大手町のゴースト 6 ・・・セクハラ部長の命により、メンタル社員、総務課へ
今日はこれで、おしまいです。感想や評価いただけると、とてもとてもウレシイです。かけだし者ですから、ずうずうしいおねがいですが・・・
その翌朝。
「え」
話をきいて、一瞬、驚愕したのは業務課長の朝倉晶子氏である。しかしすぐに平静にもどった。そして総務課長をカタキでも見るような目でにらんだ。
「ご迷惑、おかけしました」
彼女は熱田くんの上司だ。総務課長とはえらく異なり、花形部門の課長である。辣腕の冷酷美人。背もすらりと総務課長より高い。そして彼女は総務課長のずいぶん後輩だった。
「本当にご迷惑を」
そういっているが、迷惑なのはこちらだといっている。とんだ新人をつかまされた、という目をしていた。あんたが支店長にいって、あんな新人を私の部下に配置させたんじゃないのかしら、という顔をしていた。
「昨夜、連絡しようと思ったんですが、遅かったし。大事にはいたらなかったし。まあ、今日は休むようにいってあります」
「お気遣いなさらず連絡してくださればよかったのに・・・」
と、彼女は総務課長をにらむ。連絡しなかったのは、何か魂胆があってのことか?という意味である。いえ、とんでもない、それどころじゃなかったのだぞ、と総務課長は目でいいかえした。
熱田くんの件は実際、大事にはならなかった。彼は翌々日には出勤した。
自殺未遂をおこしたことは、管理職だけの秘密にして、職場のみんなには伏せていた。
総務課長は部長室に呼ばれた。
「彼女も、まじめだからなあ!新人課長として、がんばってるだろう。あの新人もまじめだろう。まじめで几帳面で少し不器用で。ああいうのが危ないってのは通説じゃないか、メンタルヘルス管理上の。なあ、総務課長!」
部長が語る。でっぷり太った大男で好色の、いまだに銀座の場末のバーで夜歩きし、職場の若い女子職員にメル友になることを強要したりしている、セクハラリスクに満ちた部長であった。
「そうだろう、総務課長!」
部長のどうま声で耳が痛くなる。それでも総務課長は「はい」と愛想よく答えた。
「メンタルヘルス管理は総務課長の仕事だ。頼むぞ」
「はい?」
「側面から支援してやれ。熱田くんを。頼んだぞ」
「はい。承知しました」
総務課長は部長に敬礼した。
・・・つづく