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半端モノの泣きドコロ〜異世界ではラブコメを!〜  作者: 梔槐
第1章〜俺は革命家アトゥートで良い〜
7/21

第1章・3ーB



「好きだ。好きだ。好きだ。好きだ」


‘’は?”という顔をしてしまったけれど、それはただ驚愕したからだ。

そうでしょう?

だって私の好きな人はこの人なんだもの。

喩えこの人が足を撃たれていても、這いつくばっていたままでも、告白なんてされたら、恥ずかしいに決まっている。

あの教室にはクラスメイト三十八人と立て籠り犯までいた。

空気感が重く、とても色恋沙汰など考えていられる状況ではなかった筈。

それでも私は、‘’好きだ”の四連呼でも、恥ずかしい以上に嬉しい。

あの人がそんな状況でも、私を好いてくれるなんて…。

あの人が首を撃たれて死んでしまった後に、私も好きと言った。

‘’大好き”と言った。

理由なんて言えなかったし、そもそも理由なんて無かったのかも知れない。

あの人の崩した身体を揺すりながら、四連呼どころではなく、何度も何度も繰り返し繰り返し。

そして一度だけ‘’ありがとう”と言った。

死ぬ前なら、人は家族や友達のことを思い出すのかも知れないけれど、私は、この瞬間だけは、この人だけを想って、思い続けて…。

死んだ。

学生同士の恋愛に立て籠り犯は腹を立てたのだろう。

どこを撃たれたのかは覚えていない。

でも、苦しみながらは死んでいない。

一瞬のうちに死んだのかも知れないし、苦しみ以上の強い感情があったのかも知れない。


「気が付いたら私は魔女だったんだ」

「ん?何の話ですか?」

「いや、こっちの話…」

当時、確かに魔女に良いイメージはなかった。

けれど、人を虐殺するほど邪悪だとは思わなかった。

ヌディ・テストパは、かつて大量虐殺を行った悪名高き魔女だった。

なぜ二度目の人生で、そんな人に転生してしまったのだろうと思った。

人に殺され、生まれ変わったら人を殺す存在になるなんて。

「ねぇ、リマナ。私が聖者になった時のこと覚えてる?」

「…あ、は。実はあまり覚えていません、ね。ですが、あれだけは覚えていますよ」

そう。あれというのは、‘’あれ”。

‘’なぜ人を殺すの?”という疑問。

人を殺す意味、意義、そして必要性。

私が魔女という存在になってから、十年程経って浮かんだ疑念。

「私、あんまり人を殺した時のこと覚えてないんだよね」

「…というと?」

「人を殺す理由が分からないのは、覚えてないからじゃないかなぁと思って」

「ですが…、今現在は反逆者の粛清として人を殺しているではありませんか?」

「聖者として人を殺す理由は分からなくもないの。でも、罪のない人を殺すのはどうして?」

「…魔女だから?」

「あなたは魔女。それでも罪のない人は殺さない」

「…」

困らせてしまったかな。

リマナは頭が良い方ではないし。

「あなたが優しいのは知ってる。今はそういうことにしておこう。私もあまり考えたくないしね」

ということにしておいた。

リマナも魔女としての矜恃があると思うし、人を殺す意味なんてないのだろうから、きっと人を殺さない意味もないのだろう。

「私は…どうでしょう、ね…。でも、あの人を殺す意味は分かりません」

うんうん。

ん?

うーん。

うん。

…うん…?




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