第0話
よろしくお願いします
「え、エレナ……こんなことをしてあの子が喜ぶと思ったのか!?」
そんな戯言を言ってくる男がいる。
そいつの体は胴体と頭しかない。
そして、周りには瓦礫だらけの壊れきった街だったものが見える。
これを全てここにいる銀髪の少女がやったなど誰も思わないだろう。
「あ、あはははははは」
壊れたように笑う。
ドスッ
「あなたがそれを言いますか?」
そう言ってエレナと呼ばれた銀髪の少女が手刀で男を貫く。手が無いので防ぐことも出来ず足がないので逃げることも出来なかった男は抵抗すら出来ずに貫かれた。
「ぐがぁあぁぁぁ…が、があぁあああぁぁっっ!!」
その手刀で貫かれた部分からは何故か血は出てこない。
だが、その付近の皮膚が少しずつ青黒くなっていく。
「や、やめろ……エレナ……やめてくれ…………」
青黒くなった皮膚が少しずつゴツゴツとした魔物のような皮膚になる。
「そうやってカリーナが助けてと言った時あなたはどうしましたか!?ただ、笑ってたでしょう!!例え誰が守ろうとあなたたちは苦しめて殺す。そう決めたのです!!」
周りの風景も悲惨だったが、足元を見てみると
もう既に小さな池と言われてもおかしくはないほどの大きさの血溜まりと屋敷の中いっぱいの死体がある。それは全てこの男を守ろうとした護衛兵たちだ。
「エレナよ……本当にお前のためを思って……」
「そんな事は既に何回も聞きました!!それが本当だったとしてもあの子を私に捧げる必要はあったのですか!そうなのであれば私は死を選んでいます。妹がどんな思いで死んで行ったと思うのですか……」
エレナはその感情を思い出し泣き崩れる。
目を閉じるとエレナはまたあれを思い出していた。妹の感じた恐怖や痛み、そして絶望を。
その瞬間、生きて隠れていたのか1人の片腕をなくし血を流している騎士がその男を助け出そうと剣を持ち忍び寄ってきた。
そして、その剣を振りかぶりエレナを殺そうとした瞬間、エレナが分かっていたかのように目を閉じたままそちらに手を向ける。
すると、その騎士は一瞬で細切れになる。
「あなたが追い打ちをかけるまでは家族のことを信じていた。その後は私やラールの事を。そして、最後にラールすらあなたが殺していた事を知ったカリーナはみんな滅んでしまえ。そう願ったんだ。だから私はその願いを叶えて私も死ぬ。この世界なんて滅ぼしてやる!!」
その男はいとも簡単に細切れになった騎士を見て絶望したのか俯く。
「いいだろ、もう早く殺せよ……」
もう、その男は何も言わず死を受け入れていた。だが、エリナは
「言ったはずです。苦しめて殺すと。あなたは今から四肢のない魔物になって飢えと渇きを感じながら死んでもらいます。冒険者の誰かが見に来てくれたらいいですね。そしたら殺してくれるかもしれません。まぁ、耐久力の高い魔物にしますのでBランク程度の雑魚なら逆に苦しむでしょうが。あはははははははははははは!!」
もう、最後の方の言葉はその男には聞こえていなかった。もう顔まで魔物化の侵食が来ていてすでにもう人語を理解できるような脳を持っていなかったから。
「さて、次は何処に行って誰を殺しましょうか……それとも全てを滅ぼすその準備にかかるとでもしましょうかね……」
その言葉は誰もいない崩れ落ちた街だった物に響くだけだった……
次は10日(土)21:00です。
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