32 お出かけしよう
本日2話目になります。
人の姿になれるようになったニアは俺が学校に行っている間、母親と一緒に外に買い物や散歩など外に出掛ける事が増えた。
母親いわく「見えなくてもしっぽと耳は見えるわよ。」とおかしな事を言っていたが……その理由が今判った。
今日は『初めてのおつかい』よろしくニアが学校まで遊びに来た。
別に本当におつかいと言う訳じゃなく、先日母親に学校までの道を散歩しながら教えられてたみたいで、家で俺が帰るのをソワソワして待ってるニアを見て「お迎えに行って来たら?」と母親が送り出したらしい。
放課後、俺が帰る用意をしていたら校内放送で「校門の所に至急向かうように」と言われ慌てて行ってみると、この学校の制服を着たニアが待っていた。
ニアを見て守衛さんが気を利かせてくれたみたいだ。
俺を見つけたニアが『てけてけ』と駆け寄って抱きついて来た時に確かに見えないのに『しっぽと耳』が見えた。
今はいきものがかりの仕事は免除されているので、一緒に帰ろうとした所、係りの仲間に見つかってしまって、飼育棟までニアと一緒に連行されてしまった。
どうも、対外的に『親戚の子が遊びに来てるので世話をする』が休む理由になっていたらしい。
確かに異世界関係者以外に本当の事を言える訳がないからな。
世話をする子が来てるのなら問題無いだろうと言う名目で拉致られて、女の子達にニアが構われ捲っていた。
「うちの制服着て可愛い!それどうしたの?」
「ま、ママさんに作って貰ったデス、里美お姉ちゃんとお揃いがいいって言ったら作ってくれマシタ。」
「里美お姉ちゃん?ああ、星見君と幼なじみだったよね⁉そうかそうか。」
「あなたのお名前は?」
「にあデス!星見にあ。4歳デス!」
ん?親戚なのに態々星見を名乗らせるのか?
……きっと考えるのが面倒だったんだろう。俺も考えてなかったし。
「にあちゃん可愛い!星見君!この子ちょうだい!」
「やらんわ!……そろそろ用事があるんで帰らせて貰っても……」
「この子の世話が用事なんでしょ?だったら良いじゃない。今日はうちの動物達とのふれあいデーという事で!」
「ね?にあちゃん、うちには動物さん達がいっぱいなんだよ!一緒に動物さん達を見て遊びたいよね。」
「動物さん⁉あい!」
ニアが手をあげて大きく返事する。
「あい!だって、可愛い!」
そう言ってニアは連れ去られて行った。
動物達と聞いた時の口元の涎と狩人のような目の輝きはきっと気のせいだ………見なかった事にしよう。
帰るに帰れなくなった俺は、その日タップリと仕事をさせられた事は言うまでもない。
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明けて翌日の休日、俺とニアは外に情報収集と買い物をするために
里美姉達と一緒に街に出かけた。
「へー、そんな事があったんだ。昨日こっちに来ないから何があったのかと思ってたよ。」
「すまん!久々のいきものがかりの仕事で疲れ果ててダウンして連絡し損なった。」
「それじゃしょうがないね。数日と言っても秀クンにとっては数ヶ月振りだろうしね。」
「あいつらも、いきものがかりだけあって、小動物に弱いからな。」
理世はニアの事を完全に小動物認定してるよな。
ニアはチョコレートパフェを『はぐはぐっ』と食べるのに夢中でとても静かだ。
「はっきり言って向こうで狩りをしていた方が楽だな。」
「私達も早く行って見たいよね!秀クンの世界がどんな所か楽しみ!」
「そうだな久しぶりに全力で戦えそうな魔物もいるだろうしな!」
「「だから早く俺達を召喚出来るようにしろよ(してね)」」
二人共そんな事を言ってくれる。
「今更なんだが本当に良いのか?こっちの方が平和で楽だぞ。」
「俺にとっては、ここの方が生きづらい。息が詰まりそうだ。」
「そうそう、ここだと魔法一つ使うにも気を付けなきゃいけないもんね!ある意味こちらの方が世知辛いし。」
「世知辛い?」
「そう!異世界体験者の人達が結構いるから決まり事が多いし。秀クンも見たでしょ?」
「街中で挨拶とかされたな。」
「いきものがかりの先輩の話なんだけどね、職活の時に面接官が異世界関係者だったんだって。それで先輩本当は商人だったんだけど『私は魔王を倒して世界を救いました。』って言ったらしいのよ。」
『ほう……では私は貴様に殺されたと⁉○○国の商人よ』
「って言われたらしいわ。」
怖っ!何それ怖いわ!
確かに異世界に行った人全てが勇者とかじゃないもんな。
しかし魔王!………無いわー。
「結局、採用されて今、魔王様の元で働いてるって言ってたよ。」
うーん御愁傷様。ドンマイ!
「あとは元農民に雇われた元王様とかね。異世界の経験も私達にはコネになるけど、ある意味それがキツい時があるの。」
「確かにキツいな!」
「もう確定だと思うが、俺達も巻き込まれるんだろう。それなら早い方がいい。」
「それに秀クン、神様なんでしょ?上手くすれば永遠って存在だし、私達も頑張れば好きな事をして楽しく暮らせるじゃない!」
「そちらの世界に行けば、上手く行けば元の世界の輪廻の輪から外れられる。元の世界のクソッタレな神と縁が切れるなんて最高だな!お前が神なら都合がいいしな。」
「………なんか二人共、欲望がダダ漏れてるぞ⁉」
「「当たり前だ(よ)!それ位の役得が無きゃクソ神の相手なんてしてられん(ないよ)!」」
「装備は全部アイテムボックスに入れてあるし、隠れ家も向こうに持って行けそうだ。お前の異空間の部屋を見る限り、繋げる事も可能なようだしな。」
「魔素が溢れているなら魔法使い放題だし。異空間の部屋は私達も利用するのが前提って感じの造りだったしね。」
「「何かあれば秀一(秀クン)が創ってくれるしね!」」
「はいはい。………感謝してるよ。」
「もう、お前の方の準備は良いのか?」
「おう!ホームセンターとかディスカウントショップ。スーパーに百均まで行って、触りまくったから問題無いだろう?いざとなったら帰って来てから情報を仕入れるさ。」
「それじゃあ大丈夫だな。」
「まだよ、秀クン!今からお洋服見に行きましょう。ニアちゃんの服が少ないわ!……それにミーシャちゃんだっけ?寂しがってるだろうからお土産用意した方がいいと思うな。」
「………それは言えるかな?俺のはどうとでもなるが、ニアの着る服は判らんな………」
「そうだよ!今からハシゴして目指せ100着!」
「多いわ!」
結局、日が暮れるまで服を覚えさせられた。
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俺は気が付くと白い部屋?空間に居た。
「………なんか懐かしいというか嫌な予感しかしないな。」
「………………………」
やっぱり放置された。
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『ゴメンゴメン、遅れたちゃったぁ~。待たせちゃった?ゴメンね!てへっ☆』
「ウザいしキモいわ!おっさんのてへぺろなんて見た無いわ!」
『姿は最初から見せておらんがのぅ。』
『うふふふっ』
やはり相変わらずフザけた神様に呼び出されたようだ。
「それで、こんな所に呼び出して数時間も待たせたのには、何か理由があるんだよな?まさか又シルなんとかちゃんとか言うなよ!」
『折角こっちに戻って来ておるからのぅ、ご機嫌伺いじゃ。』
『待たせたのはやっぱりお約束?一度始めたら止められませんわ。』
『それにシルなんとかでは無く、うちの可愛い娘はシルフィエールちゃんじゃ』
「ふざけるな!そんなお約束はいらんし、娘の名前も興味ない!」
やはり相変わらずだった。
「………それに神様が娘の『真名』を俺に教えていいのか?」
『もちろん仮の名に決まっておる。ワシの事も『アーステ-ル』と呼んでよいぞ。』
『それじゃ私は『エンデフィール』でいいわ。この名前の持ち主よ。』
「ああ捨てる!と商標権ゴロだな。判った、ゴミとゴロと呼ばせてもらう。」
『『すっごく不敬じゃな(い)⁉』』
「それで本当の所はどうなんだ?」
『ずっと見ておったが、ちと暢気すぎるかのぅと思っての』
『理世君達を巻き込む積もりみたいだけど、それでも遅いのよねぇ』
「巻き込むのはそちらの思惑通りだろ?」
『『さてのう?判らんな(らないわ)』』
「ふん、まぁいい。委された以上俺のペースで俺の思ったようにやるから口出しするな。」
『そう言ってもられんしの。これを受け取れ。』
卓球の球位の大きさの水晶が2個俺の目の前に現れた。
『これはワシとエンデフィールが力を込めて創っておる』
『これにあなたの力を少し加えて完成させなさい。』
『あとはそれを二人に渡したら、お主の世界とこちらを自由に行き来が出来るようになる。』
『理世君に伝えてね。私も力を込めたから懐かしのキミの世界に行けるわよ!ってね。』
あんただったのか……理世の世界の神様。
『あなたはそうねぇ、許可してあげるから好きにするがいいわ。その水晶位なら複製出来るでしょ?』
『さて、時間も無いようじゃしここまでじゃの。』
『私達を存分に楽しませてね!』
「……相変わらず、こっちの都合とかは関係無いんだな………」
秀一が白い空間から消えていった。
『さてこれで少しは動いてくれるかのぅ?』
『本当に今の所全然動きませんからね。』
『場合によってはシルフィエールにお願いしないとダメかもしれんの?』
『それはちょと避けたいですわね。』
何やら他にも暗躍しているようだった。
お読み頂き有難うございます。
良かったらブックマークを付けて頂けると嬉しいデス。
今回作中に出て来た、異世界から戻って来た人達の話は、
「異世界その後のあるある」でショートの話作れるんじゃね?
とか思っていたりなんかも………(笑)。
4月21日に短編で、「異世界のその後の『あるある』を投稿
しています。
是非そちらもお読み下さい。





