《 不透明だし歪だし 》
あの人はとても透明な人。
なに色にも染まることなく、あの人色。
あの人色は透明だ。
わたしもあの人と同じ色になりたかった。
円く歪んだところなんてないあの人。
わたしも歪むことなく、円くいたかった。
日記の最後にそう書いた。それから日記を1ページずつ読んでみることにした。結局途中でやめた、中身は正兄のことばかりだから。自分に呆れた。
変わりはじめたわたしは、自分では自分が見られないからわからないことがいろいろある。内面の変化は自分の中にあるからよく見える。わたしはわたしだけれども、いろんな自分の姿を、それとして他人の前で出してもいいのだと今は思う。
みんなわたしのいろんな顔に気付いていた。ごにゃごにゃの理由が理解できたら、なんだかほっとした。
わたしは人が持っている形を、まん丸や三角、四角、綺麗に描かれていると思い込んでいた。けれども、そんな枠の中に人の全部が納まるとは思えない。だから、凸凹したりへっこんでいたり、ぐにゃりと変な形だったり。人それぞれ、歪んだへんてこな形をしているのだろう。
わたしの形はどんなだろうか。
きっとごにゃっとした変な形だと思う。
わたしはどんな色をしているのだろう。
透明な人なんていないと知った。
みんなその人なりの不透明な色を持っている。
歪や不安定に抵抗がなくなったわたしは、自分探しをずっと続けていく。時々はきっとごにゃごにゃすることもある。
日記を机の奥の奥の奥底へしまった。
いつか、たくさんの知らなかったわたしを見つけたら、また日記をつけるのも悪くない。
と、思わなくもない。
END.