第1章・4ーA
「…だそうですよ」
「‘’だそうですよ”って、お前は俺らのの通訳か」
俺と話した後、直ぐに主人を追いかけて行ったリマナに説明される。
こいつから翼が生えてきたのはすげぇびっくりしたがな。
高速飛行して行ったかと思えば、また一瞬でリターンしてきたのは、俺の中二心を刺激した。
「てか、お前翼生やして飛べたのかよ」
「翼が生えているように見えただけですよ」
「…ん?どういうことだ?」
「飛んではいましたが翼を生やしてはいません。ただの演出です」
「けったいな演出家だな!?何、それもお前の能力なのか!?」
「えぇ、私は感覚を司る魔女ですので」
…感覚?
「私から逃げていたときに裏路地が異常に広くなったのも、身体が動かなくなったのも、失神する前に視界が可笑しくなったのも、頭に強い一撃をくらったのも、私の術ですよ。言わばあなたの勘違いですね」
「やめろ、その言い方!!俺が馬鹿みたいじゃねぇか!!」
「いえいえ、大丈夫ですよ。みーんな、私の術で騙されますから」
なんだこいつ。
頭は悪い癖に。
調子に乗りやがって。
こいつの馬鹿にしたような馬鹿な顔を、元の綺麗な顔に戻してやりたい。
軽く褒めているようだが、違う。
違う、元の顔は綺麗でも、馬鹿な顔は好きじゃねぇ!
「だいぶ便利な能力だな、宝の持ち腐れ」
「私はこの術を有効活用していますよぉ。騙される人を見るのは騙しがいがありますからねぇ。主人もしばしば私の術に騙されますよ」
…。
おい。
今一瞬、お前たちの主従関係が危ぶまれたぞ。
ヌディは最強レベルの魔女だったんじゃないのか?
今に関しては聖者だし。
そんな人を主人にして、よく騙すようなことが出来るな。
しかし、騙すことは魔女の本能のようなものなのだと考えられなくもない。
徒に馬鹿なだけ、賢いよりも質が悪かったりするがな。
魔女の本能ねぇ…。
「そういえば、さっきの話についてだが、お前が人を殺さない理由って、実の所何なんだ?」