死ぬまで働かせるブラック企業
電球が点滅して消えかかっている。
急げ。こいつが消えたら真っ暗になっちまう。
他の奴らはもう還った。
この部屋にはもう俺しかいない。
手書きでプレゼン資料を書く面倒くささといったらない。
「初恋。花火大会。文化祭。イジメられてたのは……消しとくか」
消しゴムで雑に消した。
「就職。結婚。出産。離婚は当然消すよな」
あー。消しゴムかけすぎて紙が破れそうだ。
「んで。なんだんかんだありーのでさよーならっと……よしっ!終わり!」
やっと還れる!
・
「……おお」
これが走馬灯なのね?初恋。花火大会。文化祭……就職。結婚。出産……こうやって見ると私の人生も悪くなかったのね。
「奥さん!聞こえます!?聞こえたら返事してください!」
きこえてるけど返事ができないのよ。
アクセルとブレーキの踏み間違え。
本当にあるのねぇ。
60の時に免許返納しとけばよかったわ。
「……いってきます」
とても眠い。
目を閉じよう。
・
「お疲れ様でしたー」
俺はこのオフィスの『社長』に挨拶をして扉を閉めた。
扉を閉めると同時に電球が切れて真っ暗になった。
還ろう。