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一つだけの笑顔

母方のおばあちゃんです

 俺のおばあちゃんは笑わない。

 思い出そうとしても、おばあちゃんの笑顔があまり思い出せない。


 おじいちゃんの方は、よくおしゃべりをしてくれるし色んなものをくれるしいつも笑顔が絶えない。

 だけどおばあちゃんはというと、いつも何かを注意している覚えしかない。

 怖いわけじゃないんだけど、常に小さくガミガミいってた。


「ご飯ば最後までたべんしゃい!」


「男の子がいつまでも泣いとっちゃいけん!」


 こんな注意をよくされた覚えがある。


 それでもおばあちゃんの事は嫌いじゃなかったしむしろ一緒に寝たりお風呂に入ってたりしてたのを覚えてる。

 あんまり笑わないおばあちゃんなのになんで好きだったんだろう?

 どこかでちゃんと笑ってたのかな?


 でもよく思い出せない。


 ——ある日の事、俺たちの家族はエレベーター付きのマンションに住んでたんだけど、おばあちゃんが一人遊びに来た日があった。


 俺の家に荷物を置いて、さあ皆んなで出かけようってなって玄関を出てエレベーターを呼び出す。


 まずはおばあちゃんと俺がエレベーターに入り、一階のボタンを押す。

 その瞬間に、母親が忘れ物があるかもしれないと少し慌てる。

 何を忘れたか覚えてないけど、俺も慌ててエレベーターを出て母親と兄と弟でポケットとかをまさぐりながらわちゃわちゃしていたのを覚えている。


 そうこうしている間におばあちゃんは一人だまって、エレベーターで一階に降りていった。


 横目で見てた兄と俺だったけどなんで?と首を傾げていた。

 忘れ物問題はすぐに解決し、すぐ一階に降りていった家族。

 一階に着き扉が開くとそこにはおばあちゃんの姿。


 おばあちゃんは一人で行ってしまった理由を話し、俺はなるほどと思った。


 ずっと田舎に住んでいたおばあちゃんには、エレベーターというものの使い方が全くわからなかったのだ。


 初めにエレベーターに乗ったおばあちゃんだったが、皆が忘れ物に気を取られている時に、訳もわからず強制送還させられたと言う。


 いくら絞り出してもおばあちゃんの笑顔の思い出はこの一回しか思い出せない。

100点満点の笑顔だったけどね。

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