1
初投稿になります。
拙いところが多々ありますがどうかお付き合いお願いします。
毎日22時あたり更新します。
僕はおもちゃが好きだ。
小さい頃は朝は早く起こされ、夜8時に寝かされる。そして誕生日プレゼントは図鑑で、クリスマスプレゼントは辞書だ。おもちゃが欲しいと強請っても、全く買ってくれなかった。なのでダンボールなどの廃材を集めて自分で玩具を作っていた。
小学生がおもちゃを与えられないでいると、当然学校で孤立する。いいんだ、小学生でできた友達なんて大人になったら会う機会なんてないんだから。
中学生になると力こそ全ての社会が終わる。中学生特有のアイデンティティを確立できない量産型になることへの恐怖を持つ。お小遣いを与えられたこともあり、漫画を買い漁る。そして見事にオタクになった。学校の友達?つくり方教えてもらってないのでできませんよ。ええ、ゆとりですよ。ゆとりですとも。
中学を卒業する頃にはすでにレッサーオタクから進化しておもちゃオタクになっていた。幼少期におもちゃを買い与えられなかったものによく起こる現象【爆発】が僕にも起きた。あの頃頑張ってダンボールで作ったロボットたちよ、ありがとう!そして母から守りきれなくてすまない。
そして今日から高校生だ!学校で友達できるといいけどな…
駅前に差し掛かった時、おもちゃ屋の店主である丈一郎さんが店の前で掃き掃除をしていたのだが、こっちに気がついたみたいで手を振りながら近づいてきた。
「よう!玩ちゃん。調子はどうだい?」
「最悪だね。銀河伝説スターバイパー観てたから徹夜さ。」
「グラバーンは秀作だからな。しょうがない。あれは何度でも観れる。ウィスキーに合うんだ。試してみな!」
「未成年に酒進めてるんじゃないよ。エンペラーは無事か?」
「ああ、ただの風邪だって。でも年寄りは肺炎になって死ぬ可能性もあるから十分気をつけろってさ。暇で仕方ないみたいだから布団の中でデッキ作ってるよ。」
「カードか、手を出したい気もするけどまだちょっとな。とりあえずおもちゃマイスターまでで止めとくよ。」
このおもちゃ屋は平野家が代々店を営んでいる。様々なおもちゃやゲームの地方大会まで開けるほどの店だ。歴史も実績もある。しかも平野家は代々めちゃくちゃゲームやおもちゃのバトルが強い。噂では将棋や棋の腕前はプロ棋士よりも強いとか。そこで店主に挑む大会「対平野5番勝負」が不定期開催されている。試合内容は挑戦者側から申請できるが今まで平野家に一試合でも勝てた人は両手で収まるほど。2試合以上勝ち抜いた人は片手で数えらるほどだと言っていた。僕は「こま」「花札のこいこい」「不動産独占系ボードゲーム」で勝利を収めており、おもちゃマイスターの称号をもらっている。丈一郎さんは全てを先代に勝ち、キングとなった。ちなみに先代の丈太さんは全ての世界大会で優勝しているらしく、エンペラーと呼ばれているが本当なのかどうかはわからない。
「ま、カードはかなりお金かかるしな。学生が俺らに勝つには厳しいさ。」
「話戻るんすけど、次オススメのアニメってあります?」
ちなみに丈一郎さんはアニメ好きでもある。ほぼ全部のジャンルを抑えているような節がたまに見られるので、俺は全方位ハイパワーオタクと勝手に思っている。
「《プリティフラッシュりんごちゃん》を薦める。魔法少女ものだ」
「うぇー、魔法少女もの?」
「俺は秀作しか勧めない。とりあえず見ろ。見たくないなら俺に聞かないで自分で探せ。」
「ういーす。とりあえず見てみますわ。」
「ちゃんとハンカチ用意するんだぞ。」
一週間後、おもちゃ屋ひらのにて
「プリティフラッシュりんごちゃん見た。あれ、ターゲット子供じゃないだろ。名前詐欺だ。あのアニメの原作って漫画か?見たことないんだが。」
「いや、アニメからだ。今度りんごちゃんに出てくるおじさんのフィギュア出るぞ。」
「あのウィスキー持ってたり葉巻吸ってたりする渋いイケオジだよな。うーん…買いだな。」
「お前の分も予約してあるから。購入特典の葉巻咥え顏ついてるからな。感謝しろよ!」
「まじか!キング、流石ですわ。」
「よいよい。これからは自分の好きなものを追求していくと良い。いつまでも人に頼らずに自らジャンルを開拓できるようにな。」
「承知しましたっ!」
これからはまた特撮三昧だな。今年度から始まったブラッドファイターグレンをもう一度見るかな。
おもちゃ屋ひらのを出てぼーっと歩いていると、横断歩道の向こう側からトラックが70キロほどの速さでやってくる。よく見ると運転手はトラック特有の大きなハンドルに突っ伏してる。
(あー、やっぱり配送業って大変なんだな…。お疲れ様です。)
そしてそのトラックが突っ込んでくる。ハッと意識をもどし、飛んで避けた。
地面に強く体を打ち付けるかと思ったが、コンクリートに人がすっぽり入れそうな黒い穴が空いていて、そこに落ちてしまった。
(こんな都合悪く地面陥没するのかよ…運悪すぎだろ…)
真っ暗闇の奥から光が徐々に目に刺してくる。上を見ても元の空は見えない。体感的にそんなに落ちた感覚はない。きっと不思議空間にでも来たのだろう。
「居眠り運転中の暴走トラックとかシャレにならんわ。んで、ここどこだ?うむ、不思議空間ってヤツか。よし、納得した、帰ろう。」
「ちょっと待てい!!」
さっき差し込んでいた光がいつの間にか大きくなってた。そしていつの間にか同い年ぐらいの金髪碧眼の男が立っていた。
「俺は生茂玩だ。お前は誰だ?」
「あー。『名前を知りたいならまず名乗るのが礼儀ではないのか』って言葉用意してたんだけどね。おれは神だ。」
なに、神様だと?生意気な態度をとったら殺されるぞ。こんな不思議空間、先方の自由自在だろうし。今からでも遅くない、ここはあの技を使うしかないっ!
「ははぁー」
「え、そういうのはだいたいこう、『は?神様とかいるわけないじゃん?頭おかしいんじゃないの?』とか生意気いうところじゃないの?」
「………」
「まあいいや、なんでここに来たと思う?」
「………」
「…発言を許可する。」
「はっ、わからないでござる。」
「そうかそうか、君はトラックに轢かれて死にました。私の大いなる慈悲にて生き返らせてあげます。」
何言ってんだこの人。いや、この神。俺はちゃんと避けたぞ。ドジでのろまで鈍感なラノベ主人公とは違うのだよ。
「お言葉ですが、私はトラックを危機一髪で回避したと記憶しております。神様のおっしゃることを否定したいというわけではないのですが、現代のトラックの多くにはドライブレコーダーが仕組まれております。映像を確認していただけませんでしょうか。」
「…………ちっ、ばれてたか。」
なにやら舌打ちが聞こえた気がするが。性格悪いのか?いや、俺の返答が性格悪い…?そんなことない。俺は自分の正当性を示しただけだ。
「そう、君たちはトラックでは死んでない。だが、とっさに飛びのけたときに地面に体を打ち付けて死んでしまったんだよ。」
俺たちを無理やり死んだことにしようとしているのがバレバレな言い方じゃないか。なんか話が見えてきたぞ。なんだかムカムカしてきたぞ。
「全くご冗談をおっしゃられるのがお上手ですな。まさか神様ともあろうものが中途半端な嘘をおっしゃられるとは。」
「…………いいのか?ここはおれの空間だ。お前たちを始末しようと思えばいくらでもできるんだぞ。」
「なに、そしたら今すぐにでも殺せばよろしいではないでしょうか。わざわざ今私を生かしているということは…そうですね、あなたの手駒としての勧誘とかですかね。」
「……正解だよ。なんで当てちゃうかな。」
神様は項垂れて弱った声で答えた。状況証拠も少なく、割と賭けだったので当たって一安心。
「話の中身に入ろう。僕は君をここに無理やり呼び寄せた。だが、それには理由がある。」
「理由があっても人って殺していいんですか?」
「死んでないじゃないか。」
軽い冗談が飛ばせるぐらいの柔らかな空気になってきた。神様相手の会話でそんなことしていいのかってちょっと後悔。
「あれを起点に君に恩を売って僕に協力して仕事に従事してもらおうと思ったんだけどうまくいかなかったね。」
「正直に言いましたね。まあ別に恩を売らなくても、それなりに報酬があれば協力しますよ。」
「本当かい!そりゃよかった!」
「報酬次第です。」
「いいんだ。我々の部下には必ず報酬が与えられるからね。神様なめるなよ!」
テンション高いな。なかなかやってくれる人が少ないのかな?早く仕事内容と報酬を教えてもらいたいものだ。神様の報酬ってなんだ?やっぱお金じゃなくて神器とか?神話の木の実とか金塊とかなんかな。
「仕事内容と報酬だね。仕事は現世に降りた邪神、または邪神の眷属の討滅だ。神は現世に干渉できない。だけど邪神は現世に過剰干渉し我が物にしようとしている。それでは世界が歪んでしまう。だから現世からスカウトした人間に倒してもらおうって算段さ。」
全くもう!か弱い人の子に何させようとしているんだこいつは!虫だって満足に殺せないんだぞ!ゴキちゃんとか速すぎて逃げちゃうし。
「知ってるでしょう神様、現代日本の一般人は無力最弱生物ですよ。ペットショップの犬にでも負ける自信がある、そんな俺にそんなことできるわけないでしょう?」
「今のままでは全く無理だよ。そこで報酬の話だよ。」
うん?報酬前払いか。確かに命かけるのに報酬が後払いだったらやだよな。準備とかあるし。死んで一切報酬なしってのもやだな。
前払い報酬は能力らしい。これは選べるものではなく、魂を神の力で強化したものだから一応望んでいる力は手に入ると言っていた。任務外で使用していいのかと聞くと、世界を壊すような真似さえしなければ日常生活でもちょいちょい使っていいって話なのでよかった。こうなると破壊攻撃特化より応用の効くやつのほうが得だな。
報酬の後払いはお金が入るらしい。税金は向こうで払ってくれたあとで直接手渡しで月100万〜。顎が外れそうになった。お母さん、年収1000万越え確定したよ。今度温泉連れてったげる。しかも「〜」ってなんだよ。まだ上がるのかよ。オラワクワクすっぞ。扶養手当とかどうなるかは今は考えないことにする。
「んじゃ、能力あげますよ。ほいっと。」
授かった能力は
………玩具野郎だった。
読んでいただきありがとうございます。ブックマーク、評価を何卒お願いします。
誤字脱字等ありましたら遠慮なく指摘してください。
他の作品も並行して更新します。よければ読んでください。
ツイッターやってます。もしよければフォローしてください。
@kuthimata