61 色々と混乱中
大変ご無沙汰して申し訳ありませんでした。
秀一達が日本に戻って居る頃のエンデフィール。
秀一の神託により世界は混乱していた。
獣人達の解放は獣人を労働力としていた人達にとっては死活問題であり、解放を渋る人達と解放を迫る人達で衝突が起こっていた。
獣人達も神が人間より自分達を選んだと思い、人間より上だと思いあがる獣人達が、今までのお返しとばかりに各地で人間達を襲う事案も頻発していた。
各国の首脳達も突然の神託でどう対処すればいいのか意見は別れ、方向性が各国でバラバラな為に国同士の繋がりも脆くなっていた。
結局、最終的には神に指名されたオーラマディに人々は期待をよせ、フーリス王国に各国要人が集まり対策を話し合う事となった。
「うううっ~、なんで私がこんな目に… 」
フーリス王国近くまで転移で送って貰ったのであっという間に帰り着いたものの、その後が大変だった。
まずは街の防壁の所で衛兵に止められて、そのまま城まで拉致られて王や側近、城に居た貴族達を一堂に集めての事情聴取。
詳しく説明をと詰め寄られたが、はっきり言って偶然知り合った人達が本物の神様の使徒で、その関係で神様に名前を覚えられて勝手に人族の代表みたいになっただけだ。
自分の方が詳しく説明をお願いします! と声を大にして主張したい。
世界が崩壊の危機にあるという事だけは伝えたが、具体的にどうすれば良いのかまでは聞いていない。
使徒がこの国を訪れるという事は聞いているが、来訪の時期も目的も何も聞いていないので皆を困惑させるのみで余り役に立つ情報ではない。
まずは教会に戻り教皇を始め枢機卿達に報告してから判断を仰がねば一巫女の私では役に立たないと力説する。
「私達、創神教会は始まりの神を信仰する集まりであり、新たな神を信仰するにしても、どうするのかさえ分からないんです。 私はただのメッセンジャーのような者だと思って下さい!」
そう言いきった勢いで神様の意向に沿うであろう事を意見する。
「その上で、新しい神は秩序ある世界を求めていますので、いくら獣人を神様が守護すると言っても、暴れ回ってる獣人まで放置や見逃しは必要無いと思います。」
不当な差別や虐待は論外だが、普通に生活している限りは問題はないはずで、暴れ回ってる奴等こそ神様の御意思を無視する行いであると言い切る。
そして一巫女の判断する事では無いと言いおいて。
「まずは国の威信をかけて暴れ回ってる者達を鎮圧し、教会と共に今回の神託の公式見解を発布して、民心を鎮めるのが先決だと思います。」
後の事はそれから考えても遅くない、と意見する。
(大体、行き当たりばったりな感じだし、きっと暫くは放置されると思うのよ。)
オーラマディも流石にキレ始めていた。
(言いっ放しで後は任せたなんて無責任よ! 神様ならキチンと対応してからにして欲しいわ。)
大雑把な神託しか言ってない上に、オーラマディに丸投げなので、細かい事は気にしてないと思うことにした。
(後で違うと言っても知らないわ。 仮に全く逆の事になっても神様が言ってるとでも言ってやればいいわ。)
半ば投げ遣りになっている。
なんだかんだと言いくるめるようにして、やっと解放されたオーラマディだったが、同じような事が教会でも行われた。
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そんな事になっているなんて全く思ってない秀一達は獣人の住む湖の所に転移して
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…………………………………。
「なんじゃこりゃ!」
湖周辺に溢れかえる、獣人、獣人、獣人、見渡す限りの獣人。
街に居た獣人や森の中に潜む獣人達の人数より遥かに多い獣人達。
「おいおいおいおい、数が違わないか? 何処から湧いたんだ!」
獣人達が自然に増殖はするハズがない。
「神託を聞いて周辺諸国からも続々と集まっております。」
「私達だけではもう収拾は不可能でございます。」
各種族の獣人の長達が口々に状況を説明する。
やっちゃった感、満載である。
住む所も食べる物も不足しているらしい。
「水の聖霊の用意する魚とかでも追い付かないらしいよ。」
街の様子を水の聖霊に聞きに行っていた里美姉がそう言いながら戻って来た。
その後ろの方から理世の姿も見える。
「集まった獣人達が暴れる事案も頻発してるみたいだ。」
ああっ、帰って来たばかりなのにまた馬車馬のように働かないといけないのか?
「食べ物なんかは少しは援助した方が良いけど、他の事はもう獣人達にやらせなきゃ!」
「そうだな、何時までも俺達や秀一に頼りっぱなしってのも駄目だ!」
あくまでも援助は最初までで、自立を促さないと何時までも俺達が身動き取れない。
「おんぶに抱っこじゃ意味が無いよ!」
確かにその通りなので、異空間に新しい空間を創り、その中に小麦など思い浮かぶ限りの食材を創り出す。
そして、獣人達の取り纏めをお願いしている水の聖霊に出し入れの許可を出す。
「この鍵で水の聖霊さんが自由に出し入れ出来る食材を入れています。 当面は問題無い量は確保してるつもりです。」
あとは、獣人の長達を呼び集めて、各種族ごとの取り纏めと代表者の選出。
家の建設から食材確保のための狩りまでを自分達で行うように指示する。
「あくまでもあなた達が暮らすための援助です。 全てを俺達がやる訳には行けません。」
自分達の事は自分達でという意識を持ってもらうようにする。
獣人の長達は困惑していたが、やって貰わないと先に進めない。
強引ではあるが押し通す事にした。
「私達は一先ず何処かに行ってた方が良くないかな? ここに居ると頼られるだけだよ。」
「そうだな、秀一が気になるなら、ニアとミーシャ位なら最悪預かっても良いと思うが。」
ニアとミーシャの親達は流石に街造りをほったらかしにして動き回る訳にはいかないだろう。
ニアも一緒に旅をする気満々だしな。
親が居るとはいえ、ゴタゴタした中を幼いミーシャ1人またお留守番させるのも気が咎める。
「ミーシャちゃんの両親と相談して決めなくちゃね!」
里美姉の言葉に従ってニアとミーシャの両親と話をする。
結果、ここに居るよりも俺達と一緒に居る方が安心するらしい。
「もう少し落ち着いてからの方が二人の為にも、俺達にもいいだろう。」
ロールドが代表して俺達に頼んでくる。
「二人一緒なのは最初から予定してた事だし問題無いね! それじゃ秀クンこれからどうしようか?」
さてさて、里美姉にそう言われても、何となく獣人達の事が優先位に思って帰って来たから急には思い浮かばない。
「オーラマディに丸投げした人間の国関係をどうにかするか?」
ノープランでの丸投げだったし………。
「あっ~~! オマイらここに居たにゃ~!」
マエラが俺達を見つけて寄ってくる。
「この大事な時にドコ行ってたにゃ! 魔王様が呼んでるにゃ! 今すぐ行くにゃ!」
魔王が呼んでるねぇ~……嫌な予感しかしないな。
「魔王が俺の知ってるヤツなら行った方がいいかもな。」
理世がそう言ってくる。
確か因縁のある魔王だったっけ?
「俺が異世界で倒した魔王ではあるな。」
行きたくねー!
何で理世が敵対してた魔王がこの世界に居るんだよ!
しかも仕事を押し付けてたんだろ?
何を言われるか分かったもんじゃない。
「次の予定が無いんなら行ってみたら? 後回しにするほどキツくなると思うわよ。」
………あああああっ、里美姉の言うとおりではあるんだよ。
「仕方ない………行くか。 マエラどうやって魔王の所に行くんだ? 場所は?」
「私が知るわけないにゃ! 難しい事は全て他のヤツらの仕事にゃ!」
やっぱり当てにはならんわ………。
『全く、ちゃんと説明したでしょう………』
何処からか声が聞こえてきた。
「参謀にゃ! イケ好かない参謀の声にゃ!」
本人に向かってイケ好かないって言える部下って………。
俺達の目の前に参謀と呼ばれる男が現れる。
見た目は人間のようで、獣人とかには見えない。
肌の色が少し青く、耳が尖っているので、言うなれば魔族って感じか。
魔王の眷族なんだから魔族で間違い無いんだろうけどさ。
「お初にお目にかかります。 私、魔王様の側近を務めさせて頂いてますバーディカと申します。」
身長は190センチ位で長身だ。
黒髪のセミロングで金色の瞳の中々のイケメンだ。
「何かお前……性格が変わってないか?」
顔見知りである理世が疑問を唱える。
「はっはっは、あの時と現在ではこなす役割が違います。 演じる役によって替わるのは当たり前ではありませんか。」
「どうどうと演技って言うなよ………。」
理世が呆れている。
「茶番と言う意味では間違い無いでしょう。」
ああっ、この人茶番って言い切っちゃったよ…………。
「なんだか詳しく聞きたい話だな。」
「この世界の事等を詳しく理解して貰わねばなりませんからね。」
何やら裏事情なんかも知ってるみたいだ。
魔王に会うのが楽しみになってきたな。
それでは魔王の元に連れていって貰うとするか!
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『ライトノベラーが異世界にライトトラベラー⁉』
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