30 覚えてみよう!のその前に
本日2話目になります。
長くなりそうだったので分割しました。
今回は説明回になります。
前説ですね。
ニアがこちらに来てから後が大変だった。
ロールド達に黙ってこちらに来た為に、急にニアが居なくなって大慌てしたそうだ。
理世達が早めに気付いて家に戻る事が出来たので、ニアの事を知ってから俺がロールド達の所に謝りに行くまで、それ程の時間が経ってなく、村全体での大騒ぎにならなくて良かったのがせめてもの救いだ。
でもミーシャちゃんが大泣きしたのには参った。
「ヴぁあああぁ~、ニアおねぇぢゃがっ、……いなぐっ、っづ、あああああぁ~~~~~ん」
俺が居なくなって、寂しい思いをしていたのに、ニアまで居なくなったので、それはもう手が付けられない程の泣きっぷりだった。
もう土下座するしか無かったね!
泣き止むまでひたすら謝ったよ!謝り倒したよ!
どうにか泣き止んでくれた時には俺のHPは枯渇寸前だったよ。
マジで!魔物相手でもここまでのダメージは受けなかったね!
ミーシャちゃんの精神攻撃は最凶かもしれない。
『ふぁいとぉ~一発!』なHP回復薬でどうにか持ち直したけど、二度とご免だね!
急に俺が異世界に行った事で里美姉に説明を求められたが、素直に話したら、また腹筋崩壊まで笑われてしまったよ。
ニアもロールド達に心配かけた事と、ミーシャちゃんの事に思い至らなくて「ごめんなさいデスヨ。」と落ち込んだ。
食事の時、ニアが『しょぼぼ~ん』と落ち込んで居たので、
親父が元気?付けようとボケを連発したけど……全て不発弾の粗悪品だったよ。
親父まで落ち込んでウザかった。
そんな訳でとても極寒の中の食事は試練だった。
今回の騒動の収穫と言えば、俺が向こうに行ってる間の時間調整はきちんと行われている事が判った事だな。
もし時間調整が無くなっていたら、両親はもう理由を知っているからいいが、学校とかの対応はヒッキーか、最悪の場合は失踪か行方不明コースしか無かったね。
ニアは明日、学校が終わったら外に遊びに行くと約束して、どうにか気持ちを浮上させてくれた。
擬態の指輪を創っててよかったぜ!
里美姉もニアについて何か考えてるようだったが「明日のお楽しみ~」と言って教えてくれず、さっさと帰ってしまった。
その後ニアは母さんが「今日はママと一緒よ!」と言って拐って行った。
一緒にお風呂に入って、一緒に寝るらしい。
俺よりも母さんの方が甘えられるだろうし全てお任せだ。
親父もウザい位ニアを構いたがっていたが全て拒否られていた。
ニアも親父の扱いを学習したみたいで何よりだ。
朝は母さんと一緒に玄関先まで見送りに来てくれた。
「秀一お兄ちゃん!いってらっしゃいマセ!早く帰って来てデスヨ!」
昨日と違って元気一杯に明るく見送ってくれると安心できる。
さっさと終わらせてニアを迎えに帰らなくちゃな!
学校への行く途中や学校の中でも、魔力を持っている人を見掛けるようになり、会った事も無いのに「おはよう」と挨拶してきたり、会釈だけして通り過ぎたり、中々新鮮だった。
学校に行って、いきものがかりの仕事をしていると、理世達がやって来て「しばらく放課後の活動は免除して貰ったぞ!」と言ってきた。
後で話を聞くと、どうも上の方の人が異世界関係の人間みたいですぐに許可が取れたそうだ。
………いきものがかりって異世界で過ごす為の知識作りだったのか?
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「ただいま、ニア!待たせたな!早速出掛けるぞ!」
「あい!」
ニアは待ち切れ無かったのか、俺が玄関を開けると目の前に居た。
母さんの話だとお昼寝から起きてからずっとソワソワしていたらしい。
本当は、街中にでも連れていってやりたいが、今日は昨日と同じ理世の隠れ家だ。
街中も情報を仕入れに行くけど、効率を考えて休みの日にした。
昨日の理世のお陰で、結界の他に実は空間転移も覚える事が出来ていた。
早速ニアを抱き上げて転移する。
『転移』
森の中のログハウスに着くとニアは「凄いデス!」といって驚いていた。
「おう遅かったな、早速始めよう!終わったら今日は里美の隠れ家にも行くからな!」
どうも駆け足で俺に知識と情報を詰め込むみたいだな。
「里美は向こうで待ってるらしいから急ぐぞ!」
ニアに結界を触れてもらい入れるようにして貰って、俺は右手に封印ブレスレットを嵌めて中に入った。
「俺は武器担当だ。持ってる武器や素材を出すからドンドン見て触って行ってくれ。」
次から次へ亜空間から武器を取り出す。
俺の魔法の鞄みたいだな。
両手剣や片手剣、槍に弓と次々に出てくる。
俺はすぐに思い出せるように携帯で写真を撮り、左手で触っていった。
中には2m以上ある大剣や、刀なんかもあった。大剣は重くてもてないし、刀は2mってどうやって鞘から抜くんだ?というネタ武器だろうと言う物もあった。
素材も、普通の鉄や銅から始まって、刀の玉鋼、アダマンタイト、ヒヒイロカネのようなファンタジー金属まで出て来た。
後は、純銀と純金。これはどこの世界でも共通してお金代わりになるから絶対創れるようになっておけと念を押された。
最後は武具関連。
革鎧から始まってフルプレートメイル。
今時の特殊部隊で使ってような服や防弾、防刃に優れたアンダーとかだ。
後はまた絶対ネタだろうと言う、忍者装束や武士の羽織袴なんかも出てきた。
「一応今の所これ位で大丈夫だろう。こちらに戻って来やすくなってるみたいだから、何かあれば直ぐに用意してやるよ。」
「おう、正直助かるわ。向こうで一番困ったのがこの手の知識だからな。」
「よし、じゃあ里美の所に行こう。あんまり待たせると煩いからな。場所は知らないだろうから最初は俺が連れていくな。」
理世に空間転移で里美姉の隠れ家に連れてきて貰った。
ここも森の中で目の前に緩やかに水が落ちる滝があり、滝壺はちょっとした湖のようになっている。滝壺の周辺が広く開けていてそこにレンガ造りの家があった。
「遅いよ!ずっと待ってたんだから!」
美里姉が家の前で待ち構えていた。
「もう!時間も少ないしちゃっちゃと始めるわね。」
一もニも無く直ぐに始めるようだ。
「お姉ちゃんは魔法を教えてあげます!」
里美姉がそう言うと家を出てからずっと大人しくしていたニアが反応した。
「あい!ニア魔法を覚えたいデス!」
「はい!ニアちゃんいいお返事です。じゃあニアちゃんには私が特別に教えてあげちゃいます!」
「あっ、秀クンは適当に見て覚えてね!」
「なんか俺の扱い酷くね?」
「冗談冗談。でもね秀クンの場合は自分で習うより見て覚えた方が早そうだし、イメージすれば出来るんでしょ?だからニアちゃんのを見ればいいかなって。」
言われてみれば確かにそうかもしれないな。
「まずは基本的な事ね。魔法にはそれぞれ属性が有って人はその属性を持つことによって魔法を使うの。例えば火の属性を持つ人は火の魔法って感じにね。」
「そして、秀クンもだけどニアちゃんの属性は!」
俺達の属性か、俺はきっと全属性だよな。
「…………ありません!」
「おいっ!」
「いやいや本当!嘘のようなホントの事なんだって!」
「じゃあ使えないって事か?」
「もちろん使えます!でも属性が無いのは理由があります。」
「理由とは?」
「秀クンの所がそこまで魔法が作られてないから!」
「は?」
「魔法って便利だからね、いろんな人が使うんだけど、使いすぎると世界がバランスを崩しちゃうんだよ。それで色々な決まり事や制限なんかをその世界の神様が決めちゃうの。」
「そこの所まで秀クンの世界がたどり着いて無いのが原因だね。逆を言うと今なら何でもアリ!状態だからラッキーだよ。」
俺はそんな事は知らないし、そこまで細かい設定っていうか、世界の決まりを創る奴がいなかったんだろう。
「ここの周りは結界を作って秀クンに聞いた、そちらの世界を模して環境を整えてるから、ここで勉強すれば向こうでも使えるよ!」
「でも向こうで攻撃魔法を実際に使う時は注意かな?」
「ん?どう言う事だ?」
「本当に何も制限が無いからね、秀クンの世界で攻撃魔法を使うなら、例えるなら火薬庫で中央のキャンプファイアー囲んで、揮発性のある度数の高いお酒で宴会して酔っ払って、小麦粉ばら蒔いて粉まみれで踊ってる感じ?」
そんな例え話無いから!誰もしないから!
「世界的な制限とかの仕組みが出来ないなら、魔法を使う時に呪文を唱えさせて、その中に制限をコソっと組み入れる位はした方がいいかな。」
「今の所、呪文の必要も無いからな。普通に使える。」
「そうね。でも効率、魔力の軽減を考えるなら呪文があった方がいいのよ。」
「それは俺も思ったな。」
雷魔法を使った時に感じたやつだ。
「ニアちゃんは今の所魔力がそれ程ではないからいいけど、魔力が高くなる程、危険性が高くなるわ。」
「了解した。何か考えてみるよ。」
「それがいいわ……秀クンの黒歴史に残る呪文を期待してるね!」
「黒歴史言うな!……確かに呪文なんて厨二的になりそうだけど!」
「あはははっ、長々と説明しちゃったけど注意事項だからね。それじゃ今度こそ始めるよ!」
「あい!」
さっきまで密かに『?』な感じだったニアが始めると聞いて大きく返事する。
………とても不安だ。
俺も頑張って覚えなきゃいかんな。
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