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トラック事故からの……

作者: NEO

ノリで書いたネタ小説。

初めてのコメディ。

 ああ、腹が減った。カップラーメンでも……って思ったが……いくらカップラーメンといえども賞味期限三年過ぎてんのは食えんな。

 面倒だが仕方ねえ。コンビニに買いに行くか。


 オレはドアを開け、徒歩十五分のコンビニに向かうことにした。


 いやー、家出るの久々だ。

 夜特有の、冷えた空気が心地良いなー。


 びゅーー。

 突風が吹く。


「ひいっ。寒いっ」


 ハッとして口を塞ぐ。思わず声を出してしまった……。やらかした。

 道行く人の視線が痛いぜ……はは。



 コンビニに着いた。夜中なのに眩しく明かりのついたコンビニってなんか不思議だなーと思いながら中に入る。


 ……! いてぇ。

 自動ドアめ。急に閉まりやがって自動ドアめ。許すマジ……じゃなくて許すまじ。こいついかん。

 挟んだね! 電車のドアにも挟まれたことないのに!


 ぶつぶつ言っていたら、店員から可哀そうなやつだという目で見られた。恥っっっずい。これだから挟まれるのは嫌だったんだ。


 でも、店員にも非はあると思うんだ。


 お前しっかり教育しとけよ! 人を挟んじゃいけないんだぞって。オレはこの間抜けヅラの店員にそう言ってやりたい。

 だがオレは言わん。自動ドアに挟まれてアタマ逝っちまったやつだとは、流石に思われたくないんだ。



 台湾ラーメンとー、担々麺とー、新世界ラーメンとー、呑兵衛とー。とりあえずカップ麺はこれだけでいいや。これで二日は持つだろ。


 帰ろーっと。

 オレは間抜けそうな、ポケーっとしている店員に会計をしてもらった。

 これ勘定合ってるよな。お釣りが五円玉三枚に、一円玉六枚、それと百円玉十二枚。なんかおかしい気はするんだがなぁ。779円に千円札二枚を出したから……計算は合うはずなんだよ。あれー?


 ま、いっか。

 どーでもいーや。


 そんなことより早く帰ろ。

 今度は挟まれないように、慎重にゆっくり自動ドアに近づいた。挟むなよー、挟むなよー。……?

 あれ、開かない。反応しない……!?


 え、なんで? 恐る恐るノックをしてみる。


 コンコン。


 あ。開いた。


 …………。

 ……よしじゃあ帰るかー。

 近頃の自動ドアは凄いなー。ノックの意味を理解してるんだからなー凄いなー。


 ……。



 はっ。なぜかカップルが道路の真ん中でいちゃいちゃしている! おい、羨ましいのは置いておいて、そこ居ると危ないぞ!


 ほーら、トラックが突っ込んできてるじゃん。しかも居眠り運転んんん!

 言わんこっちゃない。なんで路上でキスしてるんだって。路チューはやめい!


 ああもう気づいてないよ。

 声を上げようとしたけど、掠れてうまく出てこない。

 ちくしょう! オレが助けてやるしかないじゃないか。


「あぶなーい!」


 オレがトラックさながらの勢いでカップルに突っ込む。

 うわ。めっちゃ驚いた顔してるわ。すまんな、邪魔して。つい助けちまったんだぜ。


 オレがカップルを押し出したおかげで、カップルは助かったが今度はオレの命が危うい。

 うーむ。どうしたものか。


 カップルの男の方に目線を送ってみる。

 ………………。状況を全て把握してくれたようだが。凄い申し訳なさそうな目をしている。謝罪オーラというのか、そんな感じのなにかを纏っている。


 彼は熟慮した。熟慮したが……解決策は浮かばず、オレに向かってサムズアップした。微妙な笑みを浮かべてな。

 ハッハッハ。さすがのオレも彼が諦めたことを察した。


 と思いきや! なんと対抗車線からもう一台のトラックが!

 カップルは対抗車線にいるから、奴らも死ぬぞ。折角救った命が無駄になるだなんて。


 その上やつらまだ気づいてない。

 

 オレはどうしたかって?

 もちろん、諦めたさ。オレが諦められた仕返しだ! なんか違う気もするがいいだろう。


 そんなふうにオレが考えていると、無情にもその瞬間はやってきた。


「でばふっ」


 トラックにぶっ飛ばされるオレが最後の意識で目にしたのは……対抗車線のトラックに衝突されそうになるカップルだった。

 ぶつかる直前に、トラックとカップルの間に光が発せられた。

 次の瞬間、カップルは消え去っており、どこにも見えなかった。


 なんだこれ、と思う間もなく、オレは死んだ……んだと思う。



 目を覚ますと、見知らぬ天井があった。

 

 オレは、純白のベッドで寝ていた。染み一つない、清潔なベッドだ。

 ここは白い空間だ。ただただ真っ白なだけでロクに物が置かれていない。


 妙な場所だな。

 なんでオレはこんなところに。記憶を探ってみよう。

 

 オレは……死んだ?

 トラックに轢かれて?

 確かに、体が痛む。これは轢かれたゆえのものだろう。


 それに。

 死ぬ直前、カップルがいきなり姿を消したのを見た。神隠しか? と一度は思ったけど、考え直してみれば、こういうこと、なのかもしれない。

 あれはラノベなんかで描かれる()()()()()というやつのではないか。


 だったら、このオレの、死んだはずなのになぜか生きているという摩訶不思議な出来事にも辻褄が合う。オレも彼らと同様に、異世界へ飛ばされるのだろう。この白い部屋は、異世界の説明をしてくれる神様を待つ部屋、ということなのか。


 なるほどなるほど。

 なんでオレともあろう優秀な人間が世に出ないのかという疑問が常々あったが、それは転移だか転生だかをするために一般人の枠に収めていたと、そういうことなのだ。

 どおりで、トラックに轢かれた訳だ。トラックはド定番だもんな。

 

 やぁったぜ。これでオレはチーレム無双三昧確定。ってなわけで神様早く来ないかな、なんて思うオレ。



 がちゃ。ドアが開いた。そこから白髪の爺さんが現れた。


「やあこんにちは」

「あ、ああ」

「わたしのような者に会ったのは初めてかな?」

「え?」

「ほら、鳩が豆鉄砲を食らったみたいな顔をしているではないか。わかるぞ、その戸惑い」


 これが神様か。白い服を着ていて……髭を生やしていて……まあ、少しイメージとは違うところもあるがそんなもんだろう。

 

「では君の身に起こった出来事を説明しよう。君はトラックにはねられたことによって、ここに来た」


 うん。そこまでは知っている。


「君の体は治しておいたから心配する必要はない。君は本来あり得ないほどの優遇を受けているということを伝えたい」

「まあ、そうですよね」


 そりゃあ、転移転生なんて、普通の人生じゃまずありえない。というか普通の人生じゃなくても、まず起こり得ない稀有な、それこそ奇跡みたいなものだろう。存在すら認知されていないのだから。


「だから、君の身に起こったことを(つまび)らかにしろ、とは言わないが、儂が君を完治させられる力を持っているのだと、宣伝してほしい」

「宣伝ね、はいはい」


 分類するなら、宣教師系転移/転生ということになるのか。治したことを宣伝、とは一体どういう意味なのかは分かりにくいが、つまりはこの神様への信仰を増やすべくオレに宣教してほしいのだ。


「事故から立ち直って、健康体になったと広めてくれないか」

「もちろん!」


 オレは快諾した。が、一つ不安なことがある。


「ただ、オレの元の体くらいじゃ貧弱なんじゃないかと思うんです」


 そう。オレはそもそも運動のできない引きこもりのようなものだ。異世界で生きていけるほどに通用するかは全く未知であり、というかまあ直ぐ死ぬんじゃないかと、そう疑問を持ったわけだ。


 貧弱、と言ったのはだいぶ変な言い回しな気がするけれど、それ以上にピッタリはまる語句が見つからなかったのだから仕方ない。オレの語彙力を舐めるな(ドヤ顔)。


「それは大丈夫だ。儂含めた数人で君の身体能力を引き上げておいた。かなり大変だったが、その成果はしっかり現れているだろう」

「たしかに、力がいつもより出る気がします」

「ではそろそろ行ってくれるか?」

「行きます。じゃあお願いします」

「? いや、そこのドアから出られるが」


 はっ。もしかして、オレは壮大な勘違いを?


 確かめるべく一つ質問をする。


「あの、その服装って医者の真似かなんかですか?」

「何を言っておる? 真似も何も、儂は医者だ」

「やっぱ勘違い!」

「?」


 神様なんかじゃなかった!

 ただの勘違い、恥ずかしい間違いだった!


 ああ恥ずかしい。


 白いのも病院だからなのね、しくしく。せっかく異世界に行けると思ったのに。くそう!


 なんで白い部屋にこじんまりとしたベッド一つしかないんだよ!


 オレは壮大な勘違いにぷりぷり起こりながら、病院を出た。



 あー腹減った。なんか食いたい。

 カップ麺でいいや。呑兵衛(●んべえ)とか。

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― 新着の感想 ―
[一言] 時間を無駄にする、と前書きにありましたが、 日々を過ごす上で、全てに意味を持たせるのは疲れてしまいます。 そんな中目に飛び込んだこの作品。 少なくとも、わたしは「ふふっ」と出来た作品でした…
[良い点] お医者さんは『実況パワフルプロ野球』のダイジョーブ博士みたいなものでしょうか? 打撃パワーと走力と肩力が上がってそうです。 ノリと勢いがあったのででサクサク読まさせていただきました。
[良い点] 全体的にテンポが良く、読み始めたら途中で途切れる事がない。 要所要所に主人公のアホっぽさが出ていて、オチの勘違いが納得できる。 ショートショートが大好きなので、こういう面白いオチのある作品…
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