プロポーズの言葉は「味噌汁作って」
「君の作った味噌汁を毎日の飲みたいんだ。」
デートの帰り、拓馬は意を決して、瑠美にそう伝えた。
すると、瑠美は顔を赤めて目に少し涙を浮かべて下を向きその場を立ち去ってしまった。
拓馬は追いかけようとするも、まあ突然のプロポーズだったし一人にさせておくか
と思い近くのベンチに腰掛けた。
拓馬は、今までもてない訳では無かったが、仕事を始めてからは仕事の鬼で
今季を逃したまま40代になっていた。
そんな時に一回りも違う瑠美と出会い、年の差を乗り越えてうまくやってきた。
そして今日ついにプロポーズをしたのだった。
2年も付き合ってるし、きっといい返事がもらえると信じて疑わなかった。
―しかし、話は思いもよらない方向へと進むのだった。
翌日、瑠美が拓馬の家を訪れた。
「昨日は急に逃げ帰るみたいになってごめんね。気持ちの整理がつかなくて…。
私、ずっと拓馬さんは私と対等な立場で付き合ってくれてると思ってたのに、あなたにとって私は
ただの家政婦みたいな存在だったんだって思ったら、悲しくなっちゃって。」
そう言ってまた涙を浮かべる瑠美に、拓馬はギョッとした。
「ちょっと待ってくれよ。かっ家政婦って?!そんなつもりあるわけないじゃないか。
いや、味噌汁作ってっていうのは俺が前から決めてたプロポーズの言葉だよ!」
すると瑠美はキョトンとして拓馬を見つめた。
「え?じゃあ、私にご飯を作らせて自分はのんびりしてたいって事じゃないの?
ぷっプロポーズだったの?!」
瑠美は昨日よりも顔を赤らめてあたふたしている。
「うまく伝えられてなくてごめん。もう一度違う言葉で言うよ。
君とずっと一緒に居たいから結婚してほしい。」
「ありがとう。嬉しい!よろしくお願いします。
ただ…、私ばかり料理をしたりするのはやっぱり納得いかないから、家事分担は
きちんとしましょうね!」
拓馬は苦笑して「もちろん」と瑠美を抱きしめた。
まじか…年の差は感じてたがこんなに通じないとは…。拓馬は心でそう呟いた。
程なく二人は無事に結婚して一緒に暮らし始めた。
「拓馬さん、今日は私仕事遅くなるから、夕食の準備はお願いね」
「わかったよ。とびきりの味噌汁を俺が作っておくから」
2人は笑いあい仕事へと向かった。
2人にとっての味噌汁はお互いにお互いを思って作りあう愛情の証となった。
拓馬の方が多く作っていることはご愛敬。