63 魔王との話し合い
魔王から下らない神様事情を聞かされつつ、俺達はこれからどうするべきか相談する。
相談と言ってもこの世界が崩壊ギリギリの所で、神々が俺に丸投げした現状を、どうすればいいかも判らないんだけどな。
「まずは、はっきり言って何処から手を付ければ良いのか、サッパリな状況をどうにかしないといけないよな。」
俺がこの世界に来るずっと前から、死にそうな程の重労働を強いられていた魔王様なら、きっといい提案を出してくれるハズだ。
だよね? 魔王様!
「さて……私も『何時もの調子でお願いね~♪』と指示されてこの世界に来たからな……あの駄女神めっ~!」
魔王もあの神々の被害者か……どれ位この世界に居るのかは知らないが、もしかして半年位前からの俺より不幸?
「いや、お前はこの世界の神として柱となってるから逃げようも無いが、私達は違う輪廻の環から、一時派遣のような立場で来てるからな。」
もしこの世界が崩壊しても、魂は元の輪廻の環に戻るから転生可能だが、俺は崩壊と共に消滅って………。
なんちゅう事して暮れてんねん!
「何度死んでも転生して駄女神様に使われる、魔王様や我々も大概ですけどね。」
バーディカさんのツッコミが効いたらしい。
魔王様にクリティカルヒット!
言葉の刃がグサッと刺さるね!
「俺としては同じ神なら、秀一の方が断然マシだとは思ってるんだがな。」
「そうね! 秀クンとなら楽しそう!」
理世と里美姉がフォローしてくれる。
優しい言葉は身に染みるね~。
「だから俺達としては、秀一に何としてもこの世界を安定して貰って、最終的には俺達の魂の移管をして欲しいと思ってる。」
「一蓮托生なんて素敵じゃない?」
二人ともそんな事を思ってくれてたのか!
「「折角巡り合ったチャンス! 遊ばなきゃ損よ!」」
台無しだよっ!
「フフフッ、遊ばなきゃ損か……確かに。」
魔王様納得しないで!
「確かに魔王様共々、何万年もの間、幾度と無く転生しては女神様の指示で茶番劇を演じましたが、舞台に創造神様が上がるのは初めてですね。」
魔王軍団は駄女神の指示で、自分の守護する世界や、他の神の世界に魔王軍団の役で今回のこの世界みたいに貸し出されたりしたのだそうだ。
「何千、何万回と演じて来たが、滅びまでが定番なのも些か飽きたのは事実だな。」
その話に乗るのも悪くないと魔王達も思い始めたようだ。
「そういう訳で、ここは腹の探り合いも陰謀も無しだ。 お前達の知ってる事を話せ!」
「みんなで協力してここを(私達に)住み良い世界にしましょう!」
里美姉の本音が駄々モレだよ………。
「知ってる事と言ってもそんなには無いな。 とりあえず今居るこの地域の問題を解決すれば大分楽になると言う事位か。」
「逆にここの問題が悪化すれば一気にじり貧ですね。」
ここを解決すれば世界の十分の一位は安定する?
おいおい、そりゃ大変な事だろう。
「ここに世界の魔素の大部分が集中していて魔物の発生や凶暴化が酷い。」
なにかここに魔素が集中する原因があるのか?
「原因は、前の神々の争いがここで起こったせいだ。」
「神々の争いって言えば壮大で聞こえもいいですけど、『ボクもうこんなの要らない!』って癇癪おこして持ってた魔素をブチ撒けたのが真実ですけどね。」
ああっ、この世界を創った神々ってそう言えば人間換算で3~4歳の幼児だったね。
ここで獣人達を巡るケモノスキー達の争いがあったそうだ。
「ペットを可愛がる派と虐める派と眺める派との熾烈な争いでした。」
仲裁に入った魔王に向かって癇癪を起こした一人が、世界を管理する水晶に残った魔素の殆んどを投げつけたらしい。
何をやってるんだ……。
おまけに獣人はペット枠かよ!
「さすがにそんな大量の魔素をぶつけられたら洒落になりませんから、防御しましたが……不幸な? 事にシルヴィエールちゃんのペットのドラゴンに当たりまして……。」
シルヴィエールって、確か俺を神様にしてこの世界を押し付けたクソ神の娘だったよな?
「『わちしのジョセフィーヌが大っきくなったぁ~!』とそれはもう大喜びで。」
暗黒竜ってメスだったのか!
「いえ、立派なオスですよ。」
まさかの男の娘⁉
良いのか? 暗黒竜なのに!
「大きくなり、自我に目覚めた暗黒竜がキレて大暴れ……シルヴィエールは大ハシャギで混沌としてましたな~……。」
ああっ、遠い目になってるよ。
でも『暗黒神の遊戯』と呼ばれた時代が、実はまさかのネーミング問題が引き金!
そりゃこの世界の人間もやってられんわ!
「それでその暗黒竜……ジョセか、今は何処に?」
「この地の奥で深く深く……引き籠ってます。」
まさかのヒッキーかよ!
「延々と呪詛を吐き出していまして、それが魔素と合わさって大変な事になってますな。」
引き込もって何やってくれてんの?
「中々やりがいがあるであろう? 新神様よ。」
そんなのを相手にしてたんだと、ウンザリしたような顔をしながら同意を求める魔王。
「判った! 大変だね! それじゃあこの場は慣れた魔王様にお願いするね!」
俺がいい笑顔で丸投げしようとしたが、逃がすものかと腕を掴む。
「この地次第ですぐにこの世界は崩壊するんだが……?」
くっ、卑怯な………。
「じゃあこの地がどうにかなれば、この世界の危機は殆んど回避出来るんだね!」
里美姉がそう聞いてくる。
何か名案でもあるのか?
「その通りだが暗黒竜が一番のネックでな。」
「殺す事も難しいですし、殺すとシルヴィエールちゃん大泣きですよ。」
そうすると親バカな神々が大激怒で面倒らしい。
本当になんて迷惑な存在なんだよ……。
「実際、この世界の十分の一の問題が解決すると言う事は世界の十分の一の力を持ってると言う事だ。 比べるならお前はミドリムシ並だぞ。」
どうしてみんな俺をミドリムシに例えるかな?
偉いんだぞ! ミドリムシ!
「まぁ秀クンがミドリムシなのは置いといて、暗黒竜って引き籠ってるんでしょ? そのまま引き籠ったままで良いんじゃない?」
俺の存在をミドリムシのまま置いとかないで!
……暗黒竜もそのまま放置かよ?
「力が強すぎてどうにもならないんだから、他から力を奪う方向に持ってくんだよ。」
「さすがは大賢者……何か名案があるらしいな。」
名案って程じゃなくて、暗黒竜をラスボスにしてダンジョンを創って封印する形にすれば良いのでは? と言う事らしい。
ダンジョンにすれば中で魔素が循環するから、暗黒竜が出す魔力を受けた魔物を間引いて暗黒竜自体の魔素を減らせるし、ダンジョンアイテムなんかを創れば、それでも魔素は減る。
「この森に放置状態の魔物を狩るよりは、一度ダンジョンに封印して、ダンジョン内で循環させた方が楽だと思うよ。」
名案じゃ無く迷(宮)案だった!
「しかし暗黒竜が素直に封印されますかね? それとダンジョン運営出来ますか?」
「どうせ引き籠ってるんだからダンジョンでも良くない? そこは秀クンの力で! あくまでもラスボスであってダンマスは違う人間でも良くない?」
俺の力って……ミドリムシにどうしろと!
「拗ねないの! 元々神様……創造神って次元の違う存在なんだよ? ミドリムシでも言わなければ判らないと思うの。」
ミドリムシ確定⁉
創造神って存在が大事なのであって、力の差は関係無いのか。
「ハッタリで十分よ、それに逆らうなら『飼い主に迎えに来て貰うわよ。』って囁いてあげれば良いんじゃないかな。」
お、鬼が居る!
みんなが引きつった顔で里美姉を見る……里美姉はドヤ顔である。
里美姉恐ろしい子!
「ダンジョンは今現在の秀クンじゃ魔物を閉じ込める程の力は無いけど、暗黒竜の魔力に惹かれるからそうそう出て来ないでしょ?」
成る程、魔物達にとって居心地のいい場所なら出て来る事も少ないと言う事か。
「それでダンジョンにすれば、ダンマスがダンジョンアイテムを創るから、それを餌に人間達に魔物を狩って貰うんだよ。 私らが最初はある程度間引いても、ずっと続ける訳にはいかないから、人間達にも力を貸して貰うのがベストだと思うよ。」
「確かに今の現状を上手く利用するならその案はアリだな。」
「では、ダンジョンマスターはどうしますか?」
俺達は一斉に魔王を見た。
「私は世界全体の管理があるからダメだぞ。」
魔物や人間達の監視をして世界の均衡を保つのが本来の役目だからダンマスは出来ないらしい。
それじゃあと、バーディカを見る。
「私は魔王様のお守……げふんげふん……補佐役ですので無理です。」
お守りって言ったな……補佐なら兼務で片手間にダンマスしても良いと思うんだが。
「ダンジョンマスターになったら、ダンジョンに縛られて身動きが出来なくなりますから、兼務は無理ですよ。」
じゃあ誰にするんだよ……そう言えばアイツはどうだろう。
「ほら、魔王の部下に自意識過剰な豚クンが居ただろう? 口先ばっかりで威嚇して何も出来ないヤツ!」
ゴブリン集めて何かしようとしていた豚クンなら上昇志向だからピッタリじゃね? 単純そうだし!
「ああっ、アレなら残念ながら既に輪廻の環に戻ってますね。」
えっ、俺は手加減して殺してないぞ?
「我々の指示に従えない様なお馬鹿は魔王軍に必要ありませんから。 何かまた別の問題を起こす前に帰って貰いました。」
ちなみにあのバカも派遣ですのでこちらの世界の輪廻の環じゃ無いと言う事だ。
「じゃあ結局どうするよ? この中じゃ誰も出来ないぞ。」
「ピッタリの人材が居るじゃない!」
里美姉がハッと気付いたように声をあげて、俺の右手を指差す。
「ね、ピッタリでしょ!」
コイツが居たか……。
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『ライトノベラーが異世界にライトトラベラー⁉』
一生懸命書いてますので、良かったら読んで見て下さい!
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