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闘神による訓練が始まった。
闘神曰く「走り込みや筋トレは邪道。余計な筋力がつくからありゃダメだ。方と組手でそこに使う筋肉を鍛える。」だそうだ。ニュースの特集で足がムキムキな競輪選手でも使う筋肉が違うからちょっと歩いただけで筋肉痛になるという話を聞いたことがある。闘神が言っていることはあっているかもしれない。
「じゃあ、歩法から始めるぞ。左足を左前に出して1。右足を左足の近くに寄せて2。右足をさっきの場所に戻して3。左足を戻して4。今度は正面に左足を出して2。右足を同じ幅のところに出して2。それぞれ左から戻して3と4今度は右斜め3と2と3と4。今度は後ろ1234。」
僕たちはこの二日間、歩いてしかいない。確かに少し疲れるが、なにしてるんだか。一年だけで強くなれるのか不安だ。
「次は新しいのだ、構えろ。転換と言って足の親指の付け根のところに体重は載せてるよな。そこを起点に体を180度切り替える。足は前を通すんじゃなくて背中の方から回していく。親指の付け根だけで構えの向きを変えるのができていれば簡単にできるはずだ。やってみな。」
なんとも言えない練習である。こう修行って言ったらサンドバック殴ったりミット叩いたりするんじゃないのか?くるくる回ってて強くなれるのか?なんでくるくる回ってるんだ?
「次は受け身だ。左手をパーにしてから指を閉じて小指を前にして床につけろ。目線は自分の胸を見て腕を車輪のようにして回れ。それが前回り受け身だ。柔道みたいに足を打ち付けると硬い地面じゃ厳しいからな、足を途中で曲げて膝立ちから立てるようにしておいたほうが衝撃は少ないから………………
またまたくるくる回っている。三半規管を壊しに来ている指導方法だな。脳みそを横にシェイクした後に縦にシェイクすれば直ると思ってるのかな?余計に気持ち悪くなるだけだよ。
一向に攻撃に入らないし能力は一切使わない。この2週間はずっと体捌きと受け身の練習だった。柔道の授業でゴリラみたいな体育の先生が「受け身ができないと死ぬからな、受け身だけはしっかりやってくれ。」と言っていたので受け身の練習はしっかりやった。でも体捌きは歩いたり回ったりするだけで特色がない。暇だ。無心になって続けていた。
回りは真っ白で夜になろうと暗くならないので日にちの感覚なんて正直わからないが一年ぐらいだった頃。
「よし、一通りの基本は叩き込んだぞ。方は完璧かな。次は組手だ!」
組手の訓練に入った。まずは天使との戦い。天使のクラスの低いもの?人からスタートして5回勝ったら次のランクの天使という形で修行は続いた。
「よし、1年経ったから戦闘訓練を終わりにしようか。」
な、1年経っただと?「よし、1時間経ったし休憩しよっか」みたいなノリで言ってるんだ?歳をとると時間が過ぎるのが早くなるっていうけど僕は15歳だからね?いや、計2年分あの部屋で過ごしているから身体的には17歳か?
「最初に一年って言ってたのに倍近く掛かってると思うんですけど、私の勘違いですかね。」
「ああ、お前ら才能なかったから倍かかったな。でも強くなったぞ。ランク10まで倒せたんだからな。神力も上がっているだろう。」
ちなみにゴールデンウィーク課題は修行以外に何かしたかったのですでに終わらせた。というか一冊を3周終わらせた。さらに蒼一郎さんが実は最高学府を卒業していたので先生として高3までの勉強を教えてくれたのだ。ありがとう、蒼一郎先生。
309号室を出ると、創造神が待っていた。
「おっすーお疲れー、元気?とりあえず308に入って。」
とりあえず308に入る。クタクタなので早く家に帰って寝たい。
「えー、研修お疲れ様でした。戦闘はまあまあできるようになったみたいですね。研修はこれで終わりなんですけど、質問したいこととかってありますか?」
「今の僕の年齢を教えてください。15歳ですか?17歳ですか?」
「15歳です。時間が過ぎてないのでね。」
あの部屋めちゃくちゃ便利じゃん。宿題する時とか寝る時に入って終わったら出てきて遊ぶ。時短だよ効率的だよ。
「あの〜、時空神の部屋って好きな時に使えますか?」
「あれは時空神の能力を持っていれば使えるよ。神友になれば使い放題だね。」
「「神友?」」
「ああ、神と友達になれば権能を一部開放して使わせてもらえるようになるんだ。まあ神と友達になるには神にならなきゃいけないんだけどね。ちなみに僕は全ての神と友達だから全部使えるよ。」
か、神になればやりたい放題ってことか!あの部屋も使いたい放題だし、転移とかも出来ちゃうかも!闘神と友達になればその強さを貸してくれるかもしれない。
こうしちゃいられない。神にならねば。
「私たちはどうすれば神になれるんですかね?」
「神力を上げるしかないね。今ようやく900だからまだまだだね。10000から下位の神になれるからあと99100だね。頑張れ!」
「神力ってどうやったらあげられるんですか?」
「厳しい訓練でも上がるけれど本命は邪神とその眷属を滅すること。すると相手の神力が邪さを取り除いて入ってくるからそれで上げられるよ。あとは体操を毎朝6時にやることかな。大神殿前のセントラルパークでやってるから一回来てみなよ。いろんな神がいるから交友関係が広がるよ。」
僕はラジオ体操サボる人間だったからなぁ。そういうのって面倒だからあまり行く気が起きない。
「そういえば、次ここに来るのはどうしたらいいんですかね?私の記憶が正しければチケットもぎってきたので一回帰ったら来れないような…」
「ああ、それなんだけどね。そうだこれ神尖兵免許証をインストールしておくね。これがあれば大神殿内に自由に入れるから。行き来についてはG石板の移動アプリ開けば登録されてる地点に行けるよ。だから大神殿前にこれるし、現界の拠点にも戻れる。便利でしょう。」
転移アイテムきた!と思ったら家と大神殿を結ぶためのものらしい。隣町とかそういうのは無理そうだ。
「他は大丈夫そうだね。仕事して欲しい時はG石板に送るから。あと、能力は隠さなくてもいいから神関係のことはおおっぴらに喋っちゃダメだよ。せっかく人間が作った宗教が崩れちゃうから。まあ眷属にする予定の人とかならいいけど。それじゃあね!」
嵐のように喋り倒して去っていった。有益な情報をたくさんもらえたなぁ。
当面の目標は神になることだ。神になって友達をたくさん作ることだ。
人間でも作れてないくせにっていうのは言わないで欲しい。これから、これからだからね!
神はジャンル分けされてて上位の神ほど抽象的で下位の神ほど具体的なものになると言ってた。八百万の神という考え方はまちがっていないのか。狙う枠は玩具神だな。それ以上も以下もいらない。
「玩くん、もう帰るよね?G石板のメアドと連絡アプリと携帯の電話番号とメアド交換しない?」
「いいですね。これ、僕のです。」
「おっ、登録できたみたいだ。バディになるようだから改めてこれからよろしくね。」
「こちらこそ。これからが本番ですもんね。」
堅い握手をしてG石板で帰宅を選択する。目の前が真っ白になったあと、僕は家の前に立っていた。夕暮れ時だし、帰宅しても怪しまれないだろう。僕は鍵を開けて扉をくぐった。
「ただいま。」
「………」
返事がない、尸なのか?うちの家族は。しようもないことを考え自室にこもる。
蒼一郎さんは長い間辛い思いを共有した仲だ。彼の昔の話を聞くと結構散々な目にあっているようだが、いい人でよかった。仕事は不安だけどどうにかなりそうだ。
精神的にも肉体的にも疲れが溜まっていたのだろう。帰宅してすぐ布団に突っ伏したまま、僕は眠ってしまった。
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