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異世界行って何が変わったよ?  作者: 尻尾の形
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第4話-幸先の不安

無駄に広いロビーの中央に二つ並んで配置されていた木製の椅子に腰をかけ、頭を抱えている少年と少女の姿がそこにはあった。


「なんでこう、何もかにも上手く行かないんだ...」


「少しは隼人はやと君に期待していたんですけど、初手でつまずくとは思ってもいませんでしたよ...」


「やめてくれ〜。流石の俺だって心と胃が痛くなるから...」


「どこが流石か分からないのですが...」



〜時は約二時間に遡る〜


「儂は今から家を買いに行くのだが、その間に、隼人はやと君となずなは、役所に行って儀式の正式な申請をしてきてくれ」


なずなの父、甲斐カイヤマ堅矢かたやは、渋みのある声で俺に、いや、俺たちにそう語りかけた。



「申請なんているんですか?」



「当たり前だ。申請無しでドゥセィしても、それは只の同棲になってしまう」


「あの、申請するのは分かったのですが、ドゥセィ中に本当に何も起きな無かったかをどうやって確認するんですか?」


そう。この世界は、地球ほど発展はしておらず、監視カメラなどの技術は無い。もし仮に監視カメラ的なシステムがあったとしても、一日中監視など殆ど不可能に近いのだ。


「そんな事、儂は知らん。役所の職員に聞け」


「は、はぁ...。分かりました」


なんて投げやりなんだろう...


「家の前に馬車を用意しておるからそれに乗って行くといい」




家から出て大きなため息をついた後、堅矢かたやさんに背中を押され、小さな馬車に乗った。


馬車と聞いて、よく貴族が乗っているイメージのある、金色のドアやシャンデリアを逆さまにしたような屋根が有ったり、ふかふかの何かを真紅の布で包んだソファーが装備してあるようなものを想像したのだが、大きめのリアカーに馬を付けて走らせているような安っぽい感じの作りだった。


こんなんに乗ったらお尻に対する負担がやべーよ。猪の事もあるしそろそろケツからクレームくるぞ...。


俺に続いてケツ破壊マシーンにナズナが乗ってきた。俺の正面のに座るのかと思っていたがナズナは俺の右隣に座った。


こういう何気ない行動が童貞をドキドキさせるんだよ。

以後、気をつけて頂きたい。と思ったが今後もやっぱり横に座って欲しい。


くっそ。話題に困る。こういう時はやっぱり天気の話か?いや、絶対引かれる。俺が仮に『いい天気だね』とか言ったら『そ、そうですね』としか言われないよ。絶対話広がらないよ。


こういう時は無難に...


「...えっと、役所までどのくらいかかるの?」


「え、あ。...大体、一時間くらいで行けます」


「そっか。結構近いんだね」


「そうですね。隣町が王都ですので」


「隣町に王様が住んでるのに、なんでこの町は農業しかないの?」


俺は不意に感じた質問をなずなに投げつけた。


そう。馬車から見える景色は青々しい畑と、米か麦の様なものが生い茂っている広大な土地と、田舎町に合ってない豪華な家しかないのだ。


「農業しかってなんですか!しかって! これでも皆んな、誇りを持って頑張ってるんですよ!」


なずなは頬を膨らませ、怒った。


そりゃあそうだよな。自分たちの生きる術やその仕事について、馬鹿にされたようなものだもんな。

完全に失敗した。話は広がったが嫌な思いさせちゃったら元も子もない。


「いや、あの、ごめん。無神経な事言っちゃって」


俺が謝ると、なずなは自分が怒っている事に気付いたのか、頬を赤く染め口元を手で覆った。

うん。かわいい。


「あの、私もごめんなさい。熱くなりすぎました」


俺は不意のなずなからの謝罪で硬くなった口元が緩んでいた。


「え?なんで笑ってるんですか?」


「ん?あ〜、えっと、なずなちゃんって意外と感情表現豊かなんだなって思ってさ」


そういうと、またなずなは頬を赤くし、下を向いた。と思ったら直ぐに顔を上げ頬を膨らませていた。

あれ、なんか会話がリア充っぽい。


「また怒りますよ...」


「ごめんなさい」


勘違いだった。


「あの、それでさっきの話についてなんですけど...」


「え?聞いてもいいの?」


「はい...」


そう言うと、なずなは軽く咳払いをしてこう続けた。


「この国の王都は過去512年の間、ずっと国の中心の[エリゼリ]と言う都市だったのですが、[エリゼリ]では10年前に不治の病が流行りまして、前国王が[エリゼリ]を捨て、私たちの住んでる町の隣町に越してきたのですが、何せド田舎したので、資源もなく人手も足りない中、急激に都市を発展をさせた事によって、周りの町の資源を根こそぎ持って行かれたのです」


「誰も講義しなかったの?」


「勿論しました。でも、前国王は、こちらの町の住民全員に、[永久的な税金の免除][3000平米の家]のどちらか好きな方を進呈する。と言い出したのです」


「だから、ここまでみんな家が大きいのか。ただ、よくそれで経済が回るな。日本だったら経済破綻待った無しだぞ...」


「回ってないからこまってるんですよ...。前国王が馬鹿すぎたんです。今の国王が立て直してたとはいえ、まだ完全回復は出来てませんし...」


その言葉を境に俺たち二人は沈黙した。


それから約10分、馬車に揺られて俺の尻を順調に破壊している時に何処からかスースーと言う音と同時に右肩に小さめのスイカで殴られた様な衝撃が走った。


そう。ナズナが寝たのだ。それも、肩に頭を落とすという最強のコンボで。


何この生き地獄アンド生き天国。


それからナズナが起きるまでの40分間、身動きが取れず、手足プラス右肩が痺れましたとさ。


目的地に到着し、固まった体をほぐす様に伸びをしていると、顔を赤くしてナズナが怒っていた。


悪夢でも見ていたのだろうか。それとも俺みたいなのにずっと触れてたから不愉快だったのだろうか。


後者だった場合は立ち直れないな。


そして、俺は体をくるりと半周させた。


目の前には巨大な神殿があった。否、それは神殿ではなくこの国の役所だ。だかそれは、神殿と言った方がしっくりくる程豪華な造りだった。


「やっぱりデカイな〜」


「そうですね。隼人はやとさんを縦に10人分くらいと言ったところでしょうか...」


「そうだけどそうじゃない気が...。まあ、いいや」


隼人はやとさん。とりあえず中に入りましょう」


「うん。あ、後さ、一緒に暮らすんだし、[さん]はやめない?」


「じゃあ、隼人はやとくん...で、いいですか?」


「敬語も気になるけど、今のところは大丈夫かな」


「あの、私も呼び捨てで結構ですので」


「分かったよ。ナズナ」


そう呟いて、俺とナズナは無駄にデカイ両開き扉を力一杯押し、役所の中に入った。


入り口を超えると大きな文字で『窓口』と木に彫られている看板を見つけた。


「あのさ、俺、この国の文字ってひらがな、カタカナ、漢字があるの?」


「あ、それは隼人はやとくんに一番読みやすい文字が見える魔法が看板にかかっているんですよ。魔法がかかってないものだと全てこの国の文字にしか見えません」


「あ、そういうことね」




窓口へ行くと胸の大きなお姉さんが受付対応をしていた。


「あの、ドゥセィの受付をしたいのですが」


「はい!ドゥセィの申請ですね!では、まず最初に身分を証明できるものの提示をお願いしします!」


「え?」


「お持ちではございませんか?」


当然持っているはずない。


第一、俺、こっちの人間じゃないし...


「ごめんなさい。ないです...」


「では、また後日宜しくお願いします。ありがとうございましたー!」


「え、いや、ちょっと待って下さい!」


「なんですか?」


「あ、いや、なんでもないです...」


「またのお越しをお待ちしております!」



〜そして今に至る〜


「どうするんですか!本当にヤバいですよ!」


「そんな事言ったって...。身分証って何処で作れるの?」


「基本的には生まれた時に、国民全員に10桁の番号が登録されてるんですよ」


「マイナンバーみたいな感じか。でも、俺ってそんなん持ってないよ?」


「まあ、もってない人もたまにいるので、ここで申請出来ますけど、途中申請する場合はこの国に永住してもらわないとダメなんですよ。それに、番号が発行されるまでに、1ヵ月以上かかります」


「その番号を持ってない人ってどんな人?」


「基本的には他国の人と、魔族と、獣人と奴隷ですね」


「もっと詳しく」


「あ、はい。えっと、他国の人、つまり隼人はやとさ..くんの様な人は申請できるのですが、魔族は人に危害を加えるので申請は出来ません。獣人はどの国で生まれても、人では無いのでそういった個人番号を持てません。ただし、個人番号を持っている人間の紹介があれば、取得は可能です。奴隷は人権というものが存在していないので一人の人間として番号を貰えないのですが、その奴隷の持ち主。つまり主人が奴隷解放をする事を望めば、個人番号を取得できます」


「主人が望む時ってあるのか?」


「はい。昔、貴族の人がある奴隷を飼っていたのですが、ある時その奴隷と恋に落ちてしまいました。でも、やはり奴隷は奴隷。二人の恋は誰にも認められず、二人は引き離されてしまいました。そして奴隷は自殺をしてしまいました。奴隷の事を好きになった貴族は怒り、国に訴え、裁判を起こし、最終的に、主人が望むのならば奴隷に人権をあたえ、普通の人間として生活できる様になったのです」


「なんか、すごいな」


「はい!私はこのお話が大好きなんです!」


「でも、亡くなった奴隷は報われないな。もっと早く行動していれば二人は結婚出来ただろうに...」


「そうですね。でも、大好きになった人が、死後も自分を愛してくれて、自分達の様な過ちを犯さない様に、一生をかけて、国と戦ってくれた所が凄くカッコいいなって思いますし、きっと天国では幸せになれたと思います」


「そっか」


「はい!私はそう思います!」


ナズナは笑顔でそう答えた。







最後まで読んでいただき、ありがとうございました。


また今度、貴族と奴隷の恋物語について短編でも書こうと思っていますのでその際には目を通していただけると嬉しいです!


そしてこの作品もまだまだ続きますので、気長にお待ち下さい!


では、またこんど!

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