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 18号館の見た目には驚かされたが、中に入ると普通のオフィスビルみたいな感じで、エントランスのほかはエレベーターの入り口と非常階段ぐらいしかない。エレベーターの登りボタンを押してくるのを待つ。外見はあれだけでかいくせに、10階建ほどしかないようだ。実際の国際展示場は吹き抜けが高すぎるのでそんなに回数はないから10階という数字は多く見えるはずなのだが、中はオフィスビルというのを見ると少なく見えてしまう。

 部屋の前で緊張して入れないということもなく、すんなりドアノブに手をかけ開けていく。するとまだ若い、20代後半、27歳ぐらいの男性がジャージ姿ですでに椅子に座っていた。男性がこちらを確認すると立ち上がりこちらを向いて軽く会釈してきた。確実にこちらの方が年下とわかるのに会釈するあたり職業病だったりするのだろうか。サラリーマンなのだろう。穏やかな笑顔をこちらに向けて話しかけてきた。


「こんにちは、君も研修会に参加するのかい?」

「ええ、なんかよくわからない神様からダイレクトメール貰ったんで。」

「そうかー、私もなんだよね。」


 しばらく沈黙が続く。ちゃんと人とコミュニケーションをとるのなんておもちゃ屋での店長とコマ周りの子供達ぐらいしかない。相手がオタクだったらアニメとか特撮の話できるけれど、このイケメンはどう見てもこっち側の人じゃない。どうしようと沈黙のままでいると、また話しかけてくる。


「お互い自己紹介しておこっか。神様にこちらの都合で時間取らせるのもアレだしね。今のうちにできるならしておこう。」

「そうですね。」

「じゃあ私から。名前は黒戸蒼一郎。年は27、アラサーだね。趣味は漫画とアニメ、好きな作品は《プリティフラッシュりんごちゃん》かな。よろしく。」


 ………いきなりどぎついのきた。


 いや、りんごちゃんは良作だから僕も店長に勧められて見た。話題確保だな。

 いや、問題はそこじゃない、そこはどうでもいい。このイケメンは自己紹介でプリティフラッシュりんごちゃんを出しやがった。初めて見たぞ、自己紹介で女児向けアニメを好きって言った奴。こういうやつオフ会とかじゃないといないと思っていた。あれ?オフ会に来てるんだっけ?いや、研修会に来てるはずだ。このおっさん、いやまだお兄さんか?頭やばいんじゃないか?予想した年齢がヒットしてたとかどうでもよくなっちゃったよ。


「そのキーホルダー、グレンだろ?わかるよーわかる。私もファンだからね。全方位オタクさ。」


 なに、この人できる!

 人を見分けるために一瞬で隅々まで観察できてる!この人ただのサラリーマンじゃないな?一部上場企業の営業か?


「いやーよかったです。イケメンなんでイケイケな人だったらそりが合わないんじゃないかなって不安だったんですよ。あ、今度は僕が自己紹介しますね。」


 僕は基本情報を話した。そしてお互い握手。蒼一郎さんはロリコンか、やばい人だ。


 能力については黒戸さんが言っていなかったので僕も言わなかった。この後どういう関係になるのか知らされていないからだ。同じ尖兵でもバディを組むのか、それとも競争するのかで変わってくる。いろいろ考えているとこの部屋の僕が入ってきたドアが開いた。


「あ、ちゃんと来てくれたね。私、創造神です。主神やらせてもらってます。早速研修会始めちゃおうね。」

「え、二人だけなんですか?」


 いや、さすがに研修会って銘打ってやってるのに二人なわけないでしょうに。せめて5人とかはいるでしょう、いるよね?


「ええ、二人だけですよ。問題ないね。はい、始めるよ。天使ちゃん、お二人に例のものを」


 いや、国民的大喜利番組じゃないんだから。と思っている間に能面のように表情筋が全く動く気配がない美人さんが厚さ1センチほどの石板を持ってきた。大理石をカットしたものに近い。スベスベで頰ずりしたい触りごごちだ。しかし何故石板?と首を傾げていると、創造神が解説を再開した


「あー、それ、G石板って言ってね、君たちの世界のタブレットみたいなもんだよ。それはあげるから。まずは君たちの立場ね、G石板に資料あるからそれ見て。」


 大理石のようなスベスベな表面をタップすると軽く光って文字が出てきた。これまんまタブレットだ。

 僕たちは神々の初の試みとして現界に干渉できる駒として選ばれたらしい。

 生物には魂があり、経験を積むほど魂に肉付けされていき一定値を超えるとランクが上がる。ランクが上がれば猫のような獣も死んだ時知的生命体へと転生することができるという。しかし神には魂のランクが上がればいずれなれるというわけではないみたいだ。神力というのが更に必要となるらしい。で、僕たちは尖兵にするために創造神からちょこっと神力を分け与えられた半神半人でもない中途半端だ。


「私はなんとなくわかったかな?」

「なんとなくですけど、把握しました。」

「そこらへんは今はどうでもいいよ。仕事内容だよ。」


 G石板をスワイプすると、次の画面に仕事内容と契約内容が映る。


 仕事内容は邪神、または邪神の眷属の討滅と、神からの依頼の遂行のふたつだ。邪神とは神力が邪なものに変わっていった神の総称らしい。流石の神でも邪な思いを一切ないとは言い切れないのでは?と質問すると、軽いのはお風呂に入って浄化できるけど、あまりにも邪すぎるのはどうしようもなく邪神界に吸い込まれていくんだとわかりやすく説明してくれた。神の邪な思いってお風呂で取れるんだな。ちなみに邪神を倒すと神力がプラスされるらしいので神に近づくのだとか。仕事をすればするほど人を辞めていくスタイル、ちょっと怖いかも。

 神の依頼については天使で解決できないことがこちらに回すから解決してくれということだ。依頼料は本人と話し合って決めていいということなので変なこと頼むような奴からはぼったくってやろう。


「以上が仕事内容だよ。神力が増えるとできることが増えるから二人で組んで頑張ってね〜。G石板に次の予定書いてあるから従ってね。はい解散。 あっ、もしもし〜時空神?今大丈夫?あのさ…………」


 そう言って創造神は出て行ってしまった。彼も主神だ、忙しいのだろう。G石板には309に行けと書いてあった。

 二人で組んでってことは競争というよりバディってことになるのか。


「とりあえず隣いこっか。あ、あと私のことは蒼一郎って呼んでね。」

「蒼一郎さん、僕のことは玩って呼んでください。」

「よろしくね、玩くん。」


 308を出て、すぐ隣の309に入る。そこは真っ白で何もない空間だった。真っ白で影がないので広さが全くわからない。扉が閉まると消えてしまった。閉じ込められたのだろうか。中にいた道着を着た男の人が話しかけてきた。


「君たちが尖兵に選ばれた人間達か。弱そうだな。なんでこんなのを選んだんだか。ま、鍛えがいがあるからいいけれど。」


 G石板には次の予定は闘神ハイスクールと書いてあった。


「闘神ハイスクール?予備校?大学受験?もう無理、絶対したくない。」


 どうやら蒼一郎さんは大学受験にトラウマがあるらしい。会話するときにあまり触れないように気をつけよう。


「ああ、俺が鍛える場を闘神ハイスクールって呼んでる奴がいるみたいだけどな。戦う力をつけてやってほしいって言われたから来た。早速始めるぞ。これから1年ぐらいよろしくな。」

「い、1年?僕、高校入ってるんですけど留年確定じゃないですか。そんなのないですよ。」

「たく、就職先決まってて収入もいいのに高校通う必要ないだろ。」

「いや、友達とか家族とか心配しますし……」

「友達は一人もいなくて家族もお前に無関心なのにか?」

「そ、それは言わないでくださいよ……。」


 蒼一郎さんは「受験イヤダ受験イヤダ」と連呼している。反論に付き合ってくれる気配がない。


「きにするこたぁねえよ。この部屋は時空神に頼んで外界と時間が隔離されている。すなわち時間が関係なく修行ができるってわけだ。」


 なんと!有名格闘漫画のアレと同じじゃないか!ワクワクすっぞ!

 あ、蒼一郎さんも立ち直ってる。


「もう大丈夫だよな、早く訓練を始めるぞ。」


読んでいただきありがとうございます。ブックマーク、評価を何卒お願いします。

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