50 踊るキノコvs
お陰さまで体調も殆ど回復しました。
更新再開します。
ガリ国が獣人狩りに約一万の兵を出兵させて10日程が経った。
俺達は目玉クンを通して様子を見ていたが、ようやく俺達が胞子をばら蒔いて、踊るキノコを大発生させた地帯へと到着したようだ。
やはり人数が多いので移動が俺達の予想より遅いようだ。
「お前達が不甲斐ないせいで俺達まで駆り出されたではないか!せめて獣人が居る所位までは道案内をしろ!」
そう言って近衛部隊のお偉いさん……恐らく貴族だろう。
補給部隊に無茶な命令を下しているようだ。
命令された補給部隊は先頭に立ち踊るキノコと対峙している。
一番先頭にいる踊るキノコ達は80年代を彷彿とさせるディスコダンス……ツイストとかそんな感じの躍りを踊っている。
そんな中で補給部隊から数名前に出て来た。
中腰で『パッチンパッチン』と指を鳴らしながらキノコの踊るリズムに合わせるように出てくる。
踊るキノコは少し踊るのを止めて出てきた兵士を見つめて威嚇するような仕草をする。(キノコに目は無い)
一定の距離を置いて対峙するキノコと兵士。
兵士達が再び指を鳴らすのを合図に互いに踊り出す。
いきなり始まったダンスバトルに俺達の目は点になっている。
何故にダンスバトル?
互いに踊っていると次第にキノコの方の躍りが緩やかになる。
段々一匹、二匹と踊るのを止めて地面に足を入れて沈黙する踊るキノコ。
「よし!敗けを認めたぞ!今のうちに倒せ!」
動きを止めたキノコは抵抗すること無く狩られて行く。
同じようにサンバにはサンバをブレイクダンスにはブレイクダンスと言う風にダンスバトルをする補給部隊と踊るキノコ。
補給部隊でバトルに敗けて毒胞子で動きを止められた兵士は仲間がすかさず後方に下げて、沈黙したキノコはどんどん狩られている。
「………踊るキノコってこうやって戦うんだ……俺達の戦い方って邪道だったの?」
思わず力業で倒していた俺達が間違っていたのだろうか?と思える戦いぶりだ。
「いやいや、魔物との戦い方にイチイチ作法なんて無いから!」
「でも、言っちゃなんだが正々堂々って感じがするな!」
「里美姉も理世も言いたい事は判るけどこれって正直効率悪いから!」
一見踊っているだけで戦いが決まるので簡単そうだが、踊るにも体力と時間がかかる。
俺達なら数分もかからない数のキノコ相手に10分以上かけて踊って倒すのは効率が悪すぎる。
なにせ踊るキノコは俺達がちょっと増やし過ぎたかな?と思える位に繁殖していた。
ざっと見る限り2万は越えているだろう。
ガリ国側の兵士の倍以上の数にチマチマとダンスバトルするのはどうだろう?と思えてしまう。
俺達にとっては敵に当たるガリ国が、時間と体力をロスする分には問題無いどころか大歓迎するべき所だが、戦い方が余りに残念過ぎるので思わずツッコミたくなる。
近衛部隊を率いるお偉いさんも同じようで、違う部隊に替わるように命令を出す。
「ええい!お前らの戦い方ではラチがあかんわ!特戦部隊見本を見せてやれ!」
「仕方がありませんな……寄せ集めのゴロツキと正規の部隊との格の違いを見せてあげましょう、特戦部隊全員前へ!」
特戦部隊の隊長らしき人物が号令をかける。
補給部隊と入れ替わるように前に出て来た特戦部隊は約2千人程、踊るキノコの前に広がるように横に壁のように立ちはだかる。
森の木々が邪魔になるためキチンとした横並びでは無いが踊るのに支障がない場所を選んで対峙している。
踊るキノコも呼応するように前に立ちはだかる。
特戦部隊の隊長がカウントを数えると、一子乱れぬ躍りをみせる特戦部隊の兵士。
「…………えーっと……アレだよね?」
「「アレだな!」」
俺達は特戦部隊の躍りを見た瞬間、某ダンスパフォーマーを思い浮かべてしまう。
まるで某男性ダンスパフォーマーグループのような力強い躍りをみせる特戦部隊。
キノコに合わせて踊るのでは無く自分達の躍りを見せ付けるように踊っている。
踊るキノコ達は踊る事無く次々と沈黙し始めている。
「強襲部隊!沈黙したキノコを殲滅せよ!」
お偉いさんの声が響き、もう一つの部隊がキノコを倒していく。
この間に踊るキノコは数を減らし約半数、ガリ国の兵数と変わらぬ位かどうかすると少ないかもしれない位に一気に狩られている。
余りの凄技に補給部隊の面々は賞賛の声をあげる。
その声を聞いた特戦部隊の兵士達は得意顔だったが、近衛部隊のお偉いさんには満足出来るモノでは無かったようだ。
「もう少しやるかと思ったがそんなモノか……仕方が無い、儂らの力を見せてくれるわ!近衛部隊前へ!」
近衛部隊の一部が食料などを運ぶ荷車に駆け寄りそこから目的のモノを取り出して配置に付く。
「………楽器⁉」
森の中で吹奏楽か!と言わんばかりの楽団が形成される。
音楽が始まると近衛部隊は一斉に踊り出す。
「社交ダンスだね………」
もう俺達は何処からツッコめばいいのかな?
フルプレートの鎧を着た男達が向かい合って踊る社交ダンスに唖然としてしまう。
「鎧を着てのあの動き……美しい。」
仲間の兵士達が賞賛の声をあげる。
いやいやムサ苦しい男達が踊っても全然美しく無いから!
キノコ達も躍りに敗けると言うよりもおぞましいモノを見たと言う感じで地面に足を入れて沈黙する。
「手の空いている三隊は一斉に攻撃せよ!」
お偉いさんの号令の元に沈黙したキノコを狩る兵士達。
増やし過ぎたかと思われたキノコ達はガリ国側の兵士に殆ど殲滅されてしまった。
「ふん!踊るキノコなど我らの洗練された踊りの前では口ほどにも無いわ!」
そう言ってはいるが、流石に疲れて居るであろう兵士の為に今日はここで休む事にしたようだ。
俺達は予想外の展開にこれからの事を話し合う。
「ねえねえ、負けちゃったけどどうするの?」
「流石にあんなアホな戦法で敗けるとは思わなかったな!」
本当に踊るキノコも謎で残念魔物だとは思っていたが、戦い方まで残念な方法だとは思いもしなかった。
「………一つ言える事は俺はもうアイツらの踊りは見たくない!」
俺の言葉に理世達も同意する。
キノコが使えないとなるとガリ国の進軍を止める手段は殆ど考えつかない。
どうしようかと思って居ると理世から提案される。
「とりあえず秀一、ガリ国と獣人達の街の中間地点位でちょっと全力で素振りして来ていいか?」
「そうだね、何もしないのはアレだから理世君にちょっと足止めして貰うとして……もうこの際進軍してる人達はあまり考えずにガリ国の王様とかをターゲットにした方がいいかも。」
理世が何をするのか里美姉は判るようだ。
その上でターゲットをガリ国に居る王様や貴族と言ったお偉方に変えようと言ってくる。
「よくは判らんが足止め出来るんなら理世頼む!」
「おう!」
理世は目的地に空間転移する。
目的地に転移した理世はアイテムボックスから俺がネタ武器だと思っていた2mの大剣を取り出し上段に構えて魔力を注ぎ込む。
「我、今こそ封印の鍵を解放する。秘められし剣の精霊よ我が声と魔力に呼応せよ!龍殲斬!」
大剣より光の柱が天高く立ち上がり、降り下ろした剣は光の柱諸とも地面に吸い込まれるように突き刺さる。
目玉クンを使わなくても遠く離れた獣人達の街から直視出来た光の柱と、物凄い轟音が遠くから聞こえて来た。
恐らくは進軍中の兵はおろか、ガリ国の方まで届いていると思われる。
目玉クンで理世を見ると大剣が突き刺さった所から地面が割れている。
幅は10m位で深さは目玉クンを下ろして見るが、真っ暗で下が見えない。
仕方が無いのですぐに上に戻したが数十メートルは余裕だと思われる。
長さは光の柱の分だけ数キロというか数十キロはあるだろう。
この谷と言えるような亀裂は渡るのも迂回するにも苦労するだろう。
足止めするには充分すぎる……というか無茶苦茶過ぎね⁉
「ただいま、こんなもんだろ。」
「お帰りなさい!今のが防壁に向かって素振りしたいって言ってたヤツかな?」
「そうだな、今のでちょっとスカッとしたぜ!」
ガリ国で言ってたドラゴンスレイヤーになった時に使った技ってヤツね……凄すぎと言うか世界に優しく無いね!
「おいおいあんな谷を作って、もし交易とかするようになったらどうするつもりだよ?」
「そこは気合いで何とか?」
「なるか!」
「まぁまぁ足止めには確実になるんだから、そう言った事は終わってから考えましょう!秀クンが!」
俺に丸投げかい!
交易するとなったら街道を創らないといけないし橋でも創るか……。
そんな事を考えている内に進軍している兵達に動きがあった。
どうやら、先程の光の柱と轟音の原因を探るべく斥候を出すようだ。
場所はこことガリ国の中間だからどんなに急いでも数週間、往復を考えるともっと足止めが出来る。
遅れて進軍したとしても同じだし、谷を見たら渡る道具等は無いだろうから引き返すしか方法はない。
「……結構有効な手だな!」
俺がそう賞賛すると理世はドヤ顔になる。
ちょっとイラっと来る顔だね!
ひとまずこれで獣人達の街は大丈夫だしガリ国の攻略を考えよう。
オーラマディ達に少し協力を頼むかな。
フーリス王国の巫女であるオーラマディであればガリ国の王様とかに謁見は可能な筈だ。
光の柱は神の怒りで獣人達に手を出さないように忠告して貰う。
「そんなに上手くいくかな?」
「欲望に忠実で何も見えていないヤツラばかりだからな。」
そんなダメ出しを喰らいながらも実行に移すことにする。
オーラマディ達は俺達が使徒であることを知っているので嫌とは言わない。
……と言うかなんか様子が変だ?
俺が知らない内に何かあったのか?
里美姉がこの世界の現状を話しているとは俺は知らないので、どこか覚悟を決めたような真剣な表情をするオーラマディ達に少し違和感を感じた。
オーラマディ達が協力してくれるなら細かい事は考えるのは後だな。
さあ、一気にケリを付けようか!
お読み頂き有難うございます。
良かったらブックマークを付けて頂けると嬉しいデス。
今回のお話は体調が悪い時に
書いていたモノが芸ふぅ……げふん……作風に
合わないと思い途中でボツにして、
新しく書き直したヤツです。
活動報告の方にボツにした文章を公開しますので、
どれくらい変わったか読み比べてみると
楽しいかもです。
実際、後の展開を考えるとボツの方が
楽に繋げられるんですけどね。
体調が悪いとどれだけ作品に影響を及ぼすのか判る
私にとって反省の回になりました。