第1章・2ーB
「髪が綺麗だね」
「目が澄んでるよね」
「肌に透明感あるね」
「スラッとしてるよね」
「美乳だね」
…今言うことじゃない。
というか、何故それを言った。
でも、それが当てはまるのは…、え?
だが、ヌディ・テストパと名乗った聖者はそれが当てはまる少女だった。
「会ったこと…ある、よな…」
「…」
ヌディは未だ絶句した様子でこちらを見ている。
勿論、俺も口は回っていない。
するとリマナがそれはそれはライトに、
「どうなさったのですか?お二人共ご面識が?」
と訊いてくる。
「…どうだろう、か…。だ…が、そっちもそんな様子だと…」
「…」
お願い、喋ってぇ!
なんか気まずいでしょ!
それとも何、さっきの発言に苛立っただけ?
それはそれで怖い!
そうだよな、そもそもこいつは俺を殺そうとしてるんだもんな!
「………よう」
ん?ヌディの方からボソボソとした声が…、
「…粛清は…、取り止め…よう」
そう言って、物凄いスピードで割ったガラス窓から出て行った。
「主人!?どこへ行かれるのですか!?」
出て行った衝撃で窓よりも周辺の壁が吹っ飛んだ。
リマナが呼びかける頃には完全に姿を見失っていた。
…さて、俺は安心して良いのか?
取り敢えず、死を免れた、ということなのだろうか。
‘’粛清を取り止める”という言葉にはかなりの違和感があるけれども。
平和宣言という言い方はどうかと思うが、今考えられる限りの平和的解決なのかも知れない。
「どういうことなのですか?お二人に一体何があったのですか?」
…そうだな。
彼女がもし彼女ならば。
「はっはぁ。もしや過去に危ない関係になられたりしました?」
「なってねぇよ!何だよ、危ない関係って」
しかし、あの時。
俺の告白が幼稚なものでなければ。
何らかの関係を(変な意味じゃねぇよ?)彼女に持ちかけて入れば。
それは間違いではなかったのだろうか。
「良いよ、分かった」
「危ない関係についてですか?」
「それについては一生分かりたくねぇよ!」
と言っても、一生はもう終わり、俺の人生は二生目になるのだがな。
あれ、もしかしてさっき死んでたら二生も終わるところだった?
「そうじゃなくて。話すよ。何があったのか話す」
「危な…、もっごっ!?」
「それ以上言うなよ?」
俺はこの馬鹿リマナの口を手で塞いだ。
「魔術だとか聖術だとか、俺はそっちの方が信じられないんだけどな。だが、これから言う話を信じてみてくれ…」
俺はリマナに、俺がどれだけ半端モノなのかを話した。
勿論、口を塞いだままで。