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他と比べてちょっと短いです。



 今の状況をみんなで確認しよう!

・お父さんとようたくんはタップジンに夢中。

・お母さんは雑誌を読んでいる。

・ゆうなちゃんはりんごちゃん中。

・僕はりんごちゃんごっこで怪人役。

・今りんごちゃんはプリティストンプをしている。

・二人のお姉ちゃん?は今帰ってきたばかりで状況を知らない。



 つまり彼女は今、僕がゆうなちゃんに踏まれているという現状しか知らない。


 確かに僕も目の前に僕みたいな人が幼女に踏まれていたら無理やりそういうことをさせる変態って見るだろう。


「ねえ、変態。なにやってるの?」


 ああ、やっぱりそうか、弁明しないと…


「マイスターはね、ゆーなとりんごちゃんごっこしてくれてるんだよ!ゆーなのりんごちゃんすとんぷをうけてくれているんだよ!」

「よかったね優奈、おにいちゃんが遊んでくれたんだね!」

「お姉ちゃん!マイスターすごいんだよ!タップジンでスカイフライスラッシュやったんだよ!」

「そうかそうか、陽太も遊んでもらったんだね。」


 僕が弁明する前に説明してくれたよ。二人ともええ子や。


「こちらは生茂玩くん。いつも陽太と優奈とおもちゃ屋で遊んでくれているお兄さんだ。」

「すみませんお邪魔してます。」

「あんたうちのクラスメイトだよね?」

「へ?」

 なに言ってるんだこの人。俺はこんな人クラスで見たこと…そういやクラスメイトの顔覚えてないや。名前ももちろん。立川さんっていたっけ?


「へ?って高富坂内高校の1年3組の。しかもあんた主席じゃない。入学式で挨拶してた。お父さんもお母さんも見たことあるはずだよ。」

「どこかで見たことあると思ったらそうだったのか!しかも高富坂内の主席って天才じゃないか!」

「玩くんおもちゃ屋でばかり見てたから知らなかったわ。」

「あんた、いつも早く帰るのって塾じゃなくておもちゃ屋行ってたんだ…」


 なんか変な目で見られている気がするが問題ない。


「部活でお疲れの中部外者がお家にいたら休めませんよね、僕はこの辺で失礼しますよ。」

「えー兄ちゃん帰っちゃうの?お姉ちゃんスカイフライスラッシュ完成してないよ!」

「まだりんごちゃんごっこ終わってないよ!ゲロロンたおせてないよ!」

「陽太くん、スカイフライスラッシュは1日にしてならず、毎日努力してたらできるようになるよ!優奈ちゃん、ゲロロンはアニメで倒されているから大丈夫だよ!」

「二人とも仲良くなったみたいだしいい子だから夕飯も食べてってもらおうと思ったけど無理に引き止めるのも悪いですものね。今日はありがとう、また二人と遊んでいただけませんか?」

「もちろんです!二人とも平野であったら声かけてくれよ!」

「「うん!」」

「またうちに来てくれ。歓迎するよ。」

「ありがとうございました。失礼します。」



 玩が家へ帰った後の立川家では。


「おにいちゃんかえっちゃった…。」

「ゆうな、そんなに悲しまなくても多分またおもちゃ屋さんで会えるよ。あのお兄ちゃん暇そうだし。」

「そうだね!たのしみ!ようたお兄ちゃん、タップジンしよ!」

「おう!」

「二人とも随分あの少年に懐いたみたいだね。」

「そうね、小さい子にも優しく接するいいお兄さんだったわね。」

「遥が帰ってきてから妙に怯えたようだったけど、まさか虐めたりしてないよね?」

「そんなことするわけないじゃん。第一、あいつ休み時間も勉強しているぐらいガリ勉でクラスで話しかけづらいオーラ放ってるから接点すらないよ。」

「あの子いい子だから仲良くしてあげてね。」

「えーめんどい。」


 女子高校生は荷物とともに階段を上っていく。


「わたし部活なんてやってないんだけどな。」


 入学時、新入生挨拶で壇上に立って話している人物、生茂玩を見て尊敬した。聡明そうな顔立ち、静かな声色。こんな人と同じ学校なのかと補欠合格だった彼女は嬉しさとともに不安を覚えた。わたしは彼とクラスが同じになった。話しかけるなんて恐れ多いと思い遠くから眺めていた。彼は休み時間、ずっと勉強しているのだ。学校に来て、勉強するかトイレに行くかご飯を食べるか移動をするかの四つの行動しかしない彼の姿は別次元の人間であると強く印象付けただけだった。そして学校生活に慣れていくとともに、友人ができ、雑談していると。彼のことは視界からだけでなく、頭の中からも消えていった。

 しかしそんな彼が、今日家で歳の離れた弟と妹と遊んでいた。楽しそうに、だ。普段、わたしは弟と妹とは年が離れすぎていて一緒に遊ぶことはしない。世話をするだけだ。だが、彼は二人と同じ目線で楽しんでいた。その様子を見て少し羨ましく思ったと同時に、別世界にいた彼を少し身近に感じていた。







「ただいま。」

「……」

 家には兄しかいない。休日だというのに。その兄すらも返答はない。

 冷蔵庫のドアを開ける。中にはご飯はなく、食材が入っているだけだ。

 兄が階段を下ってくる足音が聞こえる。


「玩、おかえり。ご飯は自分で作ってだって。」

「兄さんは?」

「もう自分の分を作って食べたよ。」

「そう。」

「洗濯物。自分の分洗って干しといてだって。」

「そう。」


 これじゃあ一人暮らしと変わらないじゃないか。さっきまで立川家の温かい雰囲気に包まれていたからこそ、一層寒く感じる。もう春も終わろうとしているのに。

 簡単にもやしと豚バラを醤油で炒めてちぎったレタスとともに皿の上に乗せる。凝った料理を作る気にならない時の簡単男飯だ。まずくはない。これならセントラルパークで食べればよかったかもしれない。





 友達、作ろうかな。


 静かなリビングでシャキシャキと口の中からもやしが音を立てる中で蒼一郎さんの言っていたことが今、ようやく理解できたのかもしれない。


読んでいただきありがとうございます。ブックマーク、評価を何卒お願いします。

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