少女の恐怖
あるところに至って平凡な少女がいました
活発で一人遊びが得意、勉強はそこそこで、運動は少し苦手、友達と遊んだり、本を読んだり、空想をしたり
とにかく楽しいことが大好きでした
そんなある日、少女は自分のある力に気付きます
凍らせる力です
少女は恐れました
自分のこの力を制御することができなければ、きっと周りの大好きな人たちを傷つけてしまう
少女は外で遊ばなくなりました
それでも少女は他人と話すことが大好きです
恐れながらも、気を付けながら、今までと同じくみんなと遊びました
それからまたあくる日、少女は周りの力に気づきます
皆、読む力を持っていました
少女は自分にその力がないことを悟りました
読めない代わりに凍らせてしまうなんて、なんてひどい力でしょう
少女は電気をつけなくなりました
あるとき、少女に声をかけてくれる人があらわれました
少女はとても嬉しくてたくさんお話をしました
数日たったとき、少女は泣いているその人を見てしまいました
駆け寄ろうとしたときに、少女はある言葉を耳にします
「あの子が怖いの」
少女のことでした
あれだけ気を付けていたのに、力が漏れ出てしまっていたようです
少女はすぐにその人に謝り、そばから離れました
少女は夜明けと共に眠るようになりました
そのあと、少女を気にかけてくれる人がたくさんあらわれました
仲良くしてくれる人がいること、少女はとても喜びました
適度な距離を心がけ、力を使わないように一層気を付けました
そのなかでも特に仲良くしてくれる人がいました
とても嬉しくて、声をかけられればすぐにお話をしに行くほどでした
ある日、少女は都合が悪く誘われたものの行けない日が続きました
少女は申し訳ないと思いながら、断りを入れました
すると、その人は悲しそうにそれはもう残念そうに了承します
その姿が見ていられなくなった少女は、都合を捨て、その人と遊びました
次第に、少女はその人と遊ぶために他の全てを捨ててしまいそうになりました
とうとう少女の心しか捨てるものがなくなってしまい、少女は断ることを決断しました
するとその人は怒りだし、少女にひどい言葉を投げ掛けて去っていきました
その後少女の前にあらわれることはありませんでした
少女は起き上がれなくなりました
さらに時間が過ぎ、少女は再び色んな人と話すようになりました
今度は間違えないように、失敗しないように、気を付けます
その人たちは優しくて、少女に無いものばかりを持つ、尊敬できる人たちでした
ある日、少女は遊んでいる皆を見かけました
楽しそうにお話をして、駆け回っている姿に少女は笑顔がこぼれます
幸せそうにしている皆が少女は大好きでした
ですが次第に、少女は皆が楽しそうにしているところを見れなくなっていきました
どうして私はあそこにいないんだろう
どうして私は誘ってもらえないんだろう
きっと私が皆のようにできないから
きっと私がなにか失礼なことをしたから
きっといつの間にか私は力を使ってしまっていたんだろう
少女は何度も何度も何度も繰り返し、納得しようとします
けれど、それは辛くなるばかり
少女はひどく疲れてしまいました
もうなにもしたくありません
もうなにもかんがえたくありません
もうこんなきもちになりたくありません
いつしか少女はどこにいても気を休めることができなくなりました
どこにいっても、なにをしてても、楽しいのに、こころはどこかへいってしまっているのです
少女はとうとう眠りから覚めないことを望みました
そんなことはなんの解決にもならないと、
相談でもなんでもしてみれば良いと、
そう言う皆の声が聞こえます
少女はただただ終わらせたかった
それを許してくれもしないその言葉にひどく吐き気がしました
もういいんだ、もう、なにも言わなくても良い
疲れたから休むだけ、しんどいから眠るだけ、
そんななか、少女の耳にある言葉が届きました
「言わなければ分からない」
少女の心は凍りつきました
幾度となく、少女が思っていたことでした
皆が読めるものを読めず、あろうことか凍りつかせてしまうかもしれない
傷つけてしまうかもしれない
その不安を、その力を持たない皆にはきっと理解できないと、諦めてしまっていたのです
少女は最後に笑いました
小さく笑って微かな声で
「どうしようもない」
少女は目を閉じました
まっくらやみのなか、少女は安らかに眠っています
明るい場所はこわいの