45 癒しを求めて
5月1日 狐人族のフィスアの名前がスフィアに変わっていた所を修正しました。
ご指摘ありがとうございます。
俺達は一先ず借りた部屋に入るためにオーラマディ達と別れた。
部屋に入ってからすぐに今後の行動について話す。
「フィスアにはビックリだったね!それじゃ、今からどうしようか?」
「余計なお世話かもしれないけど、ちょっと調べておこうか?確か狐人族も湖の所に来てただろ?」
俺と理世でちょっとフィスアの事を知らないか話を聞きに行く事にする。
里美姉はオーラマディ達がこちらを尋ねて来るかもしれないのでこの部屋に待機だ。
「判ったよ!秀クン達には悪いけどここで休憩させて貰うね!クールダウンしとかないといつメテオりたくなるか判らないからね。」
何気に危ない発言をしているがスルーだ。
俺と理世は空間転移で湖に戻る。
湖に戻って狐人族の為に創った一画に行く。
湖の街は猫人族に創った村の回りに纏めて家を創った為に種族別に防壁で区分けはしていない。
街を種族別に区分けはしたが、防壁は街全体を一つで囲んだだけだ。
狐人族はその街の区画でも比較的小さい方で150人程の集まりだ。
俺達はフィスアという名前の女の子を知らないか聞いて回る。
やはり人数が少ないのですぐに話は聞けた。
フィスアがもっと小さい時に、父親は狩りで魔物に返り討ちにあって亡くなっており、母親と二人暮らしをしていたそうだが、3年程前に母親も病気で亡くなって一人っきりになったらしい。
それからすぐに姿が見えなくなり皆心配していたそうだ。
ただ、ガリ国の奴隷狩りの事もあり、みんな恐らく捕まってしまったのでは……と思っていたそうだ。
もしここに連れて帰って来れたなら一族揃って歓迎すると狐人族の族長は言った。
ちなみに今まで村長と言っていた村の代表者は、一つの街に集まった事により、村長から族長に呼び名が変わっている。
俺達はフィスアの事を聞けたので空間転移して宿屋に戻る。
「ただいま。」
「お帰り~早かったね。」
そんなノンビリしたやり取りをして情報交換する。
宿屋の方は誰が尋ねて来る事もなく静かだったそうだ。
「ふ~ん、とりあえずフィスアちゃんに身寄りはないからフィスアちゃんの意思を尊重するという事で良いのね。」
「それで良いんじゃないか、俺達が勝手に決めるもんじゃないしな。」
フィスアに対する対応方針も決まった所で宿屋の部屋の対応だ。
俺達は宿屋の扉に細工をして異空間の部屋に移る。
細工と言っても異空間の扉と連動させて、ノックをすれば異空間に繋がるようにして、ノックをせずにそのまま部屋に入ろうとしたら宿屋の部屋になるようにしただけだ。
異空間ではそれぞれの部屋で寛ぐ事にした。
里美姉も理世も隠れ家の周りからコピーしたようで、隠れ家の窓から滝壺が見えて実際に行けるようになっている。
理世は森の中だな。
二人いわく、周りからコピーして持って来ると見た目もそうだけど、魔法や武術の訓練場所になっていいそうだ。
その感性をマニュに見習わせたい。
未だに俺の部屋の窓は真っ暗な空間しか見えないからな!
今日はもうこのままそれぞれの部屋でゆっくりとする予定だ。
最近は獣人達の為にフル回転で力を使い続けていたし、ガリ国の事でガリガリと精神力を削られたしな。
俺の部屋に戻ると、ニアとミーシャちゃんが居た。
二人は魔法少女アニメを目を輝かせながら食い入るように見ていた。
「あっ!秀一お兄ちゃんお帰りなさいデスヨ!」
「しゅういちおにいちゃ!おかえりなちゃい!」
ああっ本当に久し振りな感覚で癒される。
「ただいま!二人共来てたんだな!」
「あい!最近秀一お兄ちゃんは忙しくて大変だったデスヨ!でもニアもミーシャちゃんもホンのチョッと淋しかったデスヨ。」
「ニアおねぇちゃがここならあえるかもって……」
「そうか悪かったな……今日はもうゆっくり出来るから相手になってやれるぞ!」
「本当デスカ!」
「うわっ~うわっ!」
二人共目を輝かせて大喜びだ。
俺にギュッっとしがみついて顔を『ぐりぐり』させている。
「じゃあじゃあニア、秀一お兄ちゃんのご飯が食べたいデスヨ!」
「みぃしゃも!」
「おう!任せとけ!でも二人共、お母さん達に言って来るように!判ったか?」
「あい!今すぐ言って来るデスヨ!」
「みぃしゃも!」
二人は手を繋いで駆け出して行く。
俺も理世達にニア達とすごす為に宿屋の食事を食べられ無い事を告げに行く。
「秀クンだけズルい!私のすり減った心にも癒しを!」
「そうだな、折角久し振りにゆっくりすると決めたんだからトコトン休みたい。」
二人にダメ出しを喰らう。
こうなったら宿屋の食事をキャンセルするか。
本当はオーラマディ達と食べて少しでも情報とかを得たい所だけどな。
「あら?食事に関しては頼めば部屋まで持って来てくれるんじゃない?アイテムボックスに入れとけばいいから貰っておこうよ。」
「そうだな。泊まって部屋から出ずに食事も摂らないなんて怪しすぎるからな。」
「そうそう。疲れてるから部屋で食べるって言っとけば誰も部屋に来ないんじゃないかな?食器は部屋の外に出しとくか、朝に食堂に持って行くか店主さんに聞けばいいしね。」
「じゃあ俺が言って来てただろやるよ。秀一は食事の準備を頼む。」
「じゃあじゃあ私はチョット早いけどニアちゃん達とお風呂入ろうかな?上がった頃に秀クンのご飯という事で!」
何か俺を置いてサクサクと決まって行く。
宿屋の店主には最初難色を示されたが、今日入国した事でもあり特別という事で了承してもらった。
オーラマディ達も俺達に乗っかるように部屋で食べる事にしたようだ。
入国そうそうトラブル続きで流石に参ってるだろうしな……ドンマイ!
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それでは俺はご飯の準備だ。
と言っても俺も疲れているのであんまり手の込んだ物は創りたく無い。
皆で食べるって言えば鍋か……うん!すき焼きにしよう!
今回は肉を焼いてから味を調える方じゃなく、割下を最初から作って置く方のすき焼きだ。
具材もシンプルに太ネギと焼き豆腐、シラタキに白菜とえのきかな。
肝心のメインのお肉は霜降りの最高級の物だ!これは譲れない。
最初に割下だな。
醤油にみりんを入れて水を少し加える。
最初に水を入れると割下が多くなりすぎる気がするので、家では最初に醤油とかを入れて水を調整するようにしている。
そこに日本酒を少し入れてから白ダシを加える手抜き仕様。
でも昆布からキチンとダシを取るより個人的にはこっちの方が好みだ。
甘過ぎる割下は余り好きじゃないので砂糖は少なめだな。
そこに先程の具材を入れて煮たった所をイメージして創り出す。
牛肉は素材のままを沢山創る。
念の為に具材も追加で素材を創る。
やっぱり鍋は皆で具材を入れながらツツくのが良いからな!
継ぎ足す具材は必須だ。
お肉は自分で入れてサッと半生で食べるもジックリ煮込むも自分のお好みで!ってヤツだ。
俺はサッとくぐらせたトロける程柔らかい肉を、新鮮な生たまごを絡めて食べるのが好きだから、今回はこの方式のすき焼きにした。
皆が集まった所で食べようと声をかける。
ニアとミーシャはお風呂上がりで『ほかほか』と湯気が体からあがっている。
食べる前にチョット水分補給しておこうか。
しかしアレだな、なんか皆で鍋を囲って食べる所と、俺の四畳半の部屋の雰囲気がレトロな昭和な感じで笑えるな。
ニア達はトロける程柔らかいお肉に夢中だ。
「これ、お口の中でじゅわ~って溶けるデスヨ!おいしいデス!」
「おぃちぃの~~」
ミーシャちゃんは言葉もトロけそうな感じだ。
「秀クンの家のすき焼きって私好きなのよね!べちゃ~っとした甘さじゃなく程よい甘さがいいの。」
「俺ははじめて喰ったが旨いな。」
理世達にも好評なようで良かった。
俺も食いっぱぐれ無いように食べないとな。
無くなったら新たに創ればいいのだが、なんだか負けたような気分になるので慌てて食べた。
食後のデザートはオレンジ、パイナップル、キウィなどの酸味の強いサッパリ系のフルーツの盛合せだ。
すき焼きの後のちょっとした口の甘さを取るのに丁度いい。
皆もすき焼きの後に甘いプリンとか食べるよりも美味しいと好評だった。
食事の後は理世達は早々帰ったのでニアとミーシャの三人でまったりタイム。
二人共俺に『ぺと~』とくっついて、俺が忙しくて構ってやれなかった時にどう過ごして居たかとかを一生懸命に話してくれたり、一緒にテレビを見たりして過ごした。
二人がウトウトし始めたので送って行こうかと思ったらニアとミーシャはここに泊まると言い出した。
「今日は秀一お兄ちゃんの所にお泊まりと言って来たデスヨ!」
「みぃしゃも!」
二人共計画的犯行ですか………。
まぁ、ちゃんと親の許しを得てるのであれば問題ないだろう。
俺はニアとミーシャを一緒の布団で寝かし付けてお風呂に入る。
お風呂の気持ち良さと最近の出来事での疲れで物凄く眠い。
俺もすぐに布団に入って熟睡した。
目が覚めるとやっぱりというか、案の定ニアとミーシャが俺の布団に潜り込んで寝ていた。
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