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 な、なんだってーー!


 蒼一郎さんは厨二病元患者だったのか。どおりで言いたくないわけだ。そりゃ封印していた中2のときに書いたぼくのかんがえたひっさつわざをいきなり使えるようになったと自分の口で言えるわけないよな。創造神に遊ばれてるな。蒼一郎さん、御愁傷様。

 加害者である創造神は腹を抱えて笑っている。

 にしても【漆黒と蒼天の秘儀の書】か。プッ。


「あっ、笑ったな!玩くん、君笑ったな!」

「いやぁ、笑ってないですよくッ!そんな、苗字と名前にかっこいい色が入ってたらそりゃやりたくなりますもんね、ふッ!痛いイケメンだとは思っていましたけどここまでとは。ププッ!」


 蒼一郎さんは静かにノートをビジネスバッグから取り出した。

 百均で売っているようなものではなく結構装丁がしっかりしているものだ。


「……………地獄からの使者に告ぐ、無限のくすぐりと悠久の尿意を彼らに与えよう。そして後悔するまで呼吸困難と失禁を授けよう。」


 むっ脇腹をくすぐられたような、足の裏もだ!全身、くすぐられるのに弱いところをピンポイントにくすぐってくる!うわっやめっ、やめてくれ!下腹部にも違和感が!トイレ行きたい!けどくすぐりが!あっひゃっひゃ!アフンッ!あひゃあひあひゃひゃひゃひゃ!うひゃ!漏れる!うひひゃ!ひゃひゃっ!







「「もうしわけございませんでした!!!」」


 僕は創造神とともに土下座した。失禁をせずにずっと尿意を刺激されつつ、身体中の弱いところをくすぐられるのに耐えられなかった。あんな殺人的な技を持っているなんて。あんな拷問技を持つ蒼一郎さんは絶対に怒らせてはいけない。絶対にだ。


「蒼一郎さんの能力、ひょっとして最強なのでは?まだあるんですよね?」

「うん、文字数は殺人的だけど相手は絶対死ぬとか存在そのものが全ての歴史から消えるとかあるよ。馬鹿だよね。文字数減らせばすぐに使えるのに。ね。」


 こっち見て強調しないで、お願いします本当お願いだから!


「いや、マジですみません。本当、2度とこのことで笑いませんから。はい、絶対に。いやもう笑えませんから。」

「私もちょっとやりすぎたと思うよ。ごめんね。」

「その能力かなり優秀ですけど読むのに集中と時間がかかりますよね。暗唱するのは難しそうですし。ノートって発動に必要なんですか?」

「必要だね。前衛になれる能力もあるけど僕は基本後衛に徹するよ。玩くんはその腰につけているグレンドライバーを使って前衛をしてくれないかな?」

「僕も丁度そう考えていました。それが一番じゃないですかね。」

「決まりだね、コンビネーションを確認してみようか。」


 創造神に頼んで仮想敵を出してもらい、何度か戦闘訓練をする。


「昼ごはんの時間だけどどうする?」

「一回家に帰るとか?うち、いま家に一人もいないんですよね。飯の準備すらしてませんでした。」

「んじゃ、セントラルパークで食べようか。結構キッチンカーでてるよ。」

「でもあんまりお金が…」

「大神殿勤務だったらG石板の身分証見せればタダになるから。」


 福利厚生最高なのでは?さすが神さま。


「大神殿内のレストラン、『最後の晩餐』では美食神のめちゃくちゃ美味いご飯が食べられるよ。ま、神力を払わなきゃいけないんだけどね。」


 せっかくならそこで奢ってもらえないかな。神力使い切っちゃったし。


「幾らかかるんですか?」

「100万。」

「「………………」」

「最高神の一人だからね。それなりの格が必要ってわけだよ。」


 何も言えない。ちょっとでも美食神のところで奢ってもらえないかなって思った僕が悪かった。そんなん奢ってもらったら申し訳ない気持ちでいっぱいになっちゃう。

 セントラルパークに移動してサンドウィッチを購入する。トマトとチキンとバジルのイタリアンなサンドウィッチだ。蒼一郎さんはスープパスタを買っていた。僕らの買ったものを見るといかにもOLみたいだが、他のものが某山盛りニンニクマシマシなラーメンとか中○の激辛タンメンとかガッツリにも程があるので必然的にOLっぽくなってしまう。男子高校生だからといって皆がガッツリメニューが好きなわけではないのだ。というかキッチンカーでラーメンを出さないで欲しい。

 しかし、創造神は某山盛りニンニクマシマシ系ラーメンを選んでニコニコしている。満面の笑みで器を持ってこちらのテーブルに近づいてくる。


「何でああいう店あるんだろうって思ってたんですけどあの人のせいだったんですね。」

「私も店の並びを不思議に思ったけれどあの笑顔を見て納得しました。」

「やあ、お待たせ。これ好きだからここ来ちゃうんだよね〜。美食神のレストランよりこっちの方が好きだよ。」


 多分、創造神は立派な男子高校生をやれると思う。もうちょっと神様として舌を大切にして欲しいものだ。


「言おうと思っていたんだけど君たち神力低すぎない?」

「え、それは創造神様と比べれば私たちの神力なんてちっぽけなものだと思いますよ。」

「いやいや、上限がさ。玩くんはこないだ会った時と変わらないんだよ。玩くんは900。対して蒼一郎くんは1500。流石にこのままじゃまずいって。」

「でも邪神討伐の話が来てませんし…」

「いや、邪神や眷属を討伐しなくても上がるって言ってたよ。」

「へ?」

「そう。蒼一郎くんはちゃんと聞いてたみたいだね。朝に体操をこの公園でやってるから参加すると神力上がるよって闘神の訓練が終わった時に言ったよね?聞いてなかった?」


 いや、聞いていたはずだ。疲れで聞き逃していたのか?


「あと、能力を使って訓練すると上がるよとも言ったよ。」

「それは言ってませんよ、創造神様。」

「え、そうだっけ?」

「僕は自室で色々試したんで上がったのを確認したので結びつけられたってだけです。」

「とにかく、玩くんは体操に来ること。時間を逃すと神力上がらないからね!」

「は、はい。」

「あと、神界以外で能力使ってもいいけどあまり多くの人に知られると面倒だから自重してね。処理が面倒だから秩序神に怒られるから。あの神は怖いよ〜。」

「はい、気をつけます。」

「んじゃ、僕は仕事に戻るからね。近いうち仕事はいるかも。予定空けといてね。玩くんは高校やめてもらえると便利なんだけどなぁ。」


 そうしようかなぁと返事をしようと息を吸った瞬間に間髪入れずに蒼一郎さんが反対した。


「創造神様それはダメです。私も高校では多くのことを学びましたし多くの友人ができました。その権利だけは奪ってはいけないと思います。」

「そうだね、聞かなかったことにしてくれ。それじゃあまた。」

「はい、また。」


 少し驚きだった。落ち着いた雰囲気を持つ彼が熱を持って自分の意見を強くいう姿を想像できなかったからだ。


「玩くん、神力は残っているかい?」

「いえ、もう100しかないんで変身も武器も無理ですね。」

「そうか。じゃあ訓練じゃなくて少し話をしないか?」


 僕は蒼一郎さんの誘いに首を縦に振って返事をした。セントラルパークの近くにあったカフェに入ってG石板を見せて蒼一郎さんはブラックコーヒーを僕はキャラメルマキアートを頼んだ。


「私は君のことをあまり知らないし、君も私のことをあまり知らない。なのに今回君の私生活に意見をしてしまった。これは私のわがままだよ。」

「僕はなぜ蒼一郎さんが高校を続けて欲しいっていうのかがわかりません。僕の中で高校はいい大学に、いい会社に入るためのただの階段の一段に過ぎない。そして人間を評価する判断材料の要素である称号の一つだと思っています。うちではそのようになってます。まあ、うちの両親はムカつくところが多くありますがお金だけはそれなりに稼いでますからその意見は正しいと思っています。そして僕の最終目標であったいい会社に入るは思いもよらぬ方法で達成しました。なので目的に対するただの手段である高校に通い続けるメリットが見えません。」

「君は私が思っていたよりドライなんだね。」

「ええ、一応そういう家庭で教育を受けてきましたから。さすがに染まりますよ。」

「じゃあ手段としての高校じゃなくて、逆に高校を通うのに目的を作ればいいんじゃないか?」

「と、いうのは?」

「そうだな、友達がいないだろうから友達を作るとか?」

「失礼ですね。」

「友達いないことを否定しないのか…そうか…」

「神界で、神様たちと永遠に近い時間を過ごすのに人間の友人を作る必要があるんですか?」

「君は今、神かい?」

「いえ。」

「今神じゃないというのに神と友達になれるのかい?」

「だから友達が入らないんですよ。」

「君は悩みを相談できる人がいるかい?」

「……」

「気軽に愚痴を言える人がいるかい?」

「……」

「友達は精神的支柱になってくれるんだよ。また自分も他の人の支柱になってあげる。それが心地よいんだ。ま、友達がいないとわからないだろうけどね。」


 なんかむかっときた。そんなに友達がいることが偉いのか。そんなに人と触れ合うことが偉いのか。

 気持ちが表情に出ているのだろうか、蒼一郎さんはわかりきった顔でこちらを見てくる。


「高校じゃなくてもいいさ。人間関係の多くのことを経験してみたらいいと思うよ。それは自分を鍛えてくれる。強くしてくれる。」

「新たな目標としていいですね。難易度は高いようだ。」

「普通の人にはそんなに難易度高くないと思うけどね。」

「うるさい、僕は普通の人じゃないんだ。」

「そうみたいだね、ははっ。思ったより荒々しい性格みたいだな。気に入った。じゃあ最初に、私が友達になってあげるよ。」

「そっすね、ありがとうございます。そして僕のことは君付けはやめてください。」

「よろしく玩。」

「よろしく蒼一郎さん。」


 蒼一郎さんは高校で色々学んだと言っていた。僕は高校に入ってから何もしていない。まだちゃんと業務はしてないといえど、いい仕事に就いたと思う。だから正直将来いい仕事に就くために入った高校をやめてもいいかなって思った。だって高校に通う目標を見失ったのだから。なのに蒼一郎さんは間髪入れずに創造神に意見をして僕に通えといった。そんなに重要な何かが高校にはあるのだろうか。友人はそんなにいいものなのだろうか。僕はゴールデンウイークが終わったら、まずはもう少し有意義に高校生活を送ろうと思った。


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