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次の朝、G石板には何も通知がなかった。蒼一郎さんは本解放をしていないことに何も思うところがないのだろうか。はたまたもとより何も聞いていないのか。
創造神様に何かしらのアクション起こしたほうがいいと思うけどどうしたらいいものか…
と、もやもや悩みながらG石板を弄っていると、電話帳アプリの中に【サポートセンター】という名前を見つけた。なんのサポートセンターかはわからないが、0120から始まるしとりあえずかけてみよう。通信料って給料から天引きなのかな?G石板ってそもそもどうやって通信しているんだ?と考えていると電話が通じた。
「はい、こちらサポート神によるサポートセンターです。役職、ご用件を述べてください。」
「生茂玩で役職は尖兵?、要件は能力の本解放について聞きたいのですが。」
「はい、少々お待ちください。」
電話は保留モードにされたのか、第九が流れ始める。誰の趣味なんだろう。
それよりもサポート神ってなんだ。やはり説明にあった通り何もかも神がいるのか。
「お待たせいたしました。創造神様に伺い立てたところ『本解放?ああ、もうしているよ。神の説明したでしょ?あの時ちゃちゃっとやっちゃったから。気にしないでいいよー。わざわざサポート通さないで直接電話してくれてもいいのに。あと、仕事明日頼むからよろしくー。』とのことでした。」
「わかりました。わざわざ通してもらってすみませんね。ありがとうございました。」
なるほど、すでに本解放はしていたのか。研修前におもちゃ屋で見た文言と昨日の大会で発動させた時の文言が違うのは本解放がすでに終わっていたからか。
明日邪神退治のためにも能力を慣らしておくべきだと思う。蒼一郎さんも誘って能力情報交換とかもいいかもしれないな。普通の携帯の方から蒼一郎さんに能力教えあいませんかという本文と場所と時間をメールを送った。
次の日、蒼一郎さんからメールの返信があった。返答は「オッケー行くよー」だ。
持っているおもちゃをボストンバッグに詰めて、マップアプリの多目的室をタップしてそこに転移する。
「ここが個人訓練場か、前のところと違うな。なんか普通の体育館みたいだけどこれまるまる一人で使っていいのかな?」
ボストンバッグからおもちゃを取り出す。持ってきたのは
《ブラッドファイター グレン》の変身バックルと武器の首斬椿
《銀河伝説スターバイパー》の主人公機スターバイパーのフィギュアと敵量産機のハブ
《ホビシャ》のミニカーのワンボックスカーとショベルカー
である。タップジンは使えることは分かったので置いてきた。戦闘に使えないからというのもあるが。
まずは変身バックルを取り出し、玩具野郎を発動させると念じる
【ブラッドファイター グレン 変身バックル血華変圧紅蓮ドライバーは現実化できます。使用神力600】
使用神力とは?よくわからないのでG石板を引っ張ってくる。マイページに自分のステータスが書いてあった。
生茂玩 15歳 男
職業 高校生 邪神対策特殊兵
神力900/900
1回だけ使える状態か、神力の上限を上げる方法を創造神がなんか説明していたな。他のが使えない可能性があるのでまずは他のを見てからにしよう。
【ブラッドファイター グレン 斬首滅殺 首斬椿は現実化できます。使用神力200】
刀はバックルよりも低いのか。バックルの方が変身する機能だったりと性能が高いから使用神力は質量よりも効果範囲とか性能に関わっているのかな?
【スターバイパー1/144は現実化できます。使用神力10000】
【ハブ1/144は現実化できます。使用神力6000】
うわ、ロボット類は高いな。
【ホビシャ ワンボックスは現実化できます。使用神力900】
【ホビシャ ショベルカーは現実化できます。使用神力1200】
車は高いがロボットほどではないな。現実化後の機能と質量に依存した神力なのかな。今のところ使えるのは変身バックルとバールとワンボックスカー。ワンボックスカーは神力を使い切ってしまうので、今のところ使えない。
「とりあえず、変身できるのかな?消費した神力はどうやって回復するんだろうか。なくなったままだと無駄遣いになるし。」
「大丈夫だと思うよ、神力は0時に全回復するみたい。」
「あ、蒼一郎さん、いなかったんで来ないかなって思ったんですけど」
「ごめんごめん、昨日は声優イベントで大阪行ったあと彼女と飲んでてね。二日酔いで起きれなかったんだよ。あ、りんごちゃんの声優さんめっちゃ可愛かったよ。」
この人、やっぱり残念イケメンだ。彼女と飲んでいたならまあ仕方ないか。羨ましくないんだからねっ!
「そうそう、君に僕の能力を教えていなかったからさ、僕にも君の能力教えてもらいたいなって思ってね。」
確かに、2年一緒にいたのに能力教えていなかったな。無駄に警戒していんだっけ?
「僕から言いますよ。まあ、ここに転がっているものを見て貰えば大体推測できると思いますが、僕の能力は【玩具野郎】って言いまして、おもちゃを設定通りに現実化出来るってものです。」
「…………」
蒼一郎さんは黙ってしまった。あれ、僕自身使える能力だと思ってたけどしょぼかったかな?
「…………うっ、羨ましい。りんごちゃんのフィギュアを現実化したらりんごちゃんがここに現れるってことだよね。それって最高なんじゃない?究極じゃない?さすがは神の能力って所だよね。ねえ、なんでもっと早く教えてくれなかったの?伝える時間あったよね?ねえ?修行中とかにでも情報交換できたよね?勉強教えているときだって。もちろん僕も自分から情報交換を申し出なかったことを悪かったと思うよ。でもね、そんな優秀な能力を黙って自分だけで使おうだなんてひどいと思わない?ねえ、なんか言いたいことある?」
すごい圧をかけて迫ってくる。
「ちょっと待ってください。僕も美少女フィギュア買ってそういうこともできるなぁって考えたんですけどね、さすがにすぐに行動に移してはいけないと思うんです。だってもしりんごちゃんが現実化されたとしますよ、蒼一郎さん、あなたは作中のりんごちゃんの知り合いですか?りんごちゃんからしたら年上の知らない男性に迫られるんですよ?警察沙汰ですよ?ヒロインのことを嫁って言っている人とか二次元には入りたいとか言っている人と同じですね。よく考えてください、『別にヒロインはお前のことをなんとも思っていない、塵芥と同等だ』と。」
「グフッ」
イケメンが吐血した。よほど精神に来たらしい。
「そうだよね。うん、興奮しすぎた。」
「いや僕もすみません。年上相手に説教じみたことを。調子に乗りました。」
「いやいや、君の言っていることは正しいよ。うん、正論だ。」
「いや、でもですね、作品を選べばできないことないと思うんですよ。りんごちゃんは厳しいと思いますが、日常系のメタネタ多めのやつとかだと現実化してもすぐ納得しそうじゃないですか。あと従順なメカっ娘とか。かわいいメカっ娘のプラモとかありますしね。」
「それは名案だよ!」
「ま、おいおいやっていきましょう。」
自分でも名案だと思っている。でも現実化するにはそれなりの覚悟がいる。変身バックルとかの道具なら別にいい。でも生き物のおもちゃを現実化して、またおもちゃに戻さなければならないとなると言い表せない罪悪感に襲われるような気がするんだ。だからむやみにできない。おいおい、そう後々やっていけばいい。どうせ人生長いのだから。
「じゃあ、蒼一郎さんの能力を教えてください。」
「……………」
おっ、黙ってしまった。うつむいて右ななめ45度を向いて黙っているぞ。言いたくないのかな?足が震え始めたぞ。突っついたプリンみたいにぷるぷるしてるぞ。
「えっと、何か事情があるんですかね?いや、言いたくなかったならいいんですよ。」
「いや、玩くんの能力を教えてもらったんだ。僕の能力を言わなきゃ平等じゃないだろう。」
「あ、教えてもらえるんですね。」
「……………」
また黙ってしまった。ゼリーだよ足と手がゼリーみたいにぷるぷるしてるよ。ゼラチン質なのかな?確かゼラチンって動物の骨から作られているって聞いたけど本当なのかな?うげ、次にゼリー食べるときに少し覚悟が必要そうだ。
「ま、魔法が使えるんだ。」
あ、ついに喋った。でも目が泳ぎまくってる。夏祭りの金魚すくいの水槽のなかの金魚なんか目じゃない。葛西臨海公園の水族館のマグロぐらいだ。めちゃくちゃ泳いでる。スイスイ泳いでる。
「本当ですか?」
「………半分は。」
「そこは僕が説明しよう!」
あ、創造神様だ。暇なのかな?
「君!生茂玩くん!僕のこと暇なのかなって思っただろう!これでも忙しい身だよ!でも大丈夫!部下が優秀だから!君たちも直属の部下だ、心配して来たんだ!別に面白そうだから来たわけじゃないっ!」
「はぁ。」
この創造神、暇だったから面白そうなことが起きているここに来たんだな。
「そこで煮凝りみたいにぷるぷるしている黒戸蒼一郎くんの能力を僕が教えてあげるよ!」
「や、やめてください!私が自分で言いますから!」
「いや、言っちゃうね!黒戸蒼一郎くんの能力は【暗黒と蒼天の秘儀の書】だ!」
???
「簡単に言ってしまうと『中2のときに書いたぼくのかんがえたひっさつわざ』を使えるようになるんだ!」
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