沈黙が全てを物語る
母方のおじいちゃんです。
俺はおじいちゃんが好きだ。
おじいちゃんはよくお話をしてくれるし、遊んでくれるし、いつも笑顔で優しい。
おじいちゃんが怒ったところなんて見たことがないぐらいいっつも笑顔だった。
「おじいちゃん! これ食べてもいーい?」
「おじいちゃん! これ貰ってもいーい?」
俺は優しいおじいちゃんに甘えて何度もおじいちゃんに聞くんだけど、おじいちゃんはいつも。
「よか」
と一言だけ答える。
よか?
気になって母親に聞くと。
「おじいちゃんは、いいよって言うてるんよ〜」
と答える。
おじいちゃんは孫の俺のお願いに首を横に振ることはなかった。
俺にとっておじいちゃんは仏の様な人だった。
——でも一つだけおじいちゃんが答えてくれないことがあった。
おじいちゃん家で、白銀家の家族が集まり戦争の話になるとおじいちゃんは決まって一人部屋に篭る。
何も答えてくれなくなるんだ。
母親に聞くと、おじいちゃんは戦争がすごく嫌だったらしい。
おばあちゃん曰く戦時中、人を殺すために徴兵されたおじいちゃんはなにやら敵軍に捕まって捕虜にされてはりつけにされていたこともあるそうだ。
俺はおじいちゃんの足を見たことがあるんだけど、爪が全部なかった。
おじいちゃんから聞いたわけではないんだけどその時の傷とかなのかな?
何もわからないままおじいちゃんとは別れてしまった。
今思うと、なんでも話してくれたおじいちゃんの沈黙が、戦争の全てを物語っていたのかもしれない……。
思い出すと会いたくなりますね。