第1話-鬼畜ってる異世界転生
「それじゃ、早速行こっか!異世界へ!」
女神様は元気よくそう言った。
「いやいやいや、待ってくださいよ。それ以外の説明は無いんですか?」
女神様の説明が短すぎて、俺は心底焦った。
「それ以外の説明って?」
「例えば、異世界へ何か一つ持っていける。とか、特別な力が貰える。とかですよ!」
「無いに決まってるじゃん。そんなの。君がこの世界から持っていける物は、初期装備品の今着てる服とこっちの世界の記憶だけだよ」
「そんなぁ」
俺は心底がっかりした。何せ俺は異世界の知識は何一つ持ち合わせちゃいないし筋力も殆ど無い。
「じゃあこうしよう!君が転生してから2週間以内で一つ目のミッションをクリア出来たら、『筋力』『知力』『魔力』『回復力』『洞察力』のステータスの内のどれか2つをカンストさせてあげよう!」
「まじっすか!ありがとうございます!」
「一つ言っておくけど、この条件は不可能に等しいよ。転生して2週間以内に住居を見つけてどんな厳しい試練かも分からないものをクリアすると言っているんだ。覚悟はしておいてね。あ、後、2週間以内にクリア出来なかった場合は私のお願いを一つ聞いてね!」
神が人間にお願いを要求するなんて本末転倒だ。まあ、ここまで無理を聞いて貰ってるんだ。そんくらいはしないとな。
「分かりました。でも、クリアしちゃうんで問題無いですけどね!」
「ただのビッグマウスにならない事を願っているよ。それじゃ改めて、異世界に行こっか!」
「はい!よろしくお願いします!」
俺がそう言った瞬間、視界が閉ざされた。闇でも光でもない。黒でも白でもない。全てが透き通っている透明の空間。奥に何があるかはわからない。でも透明ということだけは分かる。
気がついたらそこは山頂だった。木々が生い茂り、虫の声が聞こえる。自然に囲まれた山だ。
「目覚めるの、今までで君が最速だったよ!おめでと!」
「何分くらい寝てました?」
俺は眠い目を擦りながらそう聞いた。あ〜。目がショボショボする。
「3日だね!」
「ん?え?...は⁈」
「平均は4〜5日はかかるからねぇ。君、実は体力凄いでしょ?」
「まあ、昔は野球部だったんで、多少は...。てか、そんな事より転生して3日も経ってるじゃないですか!あと11日しかないですよ!」
「そだね。ま、頑張ってね!」
理不尽だ。酷すぎる。こんなの聞いてないぞ...
「じゃ、君が起きるまで見届けた訳だし、私の仕事はこれでおしまい!また気が向いたら時に遊びに行からね!じゃあね〜」
女神様は垂直に飛んで行った。羽が生えてないのにどうやって飛んだんだ...。それにこういうのって普通、光の道みたいなのが空に出来てその中を通って帰るんじゃないの?ま、いっか。
「ここに居ても何も進展しないし降るか。始まって直ぐ、知らない内に3日もたったんだ。急ごう」
そう思い、周りを見てみたが、降りる道がない。いきなり詰みだ。
「あの女神ふざけやがって〜!ちゃんとした所に降ろせよ!」
俺は全力で腹から叫んだ。
女神様の笑い声が聞こえた気がしたが勘違いだろう。まあ、文句を言っても仕方ないな。何とかして山を降りる方法を探さないと...
「開始早々の鬼畜イベント。初見殺しもいいところだとな。こんな生活が続くなんて考えただけで鬱になりそうだ」
俺は頭を抱えた。