかで、航海は順調だった。船内の通路で立ち話をしていると、向こうから見慣れた少女が歩いて来るのが目に留まった。
「ああなんだレオ、ここに居たのか。」
ぽんっとレオは頭に手を置いた。
「レナだろ。リナはどうした?」
途端にむくれる。
「なあんだお見通しかあ。つまんないのっ」
ぷいっとそっぽを向いたレナの装身具がしゃらしゃらと揺れる。
「えっ・・・あのっ」
目を丸くして驚いている背後の船員たち。髪型も服装もリナとまるきり同じなのだ。恐らくリナに借りて着替えたのだろう。王族としての外交服ではなく、気楽な気分で船で過ごせるようにと、リナが配慮してやったのだろう。こうして、レナのお遊びが始まったのだ。
船に来るたびに、レナはリナの服を借りて船員たちを惑わせる。
「あれ?嬢ちゃんじゃねえか。オレたちの女神様はどこだ?」
船員たちの中でも見分けられる者とそうでない者がいるようで、混乱に拍車をかけている様子を楽しんでいるようだった。




