53 ニアちゃんぱにっくっ2
神託から数ヵ月。
やはり獣人達の住む環境作りで俺達は馬車馬のように働いた。
毎回このパターンはどうなんだ?
そう思いつつも放置する事は出来ないのでせっせと働く。
皮肉な事に人間達によって奴隷として働いていた獣人達は色々な知識を持っていて、農作業や建築など率先して手伝ってくれて、仲間の指導もしてくれたので、途中からは俺達がそちらに手を取られる事が少なくなったのは幸いだった。
ただやはり人が多くなり、多種多様な獣人達が集まっているとなるとちょっとした揉め事等も増えてくる。
ある程度種族ごとの区分けは出来ているので、新しく増えた種族も族長を選んでもらい、族長どうし集まって街の運営等を話す、議会制みたいな仕組みも考えた。
勿論街の取りまとめのトップは水の聖霊に頼んでいる。
獣人達というか生き物にとって水は命に直結している大事なモノだし、聖霊が管理している魚は重要な食料だ。
そう言った意味でも水の聖霊に逆らえる訳はなく、また俺の力を得る仕組みを一部共有しているのでかなり力を持っている。
防衛面でも獣人達は頼らないといけないので水の聖霊はトップに相応しい。
インフラと共に自警団など治安を守る者達。
様々なモノを作る職人や商人などの職種も増えて、どうにか獣人達だけでの生活の基礎部分が整ったので、あとは獣人達に任せる事にした。
やることのメドがたったので俺達は久々に日本に帰る事にした。
今回は最初からニアも付いて来る事になっている。
両親と一緒の方が良いと思っていたのだが、俺達が全然相手をしてやれなかったので、俺達に付いて行くと強硬に主張した。
ミーシャは寂しがってはいたが、前回程の事は無かったので良かった。
レクは獣人達の病気や怪我を治す役目の他に森の聖霊の種を体内に宿しているので動く訳にはいかない。
まぁ元々時空転移出来ないしな。
そう言った事でレクもお留守番だ。
俺達は扉を開いて日本へと戻る。
各自、入って来た場所に行くため俺とニアだけが自宅の部屋に戻る。
「ただいまデスヨ!」
元気一杯挨拶をしながら俺の部屋を飛び出すニア。
ただいまと言ってもこっちの時間は経ってないから両親は実感が湧かないと思うがな。
俺もニアに続いて部屋から出てリビングの方へと向かう。
ニアは俺の母親に抱き付いて色々とあった出来事を話しているようだ。
「お帰りなさいかしら? あなた達さっき部屋に行ったばかりだから良く判らないケド。」
「ただいま、一応半年位かな?」
やはりこちらとあちらの時間の違いは、知ってる人間からすると違和感を感じるか……さっき会った人間がいきなり半年振りって言い出したら可笑しいよな。
それでも流石に俺の親だ。
そういうもんだとアッサリ納得してニアの話を聞いている。
俺はニアの世話を母親に任せて部屋に戻る。
すっかり忘れていたが、勉強をしとかないと記憶が怪しい。
前回それに懲りて異空間の部屋に教科書や参考書を持って行ったのだが、忙しくて見る暇が無かったのだ。
その日の夜はニアの両親との再会のお祝いと言って、テーブル一杯に動物キャラのオカズ。
「秀一のお子様ランチに対抗してみたわ!」
などと言ってニアを大喜びさせていた。
ニアから色々な話を聞く内に両親も向こうに行きたくなっているみたいだ。
「秀一は向こうで一番偉いんでしょ? 早く力を持って私達も連れて行きなさいよ」
「そうだぞ秀一! 異世界旅行なんて夢じゃないか! お前達だけなんてズルいぞ!」
二人とも気軽に言ってくれるぜ。
まぁぶっちゃけると既に二人位なら問題なく転移させられるけどな。
連れてくとそれはそれで面倒な事になりそうなのでスルーする。
完全に向こうが落ち着いたら考えてもいいな。
獣人達の信仰心だけで、既に数百年分位はエンデフィールの崩壊期限は延びている。
これはマニュが報告してきたので間違いない。
『またまた最悪なお知らせです。獣人達だけではありますが、【腐っても神】の称号が得られましたので差し迫っての崩壊は無くなりました。数百年と言った所です。』
腐ってないから! 守・護・神!
(俺にとっては朗報じゃないか。でも獣人達だけで数百年にもなるのか?)
『神々にとってはタイムリミット寸前の右往左往するあなた様が見れなくてご機嫌が悪いんですよ。』
(そんなん知るか!)
『数百年と言っても、地球で考えても数十億年ですよ。比べれば刹那的な時間です。』
確かにそれを言われると短いかもしれんが人間感覚なら長いぞ!
既に一般寿命を大きく上回ってる訳だしな。
余命一年から考えると大違いだ!
脱! 底辺神だな!
『他の神々に比べて底辺なのは変わりませんから。』
(人の心を読むんじゃねぇ!)
『まだまだ世界の安定とは程遠いですからな。些細な切っ掛けですぐに逆戻りです。魔物や魔素の問題。聖霊や精霊、妖精などの自然を司り安定させる存在の事など人類より遥かに大きいモノ達の事もありますからな。』
全ての命を持つ万物の事を考えると人類なんて少数だな。
そう言ったモノを安定させて初めて世界を司る神って事か。
先はまだまだ長いって事かな。
そんな事を思い出しながら食事をとった。
翌日俺が学校へ行くと、相変わらずの『いきものががり』の仕事が妙に懐かしく感じたのは……気のせいだ! やっぱりキツい。
里美姉と理世もやって来て挨拶をするがここでも向こうとこっちでの時間経過の弊害が出ていた。
「今居るって事は秀一は帰って来たんだな。」
「昨日別れて、私達はまだ行ってないからね!」
そうか俺が数日前に先行して向こうに行ったから、向こうから一緒に帰って来た理世達は数日後に戻った事になるのか。
ややこしいな。
「まぁ、秀クンや私達が同時に二人存在する訳じゃないから慣れるしかないよ。」
「そう言うもんだと割り切るしかないな。」
取りあえず向こうでの出来事は今知ると、行動が変わっておかしくなるかもしれないと言う事で話さないように言われた。
ややこしいが、理世達にとっては未来の出来事で、俺にとっては過去の出来事になるから、歴史が変わりやすいそうだ。
数日後に帰還した理世達なら時間を共有しているので大丈夫らしいがな。
俺は念のためにニアが昨日親に向こうの出来事を話していた事を告げる。
「お前の両親は聞いても向こうに何の影響も無いんだから問題はないだろう。」
「私達はコレから向こうに行くからダメなんだよ!」
確かに親は向こうに関係ないな。
俺が朝のいきものががりと言う名のご奉仕をしたあと教室に行くと……。
「秀一お兄ちゃん! おはようデスヨ!」
制服を着たニアがいた。
何でニアが教室に居るのかと尋ねると、校門の前をウロウロしていたので連れて来たと、前回俺とニアを見ていた、いきものががりの仲間が胸を張って言い切った。
おーい、連れて来たって部外者を教室に入れてどうするんだ?
などと頭を抱えていたが、いきものががり等と言うある意味フリーダムなモノ作る事を容認する教師達だ。
「別にいいんじゃね?」
その一言でニアが教室に居る事を許可される。
あまつさえ、他の先生方にも話を通しておくからと軽いノリで言ってくる。
ニアは俺の机に椅子だけを用意されて座っている。
それでいいのか学校教育!
授業が始まると教師の質問に……。
「……ではこの問題を誰に解いて貰おうか……。」
「あい!」
「元気な声だ! それではニアちゃん!」
おーい!
ニアは部外者!
しかも四歳の幼児だぞ!
「○○○デスヨ!」
「はい正解! 良く勉強しているみたいだね。偉いぞ!」
あれぇ?
結構難しい問題だぞ?
流石にみんなも答えられるとは思っていなかったようでザワついている。
「静かに! ニアちゃんでも答えられるんだから君達も判らないとは言わせないよ。」
あれぇ?
何気に俺達ピンチですか⁉
そのあと、別の授業もニアが次々に答えるものだから皆も焦っていた。
何でニアが判るんだ?
そう思っているとマニュが教えてくれた。
『ニア様はあなた様が居ない間も休まずに毎朝の勉強を続けておられましたからな。部屋に置いてあった教科書や参考書を見て覚えたのでしょう。』
確かに毎朝勉強会はしていたが一人で続けていたのか。
でも、教科書とか置いてあったとしても独学で理解出来る内容じゃ無いと思うが……参考書があったにしても。
『そこはあなた様の用意した携帯端末の検索機能で調べられておりました。』
は? 検索機能? なんだそれ⁉
『あなた様が創られた時に何をイメージされたかは存じ上げませんが、水晶の記録から検索出来る機能が付いておりました。記録の中にはあなた様の知識も含まれておりますので。』
確かに創造する能力は水晶の力と俺の記憶のイメージで創るから知識が水晶と同期してても納得出来るが検索機能?
スマホをイメージしたせいか?
判らない事はすぐにインターネット検索ってやってたから、そのイメージでそうなったのか?
『創られた本人よりも使いこなせるとは流石ですな。あなた様も見習った方がよろしいのでは⁉』
(うるせー!)
『あなた様は殆ど水晶の記録を見ませんからな。本当なら同期しているので私が答えなくても判るハズの事も判っておられません。』
確かに意識を水晶に集中させてからじゃないと俺は水晶の記録を知る事が出来ない。
面倒なので手っ取り早くマニュに質問しているのが現状だ。
『普通はあなた様の記憶として自由に出し入れ出来ないとおかしいのですがね。』
ずっと水晶の記録を意識していたら次第に俺の記憶として自由に使えるってことかな?
少し意識しておこう。
『あなた様の記憶と水晶の記録と別けて考えてらっしゃるからダメなのでは?』
そうは言っても一度そう言うもんだと思い込んでいるので、今更同じだと考えるのは難しい。
今度ゆっくりと何か方法を考えよう。
ニアが何故俺達の授業の内容が判るのか理解出来たが、
俺達ピンチ! なのは変わらなかった。
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