36 違うけど結果オーライ!
理世という戦闘担当が登場したので
頑張って見ましたが、難しいです。
自称、魔王密偵を名乗るマエラが現れた事で、理世達と村人の交流は簡単な物になり、落ち着いてから改めてする事となった。
俺に与えられた家にマエラを連れて行き話を聞く事にしたためだ。
異空間の部屋の方は魔王の意図が判らない為に極力伏せる事にしている。
無駄だとは思うがマエラに聞いてみよう。
「魔王は俺達を見てこいと言ったのか?」
「言ったのは魔王様の側近のイケ好かないヤツにゃ」
「その側近がお前に見て何をしろと言ってたんだ?」
「さっきから言ってるにゃ、私は見てるだけにゃ!他にも言われた気がするにゃけど忘れたにゃ。」
やはり全然判らない。
おれはダメ元でステータスチェックをする。
名前はマエラで16歳、JOBが魔王軍諜報部隊となっていたので間違いは無さそうだ。
それではやはり惚けてるだけかと思ったが、
称号に我が道を行く猫。
備考の所に、結果オーライな不思議諜報員。となっていた。
………マエラの説明がピンポイントすぎる!
ステータスに表示される位の残念娘なのか?
どうしたものかと思っていると、ずっと大人しくしていたニアがマエラに話しかけた。
「お姉ちゃん、にゃん語になってるけど大丈夫デスカ?」
言ってる質問はどうでも良いけどな!
語尾に『にゃ』を付けないのは確か淑女の嗜みなんだっけ?
「私はにゃん語を話しても立派なレディだから問題無いにゃ!オマイは確かサイベリアさん所のニアにゃね。」
「お姉ちゃん!パパ達の事に知ってるデスカ⁉」
「私もオマイと同じ村だったにゃ。オマイがこれ位の時に会った事もあるにゃよ。」
お約束ながら親指と人差し指で大きさを表す。
その大きさだと精々ハムスターの子供くらいだろう。
「ニアそんなにちっちゃくないデスヨ!」
いや律儀に返さなくてもいいから!
「大牙猪に襲われて大変だったにゃ、村の者達も散りじりに逃げたそうにゃけど、大牙猪が付きまとって村に帰れないって嘆いてたにゃ。」
「お姉ちゃん!村の人達と会ったの?」
おや?思わぬ情報が………でもニアのステータスは孤児になってたから両親は………。
「ここに来る途中に会ったにゃ!オマイの両親も怪我はしていたけど元気してたにゃ。オマイの事を話したら、生きてたって喜んでたにゃ。」
(あれ?マニュさんやどういう事かのぅ?)
『久しぶりの出番ですかな?この場合、ニアが両親は死んだと思い込んでいた為かと。』
そうか、瓦礫から出て来て誰も居ないからそう思い込んだんだな。
「怪我してるデスカ?秀一お兄ちゃん!パパとママ助けて欲しいデス!」
生きてるならなんとかしてやらないとな。
両親が居るならニアの面倒も俺が見る必要は無くなるしな。
「マエラ、お前は村人に何処で会ったんだ?それと付きまとっている猪は大丈夫だっかのか?」
「私は魔王軍一の密偵にゃ!あんな前を突進するだけのヤツに気付かれるヘマはしないにゃ。」
「村人はあっちの湖の、こっちから言うと反対側の崖の上に30人程居たにゃ、崖下に大牙猪が5匹居て登ってこれにゃいけど、食料調達の時は降りないと行けにゃいから困ってたにゃ。」
「それで困ってる村人をそのままにしてきたのか?」
「私は力仕事が苦手にゃから、食料調達だけ手伝ったにゃよ。……
ああ、助けを呼んでくるって私は言ったにゃ!オマイら助けて来るにゃ!」
「忘れてたんかい!」
「食料は充分置いてきたからまだ大丈夫にゃ………たぶん」
「秀一お兄ちゃん…………」
ニアが涙をためて俺を見上げて来る。
「泣くな!ちゃんと助けるから心配するなよ。それにニアも助けに行くんだろう?」
「あい!刀のサビにしてやるデスヨ!」
もう猪位じゃニアは負ける事は無いからな!
「理世達はどうする?来たばっかりだし休んどくか?」
「知ってていうな!日本で鈍った感覚がどれ位か試すのに丁度いいから行くぞ。」
「そうだよ!ニアちゃんのお姉ちゃんとしてお願いは聞かなきゃね!」
「それじゃあ湖まで空間転移で行ってそこから飛んで行くのが一番早いか。」
「だね。マエラも居るしね。」
異空間の部屋の扉から行くのはマエラに知られたく無いので使えない。
理世達はこの世界に来たばかりなので空間転移は使えないから、
俺が空間転移で湖まで送って、そこから飛行魔法で飛んで行けば、猪に邪魔される事無く村人と合流出来るだろう。
あとは皆で猪狩りだな。
「マエラ!湖の反対側辺りに着いたら正確な場所の案内を頼んだぞ!」
「任せるにゃ!ここからにゃら10日もあれば………食料が無くなるにゃ!急ぐにゃ!」
「はいはい大丈夫!みんな俺に掴まってくれ!『転移』」
みんなが俺に掴まってから、マエラの肩に手を置いて湖まで転移する。
「にゃにゃにゃ!ここは湖にゃ!どうやって来たにゃ⁉」
「はいはい大丈夫、大丈夫。『飛行』」
俺はマエラを無視して、猫を抱えるような感じで脇の所を持って、飛行魔法を唱える。
俺に続いて皆も飛行魔法を使う。
『飛行』
「「『飛行』」」
ニアは俺と同じだが、理世達はフライと言っていた。
言葉が違ってても問題無いんだな………。
「フギャーーッツ!と、飛んでるにゃ!高いにゃ!落ちるにゃ!」
「あ、あと胸触ってるにゃ、スケベ。」
驚いてる割りに冷静なツッコミだな。
急いでるので無視の方向で。
程なくして、崖の上に身を寄せ合っている猫人族達と、崖下の猪が見えて来た………マエラ必要無かったな。
猫人達は俺達に気付いて、驚いていた。
考えれば俺は今、猫人族の姿になっている。
天使の翼っぽいのが生えてる猫って結構シュールだな。
理世達は人間だしあんまり違和感がないな……クソッ。
ニアは空から両親を見つけたのか、一番に猫人達の所に降り立ち、怪我をしている男に寄り添っている女の方に駆け寄って行った。
「パパ!ママ!」
ニアは女の人に抱き付いて『わんわん』と大泣きしていた。
呆然としている猫人達は、状況を聞きたがっていたが、先に猪狩りをして危険を排除する事にした。
「ニアはダメっぽいから理世達にお願いして良いか?俺は怪我人を診るわ。」
「そうだな、その方が効率的だろう。」
俺はニアの父親に近付く。
初対面だから、最初にニアの父親を治療する所を見せれば、他の人も安心して素直に治療を受けてくれるだろう。
「初めまして、ニアのお父さん…サイベリアさんですか?怪我の治療をしますので、少しじっとしていて下さいね。」
「パパ、秀一お兄ちゃんは凄いんデスヨ!怪我なんて一瞬で治しちゃうデスヨ!」
サイベリアさんは半信半疑で警戒していたが、ニアの言う事を信じて素直に治療を受けてくれた。
『神の癒し』
怪我した所を光が包み込み、瞬く間に怪我を治す。
それを見ていた人達に、他に怪我をしている人が居れば治すから言ってくれと頼んで、みんなの治療始めた。
俺が治療をしている間に里美姉は呪文を唱え、ファイアウォールで猪を囲んだ。
「火の精霊より熱き炎を纏いし聖霊よ、我願うは全てを阻む聖なる焔、我が魔力を捧げ願い叶えん!聖炎焔の壁!」
崖下の猪を囲むように半円状に炎の壁が出来上がる。
なんか俺が呪文考えなくても里美姉の知ってる呪文を教えて貰えれば良いような気がして来た。
十分、厨二的な呪文だと思う。
「私がやるとお肉が駄目になりそうだから、あとは理世に任せるわ。」
「了解した!」
理世はマジックボックスから2mの刀を取り出した。
長さ以外、見た目はいわゆる長ドスと言われる白木で出来た刀だ。
某、大泥棒の三代目に出てくるサムライの持っているような奴だ。
理世は刀を構え崖下に降りる。
「我が相棒よ力を解き放て!」
理世がそう叫ぶと、白木の鞘が消えて刀身が現れる。
あの刀、ネタじゃなかったんだな………でも普通じゃ鞘から抜けないよな。
呪文っていうか合言葉があるんだ。
秀一はネタの刀だと思い込んで確かめて無かったが、持ち主以外は抜く事が出来ないように作られている。
抜く事が出来たとしても長過ぎるので抜くのに苦労するが。
普通は抜かずに合言葉を言って鞘を消すようにして使う。
刀を下方に向けて飛び下りた理世は真下の猪を刀でかち上げるように下から上に振り抜いた。
そして真下の猪はもう用が無いとばかりに蹴って右側の猪に向かって方向を変える。
今度は逆に上から下へ刀を振り下ろした。
最初の猪は理世に蹴られてバランスを崩したように倒れながら体が二つにズレて行く。
すでに最初の一振りで真っ二つになっていたようだ。
二匹目の猪に振り下ろした理世は休む事無く、後ろに居る猪目指してクルッっと体を回転させながら横凪ぎに刀を振るう。
右側の猪を始末した理世は、脚をその場で屈伸させて思いっきり反対側にジャンプする。
屈伸だけで飛んだにも関わらず高さ4m程になり軽々と最初に倒した猪を飛び越えて反対側の猪に届いた。
猪は飛んで来た理世に向かって突進して来たが、理世の刀は突きの体勢になっており、突進の力のままに頭から串刺された。
猪の体に深く突き刺さった刀を手放して最期の猪と距離を取るように後ろに下がる。
すぐさま、クローズ!オープン!と続け様に叫ぶと一瞬で理世の手に刀が現れる。
恐らくアイテムボックスを利用しての技だと思われる。
刀の戻った理世は突進してくる猪に対して大上段に構え、「風よ我が路を開け!」と叫び、一気に振り下ろした。
突進して来た猪は真っ二つに裂かれ、理世を避けるように左右半分ずつに別れて理世をすり抜けて倒れた。
さっき言葉で、風が理世を守る様に展開して猪の体をはね除けたのだろう。
5匹の猪を相手にあっさりと終らせた理世を見て、本当に人間か?と思う秀一であった。
「さっすが刀神と言われた勇者!人間辞めてるね!」
「うるさい!この位のレベルなら秀一にも出来る。」
無理ですから!
理世達が猪を相手にしている間に治療を終わらせようと思っていたが、余りにも早く、無茶苦茶な戦いぶりに呆気にとられていたせいもあり、何もすることが出来なかった。
余りにあんまりな戦いぶりに冷や汗をかきつつ。
とりあえず俺の仕事をしようかな?
現実逃避するのであった。
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