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5.悪の大魔女は魔竜にメロメロ完敗だわ

「もう、ホント! 滾る! どんだけ可愛いを炸裂するのぉ〜!」


 やばい! 顔面がデレデレに崩壊しちゃった!


 だって魔竜が私の顔を見た瞬間、ポン、と胸で抱きしめられるくらいのミニ魔竜ちゃんになったのよ。更にキュイキュイと可愛らしい声を出して、泣きついてきたんだもの。


 私達と魔竜ちゃんとの勝負は瞬殺。いえ、勝負にすらならなかったわね。


 もちろん私の完敗! 傷つけられるはずがないじゃない! 【そうだ、魔竜をぶちのめそう】計画は中止よ!


 私が誰なのか一目で理解したらしい魔竜ちゃんを、心踊らせながらヨシヨシ。ついでに彼が蓄積した瘴気を浄化してあげた。


 すると夢で懐かし、真っ白な聖竜ちゃんに変身。性格もすっかり丸くなって、ミニサイズの魔、じゃない。聖竜ちゃんたら前世時代を上回る、超がつく甘えん坊将軍になるんだもの。寝ても覚めてもくっついてくる姿が、可愛いのなんのって。


 さすがに本来のサイズで飛びついて来た時は、死の危険を感じたわ。思わず蹴り飛ばしてしまったのはご愛嬌よ。


 呼び名もあるの。前世と同じくクロちゃん。元魔竜で真っ黒だったからじゃないわ。


 この子、コウモリみたいな翼があって、両翼の付け根あたりに色が抜けたような痣があるの。形が四つ葉のクローバー風。前世の私がそれを見て命名したのがクロちゃん。


 そんな経緯から現在進行形で環境に優しい草繋がりの名前をつけた竜達と、この森で暮らし始めた。


 紅白の竜達は仲良しよ。クロちゃんが持ち前の可愛さで、お花ちゃんのハートをズキュンと射止めてしまったの。


 姉さん女房のお花ちゃんが、甲斐甲斐しくクロちゃんのお世話をしているわ。


 お花ちゃんは古代竜だけあって推定数百歳のクロちゃんよりも長生き……実年齢は幾つかしら? 想像がつかない。


 鬱陶しかった森の瘴気は、私とクロちゃんが少しずつ浄化。もちろん誰かが未浄化地帯に入らないよう、森の周辺には魔法で幻影と侵入防止用の結界を常時発動させるようにしておいた。


 かなりの魔力を消費するし、常人にはできない規模。


 けれど私には朝飯前。物心ついた時から頻繁に魔力を枯渇させていたら、少しずつ内包する魔力量が増えていったお陰ね。辺境での修行と環境の成果よ。


 そして半年ほど前かしら。


 瘴気の濃さも一段落して、侵入防止の結界だけは一部解除した。外から見れば死の森らしい幻影はそのままにして。


 時々、街へ繰り出してお酒や美味しいお菓子を飲み食いもしているの。ストレス発散よ。


 最近お花ちゃんとクロちゃんが本当に番って、ラブラブ新婚生活に突入したのをを目の当たりにしたからじゃないわ。独身生活は気ままで楽しいもの。決して寂しくなったからじゃない。本当よ?


 そんな楽しいお一人様ライフを満喫していれば、今日。結界の一部からダーリン(仮)と愉快な仲間達が入って来ちゃった。私の夢って、どんだけ再現性が高いのかしら。


――というわけで、ここまでがこの森で悪女を演じるに至るまでの経緯。


「それで、結局お前は何をやっている?」


 あら、ダーリン(仮)のダンディボイスで現実世界に帰宅してしまったわ。耳元で囁かれたら間違いなく腰砕けになっちゃいそう。


「うーん、そう、ねえ……魔竜様の下僕?」「冗談は……」

「あら、冗談じゃないわよ? だって私、昔から可愛い小動物が大好きだもの」


 そう、私はすっかりミニサイズのクロちゃんの虜! ここを協力して浄化したのだって、あの子が可愛いからよ。


 最近じゃお花ちゃんもミニサイズ化に成功して、赤白でお尻フリフリし合ってるの。めちゃくちゃ可愛いんだから!


「はぁ」


 あら、ダーリン(仮)がこれ見よがしに、ため息を吐いた? 幸せが逃げちゃうわよ?


「ねえ、アイツ頭悪いの? 魔竜を可愛い小動物扱いしてない?」


 何ですって、このシーフ! 美乳だからって上からの物言いはどうかと思うわ!


「ええ、そう聞こえましたわ。感性が狂ってますわね。もしかして魔竜は魅了を使えるのでは……」


 ふん、私の方が良い乳しているのよ。お嬢様もどきプリースト。


「いえ、そんなはずはないでしょう。むしろ彼女が魔竜を操っているのではないでしょうか。凶悪なほどの魔力を発していますから」


 ウィザードの貴方が平凡過ぎるだけよ。


 貴方達、コソコソ話してるけど、ちゃんと聞こえてるわ! 小さい頃は地獄耳ミルちゃんて呼ばれていたんだから。


 そんな貴方達には、殺気と威圧に魔力を乗せて、お見舞いしてやるわ!


「「「ひっ」」」

「ふふん。恐怖に打ち震えなさい」


 三人共短く悲鳴をあげてガタガタ震えたわ。これがかの有名なざまあってやつよ。


「やめろ」


 けれどダーリン(仮)はやっぱり効いていない。さすがね。私や私の家族に鍛えられただけの事はあるじゃない。


 ダーリン(仮)が三人を背に庇うようにして、前に出て剣を構えた。


 あぁ、そんな頼りになるダーリン(仮)も大好き。


 けれど……。


「逆にあなた達は何をしにこんな所に来たのかしら? 自殺志願者?」

「俺達は国からの指名依頼により魔竜を討伐に来た。邪魔するな、ミルティア」


 夢を覆すのは難しいものね。これから私は……ダーリン(仮)が闇堕ちする未来を完全に変える。

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