19
帰宅して準備する。漆黒と蒼天の秘儀の書vol.1を手に取る。ああ、実家に帰ったら続きとってこないとな。技増やしといたほうが出来る支援の幅は広がるだろう。vol.2って何書いたっけ。確か怪盗ものにハマって派手なトリック系、相手を騙すものとかだった気がするな。雪菜に仕事について説明するってことはこの能力も伝えなきゃいけないのか!隠し事してもバレるだろうし、かといって全部話してしまっていいのだろうか。サポートにメールだ。
「人間でガールフレンド、そして妻にする人ができました。神のことを説明するのはどこまでしてしまっていいのですか?」
返答がすぐ帰ってきた。優秀か、サポート神。
「伴侶となる女性は眷属にしてしまうことをお勧めします。絶対なる信頼と忠誠を要しますが、すでに雪菜さんとは大丈夫でしょう。こちらに巻き込んで、こちらの仕事を手伝っていただくのが最良かと思います。サポート神より。」
なんで名前知ってるんだ?!いや、神だから知ろうと思えば簡単にわかるか。巻き込んでしまうか。でもなぁ。
「彼女は戦闘力を要していません。あの世界に共に行くのは危険ではありませんか?」
「その辺りは創造神様に直接掛け合っていただいたほうが良いと思います。」
なるほど、うーん彼女に説明してからだな。無理やり今してしまうのは良くない。話し合ってから決める。
お、もう三時だ。転移しておこう。いつもの格好に着替え、G石板を弄って転移する。
「あ、蒼一郎さん。お待たせしました。」
「いや、待ってないよ。」
「なんか吹っ切れた顔してますね。彼女さんと話したんですか?」
「まあね、ありがとうね。ほんと。」
玩くんのおかげである。そうでなければこのような結果にはならなかっただろう。
「よかったですね、で結果は?」
「婚約?かな。とりあえず移動しながら話そうか。」
「は?」
唖然としながら玩はバギーを出した。
「ああ、金目当てだったのは要介護のお母さんと介護するお姉さんを養うためだったんだって。で仕事辞めてヒステリー起こしちゃったのは結婚しないとって焦っていたみたい。俺が勇気出して聞かなかったから面倒ごとから遠ざけたかったみたい。」
「いい人じゃないですか。というか俺って。」
「ああ、学生時代は俺って使ってたんだけど社会人なってから私を使ってたんだ。親しい人に距離置くのもバカバカしいと思ってね。」
そう、本当にバカバカしい。連携が取れないと死ぬかもしれないこの仕事で距離を置くなんてバカバカしい。
「仕事仲間の僕を親しい人と見てくれてるんですね。あって何日しか経ってないのに。」
「カレンダー上の話でしょう?すでに2年は過ぎてるよ。」
「そうでしたね。彼女さんにこの仕事のことは…。」
「話すよ、今夜ね。」
「じゃ、王都に早く着いて美味しいもの買って帰ってあげましょうか。」
「それいいね。」
バギーは進む。先日ほど障害物はなく迂回せずに進むことができた。王都にかなり近づいてきたので、バギーの現実化を解除した。街道に出て、歩いて進む。前の町とは比べ物にならないほどでかい城壁で街は囲まれている。うーん、でかい。大きさのイメージができない人は高さは奈良の大仏が収まっている東大寺をイメージしてほしい。あれぐらいの大きさで石造りなのだ。迫力がすごい
「さすが王都ってところですね。」
「入るのにも並ばなきゃいけないみたいだね。」
列に並んでしばらく待つ。どうやら商人の荷物検査に時間がかかっていたようだ。非効率的なのであまり時間のかからない冒険者と一般の受付を分けてほしいがそういうわけにもいかない事情があるのだろう。
列の先頭に来て冒険者証を見せて中に入る。
「そういや、冒険者証で思い出したんですけど、僕らほとんど依頼受けてないですよね。そろそろ受けたほうがいいんじゃ?」
「うん、情報収集のためにも少しランクはあげたほうがいいかも。下に見られるからね。邪神関係の討伐に参加させてもらえなかったらそれこそ冒険者の身分が邪魔になるからね。」
冒険者ランクが低くて邪神討伐に参加させてもらえないってことは絶対に避けなければならない。ただ遊びに来てるだけになるからだ。倒して神格をあげなきゃいけないんだ。なんでかわからないけど玩くんとは神力の差がついてしまっているし。
「予定よりちょっと早いんで屋台ぶらつきません?彼女さんへのお土産にも。」
「そうだね、そうしようか。あとピンを打つ場所も探しておこう。」
「なんか面倒なんで適当な屋上でもいいかなって思ってきたんですが。」
確かにいい気がした。今の僕たちは屋根から落ちても無傷で入られる。受身を取らずに両足でついてもだ。だが、派手な動きをしないようにしようと言っている手前それは否定しなきゃいけない。俺は屋根はやめておいたほうがいいと主張した。
そのあとは鳥串屋や豚串屋、甘汁屋、小麦の粥を焼いたものなど色々あった。いろんな種類のものを買い込み、玩くんと別れ、転移して自宅に戻る。現在11時40分、彼女からは携帯に「仕事終わったから家に一回帰って荷物まとめてから行くよ〜」とあった。手伝ったほうがいいかもしれないが、随分前にメールが来ているので今から行っても無駄足、それどころか行き違いになってしまうだろう。
家で彼女を迎える準備をした。普段から清潔には気をつけているので掃除は不要だが、食べ物と飲み物があったほうがいいだろう。お湯を沸かして魔法瓶に詰めておく。彼女はダージリンが好みなのでティーポットに入れておく。大皿に屋台で買ったものを載せていると家のチャイムが鳴る。
「来ちゃった!」
「お、いらっしゃい。来ちゃったって元から来る予定だろ。入って入って。」
「見事にまんま、ね。」
「未練タラタラだったからな。」
自虐的な意味を込めて鼻で笑う。
「ま、そのタラタラな未練のおかげでこうなったんだけどね。」
「それもそうか。荷物とかはまあ、前の部屋空いてるから。」
「わかった。」
彼女も勝手を知っているので、スーツケースに詰められた衣服をクローゼットに詰めていく。その間、僕は少し冷ましたお湯をティーポットに注ぎ、盛り付けた皿を机に持っていく。
「なに、手料理じゃなくて出来合い?」
「ま、その辺も含めて話をする。とりあえず座ってくれ。」
彼女はちょこんとソファーに座る。俺もソファーに座り、紅茶を淹れる。
「どっから話したもんかなー。とりあえずここからかな。」
俺はG石板を机の上に出す。
「なにこれ。石板?みたいだけどタブレット?このカバーめっちゃおしゃれじゃん。どこの雑貨屋にあったの?空飛んでる虎?」
「いや、カバーじゃない。うーん、話すこと考えてたんだけどなぁいざ話すとなると困るな。」
「そんな困ってる君に特別サービスだ!」
G石板が突然電源がつき、一柱の神を映す。創造神だ。
「やっほーそうちゃん。それと、そっちの女の子は雪菜ちゃんか。二人ともおめでとさん!」
「そうくん、なにこの人。」
「なんていうかな…。社長?会長?」
「げえ、まじ?」
まじです。こんな軽いテンションだけどまじなんです。ああ、この人出てきちゃうと能力言われちゃうじゃん…。創造神は俺の能力弄るの大好きだからなぁ。
「まじです雪菜ちゃん。社長が正しいかな?ジーニアス社では会長に当たるけどね。初めまして社長の創造神です。」
「創造神?」
「うん、創造神。神様だよ。」
雪菜は冗談でしょみたいな顔している。海外の会社のイタズラみたいな感覚で見ているのだろう。
「うーん、信じてないみたいだね。そうちゃん、一回こっち来てくれる?抱きしめあってキスしながらだったら二人でもこっちに来られるみたいだから。」
絶対嘘だ、これ手をつなぐだけで大丈夫な奴だ。手をつないで神界の大神殿前に転移する。彼女は驚いてはいるが、きっとアメリカの会社の超絶秘匿技術だと思っている。もうそろそろ信じてくれ。話が進まん。
「創造神様、こんばんわ。」
「ああ、こんばんわ。雪菜ちゃんもこんばんわ。」
「こ、こんばんわ。」
「ねえ、信じてもらえてないみたいだけど、そうくんが能力使っちゃったほうが早いんじゃないの?玩くんも起こして呼ぶ?」
「いえ、彼は明日学校があるので寝かせておきたいです。漆黒と蒼天の秘儀の書よ来い!」
雪菜から失笑を込めた目で見られているが、実際に手元にノートが来るとちょっと驚いている。まあ、手品ほどだが。
「そうくんはこの大神殿に入社?して神になったんだ。魔法と創作を司る下級の神かな。」
あ、俺そんな扱いだったのか。玩くんは玩具かな?
「あの、そうくんは神様になっちゃったんですか?」
「そうだよ。」
「じゃあそうくんはずっと若いままなの?」
う、これはわからん。創造神様ヘルプ!
「そうなるねえ。姿は自分で変えられるようにいずれなるだろうけどね。」
「じゃあ私先におばあちゃんになって死んじゃうのか…。」
ぐっ、これはかなり心にくる!確かにそれは問題だ。ずっといられないのか。創造神様、またまたヘルプ!
「あれ?サポート神に聞いてなかった?雪菜ちゃんがオーケーすればそうちゃんが眷属にできるんだよ。ずっと一緒だね!」
ああ、確かに聞いたな。でも巻き込めってだけで長生きできるとは聞いてない。邪神討伐に巻き込むとも言っていたな。
「んで彼は今邪神討伐の仕事をしている。ちょっと危ないけどこれが成功したら上位の神しか持ってないそのG石板を上げることになってるし、ボーナスも出るからいい仕事なんだよ。」
「危険な仕事なんですか?!」
「まあね。そのために彼には【漆黒と蒼天の秘儀の書】って能力を上げているんだけどね。ププッ!」
創造神、助かっているけど後でくすぐりと尿意の刑だな。
「私も働きたいです!ここで!」
「ま、雪菜ちゃんも才能はなくはない。最初に与えられそうな神力はちょっとしかないけど、まあ体操をこなしたりしていけばそれなりに戦えるようになるよ。」
「本当ですか?よし、転職先ゲット!」
「ああ、でもそうなると雪菜ちゃんも下級神になるから眷属にはなれないよ。」
「同じ存在なんですよね?結婚もセックスもできますか?」
「神同士で結婚してる例も性交している例もたくさんあるから大丈夫だよ。そういうのって大体女の眷属ができたら大体嫉妬に狂ってるけどね。」
怖いなそれは。女性眷属作らないようにしよう。そしてこの情報を玩くんにも教えてあげよう。修羅場で仕事ができないとか勘弁。
「なら何の問題もありませんね、私を神にしてください。」
「ププッいいよ!」
創造神はなぜか吹き出している。俺の能力関係ではなさそうだが。後ろを向いても特に何もない。
「じゃあ能力なんだけどね…。【白銀の魔女っ子、フラッシュシャイン雪菜ちゃん】だよ!ぶあははははは!」
は?
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