35 やって来ました
遅くなって申し訳ありませんでした。
理世達がこちらに来る前に、狼人族の村長を通じて各村には話を通して貰った。
理世達が人間という事で嫌な顔をする者も居たそうだが、俺と同じように神様に選ばれたという事でなんとか納得をしてもらっている。
俺が今まで狼人族の村を拠点にしているので、理世達の拠点もここになる事を周知して貰ってる。
俺の力も少しではあるが、差し障りの無い程度で話をしたので、ある程度は自由に使えるようになった。
異空間の部屋に入る時に小細工するのが正直面倒だったので、もっと早くすれば良かったと後悔した。
俺に与えられている家に扉と呼び鈴を付けて、異空間の部屋に出入り出来るようにしたが、何処からでも出入り出来る俺達には余り意味が無いので村の人との連絡用位と思っている。
それに伴って異空間の部屋も少し変更した。
村の扉から入った場合には、20畳位の部屋に絨毯を敷いてテーブルと椅子を置いている部屋を創ったので、そこに繋がるようにしている。
会議と言うか集会場みたいな物だな。
人が増えた時はテーブルとかを避けて絨毯に座ればいいのではないかと思っている。
ちなみに俺の部屋はそのままだ。
……なんとなく愛着が出てきたのは内緒だ。
基本、村の人が出入り出来るのはここまでで、他の部屋にはいけない。
部屋にもう一つ付いている扉が廊下に続いているが俺達の持つスマホ型の鍵が無いと入れないようにしてある。
要は今まで出入り出来るように創った扉がこれで、そのまま外に繋がるか、この部屋になるかの違いだ。
今の所、俺の部屋まで来たことがあるのはミーシャちゃんだけだ。
ニアと同じように魔法少女アニメにハマってしまって、調子に乗ったニアが変身ブレスレットで魔法少女姿になった時の興奮はニア以上だった。
そんな感じで、細々と受け入れ体制を整えて、漸くこちらに来る日を迎えた。
俺達が扉の前で待っていると、突然ニアの持っているスマホ型の鍵から着うたが鳴り始めた。
何故かニアのお気に入りの魔法少女のオープニング曲が流れてる。
「は?なんだこの着うたは?」
俺がニアからスマホ型の鍵を借りると、画面に『里美お姉ちゃん』と表示されていて、下の方に受話器の取るマークと切るマークまであった。
俺が取るマークをスライドさせると。
『ヤッホー元気!』と能天気な里美姉の声が聞こえて来た。
「何?この機能……俺知らないんですけど……」
『あれ?ニアちゃんにかけたつもりだったけど秀クンの方に繋がっちゃった?秀クンこれ、自分のスマホをイメージしたでしょ?しっかり通話機能が付いてたよ!』
「知らなかった………」
『初めて見た時に通話は出来ないのかな?って思ったら通話画面に変わったよ。通話登録されてるのが私達だけだから、この鍵限定の通話機能だと思うけど。』
思わず自分の奴を取り出して試してみる。
「本当に出来るよ………」
『駄目だな~秀クンは。機械は最初に弄り倒さなきゃ!』
「ちなみにこのニアの奴の着うたは?」
『ちゃんと見なよ秀クン!カードスロットがあるでしょ?それを使ってニアちゃんのに移したんだよ。ニアちゃん大喜びだったよ。』
ニアは知ってたんだ………
『………その話はいいから、もうそちらに行っても大丈夫か?』
突然、里美姉との通話に理世が割り込んできた。
『え、理世君?これ多重通話も出来るんだ凄いね!』
『下のメニューに個人と指定、一斉通話に割り込み通話まで選べるようになってるぞ』
なんか俺より使いこなしてるんですけど。
普通のスマホには無い機能だよね⁉
あったらいいなーとか昔から思っていたからそれが反映された⁉
「はーっ、もういいわ………何時でも大丈夫だ。こっちに来てくれ」
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「ヤッホー秀クン!来たよー!」
「ほう、こっちはこうなってるんだな。」
理世達が扉を開けてこちらにやって来た。
俺がやっているから判っちゃいたが、こうも手軽に行き来出来ると異世界転移の有り難みがないな。
……元々無理矢理で有り難くなんてちっともなかったけどね!
「秀クン!これ使ってて思ったんだけどね、マップ機能と連動でショートカットボタン追加出来ないのかな?」
「それは俺も思ったな、一々マップで探すより、この前見た湖みたいに、湖ってボタンを押すとマップと連動してそこに繋がるようになったら便利だよな。」
「そうそう、今のだとマップ全体を出してイチイチ確認だから、何処が何処だか判らないんだよね。だから狼人族の村とか湖なんてズバリなボタンがあると簡単になるでしょ?」
「……それはいいかもしれないな。ついでに今までは俺がイメージを登録して、使えるようにしてたけど、持ってる奴が全て追加登録出来るようにすれば、範囲は一気に拡がるな。」
個人でする空間転移は、発動者が転移先を知っていてイメージ出来る事が前提だが、これは一度イメージをマップに登録すれば、誰でも行けるように創ってある。
今までは使うのがニアのみで、俺は直接異空間を繋げていたから気にしてなかったが、理世達も使うなら俺だけが登録するより、皆で登録出来た方が効率的だ。
「判った、あとで調整してみる。それよりいい加減外に出よう。皆が待ってる。」
「いつまでもこんな話をしても仕方がないからな。」
「そうだね。まずは挨拶挨拶!」
さっきからグダグダで全然先に進まなかったが漸く行動に移すようだ。
家の外に居る村人は今か今かと持ち構えていたが、一向に出てこないので少し焦れて来ていた。
「ここが秀一の居る世界か…………」
「わぉ、ワ○ルドライフ!」
理世達も異世界は経験しているのだろうが、久々の獣人達に驚いているようだ。
「遅いにゃ!何時まで待たせるにゃ!」
全然出て来なかった秀一達に流石に文句を言いたかったようだ。
「悪い悪い………であんた誰?」
文句を言って来たのは狼人族の村人ではなく。
身長は俺と同じ153cm位で、オレンジ色に少し白の混じった髪の毛に目は金色の猫人族の娘だった。
「私は魔王様からオマイらを、極秘に監視するように命令されてやって来た、魔王軍一の密偵のマエラ様にゃ!」
魔王軍一ってまたか!魔王軍って実は人材不足なんだろうか?
なんでいつも残念臭の漂う奴しか来ないんだ?
「………極秘の癖に俺達監視対象者に姿を見せて大丈夫なのか?」
「……………難しい事は判んないにゃ!要はオマイらを見ていれば良いにゃ!」
「御遣い様と同じ猫人族で、当たり前のように居ましたので、てっきり仲間の方かと……」
村長達も何故居るのか不思議に思っていたそうだが、平然としていたのでそう結論付けていた。
しかし魔王か、俺としてはも少し後に考えるつもりだったが、向こうは待ってくれないという事なのかな?
「監視をしてどうするつもりなんだ?」
「だから難しい事は判らんにゃ!そういうのは別の奴の仕事にゃ!」
「……………………」
やっぱり残念すぎる……チェンジ出来ませんか?
俺はマエラの事は一端放置して、村長達に理世達を紹介する。
他の村からも代表者が来ていたので、紹介自体は何のトラブルもなく恙無く終わった。
さて、仕方がないのでマエラの相手をしよう。
俺達が揃って一番最初が魔王か………ハードル高すぎない?
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