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4.ペーパー・アトラクション ー紙飛行機ー

 花園を抜けていくと、飛行場が見えた。


 雨が上がっているので、今はネザアスも傘を閉じて担いでいる。雨さえあがっていれば、フジコもとこどろころに残された、庭園の花々を見ながら快適に進むことができた。

 そして、ふいに目の前がざっと開けたのだ。

 だだっ広い滑走路らしい線のひかれた道路。アスファルトはところどころひび割れて崩壊している。

「ここ飛行場?」

「ご明察。ウィス、よくわかったな」

 フジコは思わずきょとんとする。

「ねえ、ネザアスさん。こんなところになんで飛行場が?」

「そりゃ、昔は飛行機があったからだぜ」

 今だって……といいかけて、奈落のネザアスはあちらこちらを探す。

「ああ、一機残ってる」

「あれ?」

 フジコは目を瞬かせた。そして首を傾げる。

「あれ、すごくおおきな紙飛行機?」

 フジコの視線の先には、崩れかけた構造物がある。が、どう考えても、あの形は紙飛行機なのだ。

 まさか、この飛行場はあれの発着陸に使われたというのか。

「紙飛行機なんか、飛ばしていたの?」

「昔はアレで飛べたんだぜ。ま、ただの紙じゃねえ。それなりの仕掛けはあるけどなっ」

 ネザアスがにやりとする。

「でも、コックピットとかないの? もしかして、直接乗るとか?」

「そこがスリルのあるとこだぜ。テーマパークには、スリルがねえとなあ」

 ネザアスが意味深ににやりとした。

「アレなあ。最初に連動するミニチュアを特殊な紙で折らせるんだよ。で、自分が折ってデザインした機体にのるわけだ。だが、まあ、なんていうかそんなまっすぐ飛ぶわけねーんだよ。で。言うことを聞かねえ、クソ生意気な餓鬼どもが、不安になってべそかくのみるの、結構楽しかったんだよな。生意気な奴は、ワザと不安定な形状にしたあれにのせて振り回すに限る」

 懐かしいなーと、ネザアスがやけにサディストなことを言う。

「意地悪ね、ネザアスさん」

「安全性は確認されてるぜ。ちゃんとおちないようになってた」

 だから、アトラクションなんだぜ。とネザアスは言う。

「ま、今乗るのはお勧めしねえがな。飛ぶどころか、下手したら触ったところからぐしゃっとつぶれかねないからな」

 感傷など無用というように、にかにか笑いながら、ふとネザアスは言った。

「でもあいつも所詮紙だから、雨が降り続けば汚染されて崩れていく。ここは二度とそんな風に使われねえだろうな」

 別に彼は寂しそうでもない。奈落のネザアスは、流石に黒騎士。人間らしい感傷とはあまり縁がない。

 けれど、ついついフジコは勝手に感傷的になるのだ。

 ネザアスはずっとここにいたと言うけれど、朽ち果てていくこの遊園地を彼はどんな気持ちで見守っていたのだろう。

「どうした、おレディ

 フジコを見透かしたように、ネザアスが声をかけてくる。

「え、ああ、いいえ」

「まあ、今は紙飛行機折って飛ばすより、スワロに偵察してきてもらった方が、よほど役に立つ。おれのスワロは、とても優秀なんだからな」

 そういってネザアスがスワロを撫でると、スワロがぴっと電子的に鳴いた。

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