37 全力で話が変化球?
遅くなって申し訳ありませんでした。
一通り怪我の治療も終わった。
猫人族の人達も助けられた事には感謝しているようがったが、猫人族に擬態している俺はともかく、人間である理世達に戸惑っているようだ。
「お前さんはともかくとしてあいつらは人間のようだが、助けられたことは感謝するというか、何故人間が今更俺達を助けるのか聞いても?」
俺が答えようとしたが、先にニアが答える。
「秀一お兄ちゃんは神様の御遣い様なんデスヨ!里美お姉ちゃん達は秀一お兄ちゃんのすけっと?デスヨ!」
「は?神様の御遣い?なんだそれは?」
デスヨネー。
俺が聞いても理解出来ないよ。
「秀一お兄ちゃんは神様の力を使ってニア達を助けてくれるのデスヨ!」
「確かに俺達を治療してくれた力や大牙猪を倒した力は普通の人間には出来そうもないが………」
やはり力を見せられたがすぐには信じ切れていないようだな。
普通はそうだよな。
狼人族が特殊というか疑う事をあまりしないのか、俺が助かっているがなんとも言えないな。
ニアもなついているし、助けられたのも事実なので取りあえず追及することを保留したようだ。
猪の脅威も無くなったので、今は食事とって貰っている。
やはりマエラが食料を調達していたと言え、全然足りてなく皆がお腹を空かせていた。
急遽俺が釣って魔法の鞄に入れていた魚を焼いて、別におにぎりを創り出した。
ついでに俺達も一緒に食べる事にして、ご飯を食べながらのコミュニケーションとなった。
猪は理世のアイテムボックスに一先ず保管だ。
「この度はニアを保護して頂いた上に、私達まで救って頂き有り難うございました。」
「大した事はしていないので大丈夫です。それよりも今までの事を教えて貰ってもいいですか?」
ニアの両親によると突然、巨大な猪が村の柵を突き破って浸入して来て大混乱になったそうだ。
それで村から猪を追い出す事が不可能なので、皆で散りじりに逃げて猪に追いかけさせて、村から遠ざけようとしたらしい。
ニアは幼くて足が遅いために、家の床下の食料を保管する所に隠れさせて安全を確保する事にした。
皆で一斉に四方に逃げれば、誰かがすぐに戻って来れると考えて、大丈夫だと思っていたそうだ。
しかし、逃げた所に別の猪が集まってきて、さらに村に近付くと最初に襲ってきた群れのボスらしき、大きな猪が襲って来るので迎えに行くことが出来ない状態だったそうだ。
「食料は少しですが、一緒に置いておきましたし、いざとなったら近くに同族の村があるので、助けを求めるように言ってたのですが………そうですか、あいつら~!」
俺もニアと出会ってからの状況を伝えた所、あのニアを受け入れ無かった村人に憤慨していた。
「助けを求めたら共に助け合うという約定が有ったのに!」
あの村人には俺も思う所があるが、今考えてもどうしようもないな。
そう言えば結局、あいつらだけは俺の結界を受け入れ無かったな。
あれからどうなったんだろうか?
「あの村の事は置いておいて、これからどうするつもりなんですか?」
村人達は口々に意見を言い合い始めた。
「そうだな、村は滅茶苦茶になっているようだし、あいつらの近くに戻りたくはないな。」
「そうね。でもここは食料があまり採れないわ。それにこちら側の方が強い魔物が多いって言われているし。」
「こちら側は他の村も無いからな。」
元の村のあった所には戻りたくないが、こちらに新たに作るのも問題があるから駄目だと言うなら、狼人族の村辺りはどうだろう?あそこ辺りなら俺の力があるから、魔物の脅威は殆ど無いしな。
「今俺達は狼人族の村に世話になっているのですが、その近くとかはどうでしょうか?」
「あそこ辺りはそれぞれの縄張りがあるから難しいな。それに水の確保が難しい。」
あまり村が近すぎるのも、飲み水の確保の点で駄目か。
「ならいっその事、湖の反対側辺りにでも作ったらどうにゃ?」
さっきから黙って焼き魚を食べていたマエラが言った。
居たのか……すっかり忘れてたぜ。
「マエラお前も知ってるだろう?湖の女神様がいらっしゃる、畔には恩恵を受けた者達しか住んじゃいかんのが決まりだ。」
「恩恵はみんな受けたにゃ?」
『バリバリ』と食べていた魚を掲げる。
食べかけじゃなくて、せめて新しい魚にしようよ。
皆が顔を見合せ、持っている焼き魚を見る。
「あのう、この魚は何処で?」
「何処も何もこの湖から流れてる川の魚ですが?」
恩恵も何も釣り糸垂らせば爆釣なんだよ?
有り難み何て全く無いよ。
確かに良く見たらこれ銀葉魚だぞ!
本当だ生まれて初めて食ったぞ!
等と口々に言い合っていた……解せぬ。
「この魚を釣れるって事は女神様の許しを受けてるあかしにゃ。食べた私達も恩恵を分けて貰ったにゃ。」
一斉にこちらを見る猫人族の人達……ちょっと怖いから!
俺は困惑して理世達を見る。
と言っても来たばかりの理世達が知る訳がないんだが。
「………う~ん、微かだけど何か感じるな!これは……」
「あ~、そうだね……この感じは精霊かな?いや……違うね、もっと上の……聖霊?水の聖霊だね。」
理世達が湖を見ながら気配を探っているようだ。
俺にはサッパリ判らんな!
取りあえず反対側に行く事にになり、歩きだと時間がかかり過ぎるので空間転移をする事になった。
俺だと全員纏めては難しいので理世が代わりに行う。
さっき俺が転移した場所なので問題無いそうだ。
皆がそれぞれ手を繋いでから転移する。
一瞬で反対側に来たために皆は驚いていた。
「凄い!本当に神様の使徒様なのか?」と俺達を認め始めたようだ。
「さてと、それじゃあこの湖が聖霊の棲み家なら、その聖霊と交渉しましょう!」
里美姉がそう言うがどうやって?
「交渉って見えないのにどうやるんだよ?」
「そこは気合い?……ってのは冗談だ!」
「気配が消えかかってるから秀クンの力をちょっと分けて上げたらいいんじゃないかな?湖の水を浄めてるのも出してるのも、聖霊みたいだから居なくなったら困ると思うし。」
「そうなんだ、どうすればいいんだ?」
「ホンのちょっとでいいから、魔力を込めるイメージでビー玉を創って見て!」
「了解!」
俺は言われた通りにビー玉を創り出して魔力を込めた。
出来上がったビー玉は里美姉に渡す。
「それじゃあやってみましょうか!」
『この地を護り、育み、生けるモノ達に安らぎを与える偉大なる聖霊よ。世界を司る神の神気を以て、その姿顕現せん!』
里美姉がそう唱え、湖にビー玉を落とす。
ビー玉を落とした辺りが光出して湖面が盛り上がって行く。
光が収まると、半透明の水で出来たスライ……げふんげふん……髪が湖まで伸び女の形を象ったモノが現れた。
これが皆の言う所の水の聖霊なんだろう。
『力をお与え頂き、大変感謝いたします、創造の神よ。』
頭の中に水の聖霊からの声が聞こえてくる。
「貴女がこの地を護っていた聖霊で間違いはない?」
俺の代わりに里美姉が水の聖霊に声をかける。
『はい。ワタクシと森の聖霊で護っておりました。』
「森の聖霊?………感じないけど?」
『恐らく力尽きて………ワタクシも消える寸前でしたので……』
「ああっ、これはヤバいわね………秀クンが初めてここに来た時に助けを求められたら良かったんだろうけど……見えなきゃね。」
森の聖霊が居なくなったのが、森の異変の始まりって事か?
本当に知ってれば………どうにもならなかったな!
力無かったし!
『いえ、どうにか力を振り絞ってスライムを神様の元に遣ったのですが………』
その言葉を聞いて俺達はレクを見る。
レクはニアの後ろに隠れるようにして、器用に体を捻って横を見てる」
口も目も無いのに、横を向いて口笛を吹きながら誤魔化してるように見える……器用だな!
「まぁレクも喋れ無いから、意志疎通しようも無かったしな。」
俺がそう弁護してやると、レクは俺に寄ってきて『ぷにぷに』と体を擦り寄せる仕草をした。
『そうですね、そこまでの力を与える事が出来ませんでしたし……』
「取りあえず、貴女と森の聖霊の事は考えてみるわ。最初の目的に戻るわね。」
そう言えば、猫人族の住む所をどうするか?ってのが目的だったね。
『話は全て聞いておりました。あなた様の御心のままに。』
俺に向かってそう言ってくれる水の聖霊。
「皆!水の聖霊の許可は得れたわ!ここに新しい村を作りましょう!」
里美姉が皆にそう言って、ここに村を作ると宣言する。
皆は成り行きをじっと見守っていたが、里美姉の宣言を聞いて大喜びだ。
「秀クン!ここに村を作ったら聖霊達の為にもなるし、後々に秀クンも恩恵を受けると思うよ。」
「良く判らんけど、里美姉が言うんなら間違いは無いだろう。」
「うん私は秀クンのお姉ちゃんだからね!任せて!」
「理世は力仕事頑張ってね!」
「………予想はしていたが………了解した。」
どうやらここが新しい猫人族の村になるらしい。
水の聖霊に森の聖霊か………魔王の事もあるし、ワケ判らん!
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