眠れぬ森の美女【2】 〜眠れぬ森〜
眠れぬ森の美女【2】 〜眠れぬ森〜
「おおー」
「おおー」
それは圧巻な光景でした。
「森の中にベットがどんと置いてある。」
「まんまだねえ」
しかもキングサイズのベットです。
「横になってみてはいかがです?」
「けっこうふかふかね。ごろーんと。」
「いかがです?」
「…無理。」
「そこをなんとか!」
「無理なものは無理!」
はあ、と賢者は溜め息をつきました。
「これじゃあ振り出しですねー」
どうしましょうねえ、と賢者がベッドのまわりをぐるぐる歩いていると、
いきなり人影が現れました。
「わーっ!」
人影も驚きましたが賢者も驚きました。
「うわー!」
ふたりとも、尻餅をついてしまいました。
姫様は、目をぱちくりさせながら見ています。
「どちらさまですか?」
「び、び、びっくりしたあ!」
肝試しのスポットになるような場所です。
まさかこんな所に人がいると思わなかったのでしょう。
「あ、あれ。うちの学校の生徒じゃないんですか?」
賢者も姫様も、制服とも一般市民の普段着とも違う格好をしています。
「その制服、もしかしてフォレスト学園の生徒?一年生?」
「あ、はい、ライオネルといいます。あなたは?」
「わたしはローラ」
「あ、もしかしてきもだめし実行委員長の!」
ライオネル青年はぽん、と手を打ちました。
「まあ、知ってるの?光栄だわ」
「はい!それで…ものは相談なのですが。」
「どうしたの?」
ライオネルは、手に持っていた真っ白いシーツを見せました。
「シーツかぶったくらいじゃ、
イマイチ迫力に欠けると思うんですよね。
お化けとして。」
「たしかに。」
「どうやったらこわーいおばけになれるか、
教えていただけませんか?」
姫様のなかで、きもだめし実行委員長の血がさわいできました。
「いいわよ。」
「あ〜〜〜もう、
王様おそいなあ。」
姫様とライオネルの特訓がはじまり、
賢者はあたりを見回していましたが、
王様はいっこうに現れません。
打ち合わせと違います。
「生徒のふりをして、
姫様に学校気分を味合わせてあげてくださいっていったのに。
役立たずだなあもう…」
そのときなにかが賢者にむかって降ってきました。
「うわー!」
ぺち、と顔にあたりました。
「あ、ごめん。
こんにゃく飛んじゃった。
ごめんよ。」
「い、いやいや。
だいじょうぶだよ。
こんにゃくだから」
痛いというより、びっくりただけだったので。
「そうかい。ごめんよ。じゃあ!」
「さわやかだなあ。初々しい。
ボクにもあんな時代があったのになー」
「賢ちゃん!みてみて!力作よ!」
賢ちゃんというのは、賢者のことです。
姫様が身分を隠すために、
賢者を「こっちは賢ちゃんといって私の友達」と紹介したのです。
力作のオバケとは……
「な ぁ・・・な あ・・・ま っ て く れ よ・・・
お い て い か な い で く れ よ・・・賢 ち ゃ 〜 ん・・・」
プロのようでした。
「ひいいいい!」
「ね、こわいでしょう?」
「は、はい、
ここまでくればもう立派な妖怪だと思います!
王様より怖いです!」
♪ゴン!
「あ、ごめん。
ぶつかってしまった。
俺あたま硬いから・・・大丈夫?」
「だ、だいじょうぶ・・・てか君、もしかして・・・」
「ちょっとまって!」
「どうしたんです?」
「いま、眠れそうになった」
「ほんとうですか!?」
「うん。なんか、うとうと、って・・・
ああ、肝試しにちょっとでも参加できたんだなあ・・・
って・・・
くー・・・」
「「やっっったー!!」」
賢者と、ライオネルと名乗った青年は、同時に叫びました。
もちろん、姫様を起こさないように声を落としてですよ。
ライオネル青年はいいました。
「大成功だったな!賢者!」
「王様だったんですねえ!あんまり若返っているから、わからなかったですよ」
そう。ライオネルと名乗った青年は、実は姫様のお父上、王様だったのです。