25 お約束過ぎます
この回で終わりませんでした。
区切りを付けたいので、
続きは夜に更新する予定です。
本日の1話目になります。
もうど阿呆の虎と猫、その尻馬に乗るように好き勝手言ってた奴らは後回しにして改めて蝙蝠人族達と仕切り直しをする。
「大変お見苦しい所をお見せしまして、本当に申し訳なく……」
「いやいや、貴方達とは関係の無い話。お気になさらずに。」
蝙蝠人族は初めから俺に敬意を持って対応してくれてたからな。
あいつらと一緒に考えるなんて出来はしない。
「……昔はもっとのう、近隣の村同士が互いを尊重し助け合ってきたもんじゃがの。ここまでおかしくなっておるとはのう。」
狼人族の村長がそんな事を言う。
「今が違っていると?」
「そうですな、森の様子が変わって村の生活が困難になっておりますので、周りを気遣うという余裕が無くなっていると言った方がいいかもしれません。」
「確かに、自分達を守るのに精一杯じゃな。」
俺がこの村に来た時も歓迎しないと言ってたもんな。
自分達を守る為か………って言うけど助けて欲しい奴があの態度ってのはおかしくね?
「判るような気もするが、助けて貰うのにあの態度は理解に苦しむかな。周りの奴らも好き勝手言ってたし。」
「……まぁ、元々この近辺の村を纏めて居るのが虎人族だしの、その補佐的立場の者が猫人族じゃから他の者達もコヤツらに同調したんじゃろ。」
「なんと言いますか、今の虎人族の長は、思い込んだらこう一直線と言いますか………複雑な事を嫌うと申しますか……」
結局、難しい事を考える頭が無いから、分かりやすい力で従わせようとしたと………脳筋思考だな。
でも「今の」か……なんかありがちな展開かな?バカ息子系の。
「それはもしかして前の村長が怪我とか病気とかして、村長の座を息子に譲ったとか言う話ですか?先代の村長は立派な人物だった的な?」
「さすが御遣い様、よくご存知で、病気で塞ぎがちと聞いております。」
やっぱりお約束キター!って感じだな。
先代が生きてるならそっちと話した方が早そうだ。
周りも同調するなら一気に解決するかもしれないし。
「話は判りました、あいつらの事は別にしてまずはあなた方のお話を聞きましょう。」
「はい、話と申しましても状況はこの村と大差は無く、出来れば同じように救済して頂けないかと。」
とりあえず、食料の確保に病気や怪我の治療。村の周りに居る魔物の間引きって事か。
「判りました。それ位であれば、私でも力になれそうですね。」
「ありがとうございます!私共の村はここから5日程かかりますが、空を行けば数時間もあれば着きますので直ぐにでも!」
今すぐってか!急ぎすぎだろ!切迫してるのは判るけどさ。
そう思っていると、村人が一人家の中に駆け込んできた。
「大変です村長!あの虎人族の者達が!」
ああっ、お約束って言ったらこっちもあるよね、人質的な……。
「「猫人族の娘を拐って行きました!」」
村人の声と俺の声が重なった。
やっぱりお約束だね。
俺はマップを開いて確認する。
ニアを示す青い丸と虎の赤い丸がこの村から猛烈な勢いで離れている。
……猪より早いんでないかい?スゲーな!
追い付けない距離でもないが、ここはお約束に従った方が正解かな?
「流石は御遣い様。全てを見透してらっしゃるのですね。」
あまりにベタ過ぎる展開だっただけです。
「蝙蝠人族の方には大変申し訳ありませんが……………」
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俺達はあの餓鬼の妹を拐って来て、村に向かって走っている。
これで、あいつは慌てて追いかけて来て、すぐに村に来るハズだ。
あいつが村に来さえすれば親父達の病気も治って全て上手く行くハズだ。
この男は人質をとってどうなるか?という事まで考えが至ってないらしい。
仮に村に来ても怒らせた相手がどういう態度になるかも。
やはり脳筋……残念思考である。
虎人族の村の者達以外は走るスピードに付いて行けず、かなり後方を走っている。
しかし、他の奴らは軟弱だぜ!
待ってられんから置いて行くが後数時間の距離をあんな体たらくで走れるのか?
それにこの拐った娘も変わってるぜ。
拐われたニアは別に騒ぎもせずに大人しく男に抱えられて運ばれている。
密かにウエストポーチから出したクッキーを『かりかり』と齧っていた。
かなり余裕である。
手間が省けるが調子が狂うぜ、まったく。
そう思いつつ、いつ追い付かれるかも判らないので、付いて来れない奴を無視する形で自分の村まで走って行った。
どうにか追い付かれる事無く村に着いた男は、門の前に一人の男が立って居るのを見つける。
「ま、まさか親父か⁉」
病気で臥せっている父親が何故か村の入口の所に立っていて驚く。
「親父!起きてて大丈夫なのか?すぐに治せる奴を今呼び寄せてるからよ。それまで安静にして寝てろよ。」
「おい息子よちょっといいか?」
怒りを抑えるような低い口調で息子に呼び掛けると、無言で横に抱えたニアを奪い取った。
その口調と行動に疑問を持っていると…………
「こ、このど阿呆がぁ!!バカ息子っ! 少しは脳ミソ使うことを覚えやがれ!」
先代の村長は一喝して殴り飛ばした。
「何すんだよクソ親父!」
「何するもねぇだろうがアホ息子!お前の今日の行動を聞いて、危うく病気より先に、お前の行動であの世に行きそうになったわ!目の前が真っ暗になるのは初めてだったぞ!」
殴り飛ばした後も893キックを続けて入れてる。
「痛てーよ!親父!俺が何したって言うんだ⁉」
「…………お前、本当に判らんのか?」
全然自分の行動に疑問を持っておらず、全く理解していない事がアホ息子を見て判った。
心底息子の残念加減に呆れ果てていると。
「先代殿、今回のそちらの不始末を判って頂けたでしょうか?」
蝙蝠人族の村長が話しかけてきた。
「ああっ、よっく判った。コイツはダメだわ……おい!ど阿呆供!村の様子を良く見てみろ!」
言われて村の中を見てみると、みんなの顔は明るく、笑顔さえ見せている者もいた。
その様子を見て現村長とお付きの虎人達は呆然としていた。
実は10日程前に6頭の大牙猪が村に侵入して大多数の村人が大怪我をしていた。
その為に一日でも早く助けが必要であった。
「親父、コイツは一体………」
「………お前は御遣い様の妹を拐って、御遣い様を自分の思う通りに命令しようとしたそうだな。何故だ?」
「そりゃ一日でも早くみんなの怪我の治療が必要だったからじゃねぇか。」
「…………普通にお願いするってのはダメだったのか?」
「…………あぁーーーーーー。」
『ポン』と手を叩き「そいつは名案だ!」と呟いている。
秀一の姿を見て侮り、そう言う基本的な事を忘れていたようだ。
先程の集まりでその事に気付いていたら、ここまでグダグダにはならなかっただろう。
ちなみにコイツのINTは32で最初に出会った頃のニアの45より低い。
4歳児に賢さで負ける虎人族の村長。残念である。
「あっ、終わりました?」
秀一が村の中から出てくる。
「お、お前どうやってここに⁉」
「普通に蝙蝠人族の方にお願いして空から。」
「羨ましいデス!ニアもお空飛びたかったデスヨ!」
一連のドタバタを『かりかり』とクッキーを齧って傍観していたニアが羨ましそうに秀一を見ていた。
「村のみんなの怪我や俺の病気まで治して下さった御遣い様をお前呼ばわりするな!」
そう言ってど阿呆な息子を殴って黙らせる。
「あと命拾いしたなアホ息子、お嬢ちゃんの方がお前よりよっぽど強いぞ!」
「なに、馬鹿なこと言ってんだクソ親父!呆けたか?」
「普段から力が全てとか、ど阿呆な事を言ってるんだから相手の力量くらい見極めろ!ど阿呆おバカ息子。」
ついにアホとバカが合体して究極の存在に至ったようだ。
俺は先代村長の言葉を受けてニアに呼びかける。
「ニア!」
目配せしてクイッとアゴで指し示す『やっちゃいなさい!』
「あい!」
俺の指示を受けてニアはウエストポーチに仕舞っていた刀を取り出して近くの木の前に行く。
「あい!」
気合い一線、刀を振り抜き『ふんすー』と体に貯め込めた空気を鼻から出す。
「またつまらぬものを切ってしまったデス!」
刀を使っている場面を見てハマってしまったようだ……某泥棒三代目アニメ。
刀を鞘に納め振り向いた時に後の木がゆっくりと倒れて行った。
それを見て又々呆然とするど阿呆お馬鹿の虎であった。
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「「「「本当に申し訳ありませんでした!」」」」
秀一に土下座をして謝る虎人族の村長とお付きの者達。
やっと自分達のお馬鹿加減を納得したようだ。
「本当に申し訳ない!」
前村長も一緒に謝っている。
「もう結構です。これで近辺の村々の取り纏めは貴方にお任せしても?」
「私がですか?私は引退した身です。他に適役の者が居ると思うのですが。」
そう言って辞退する前村長。
恐らく蝙蝠人族か狼人族の村長の事を言ってるようだ。
「ハッキリと言わせて貰いますと、これ以上あんなのやそれに従う者達に付き合いたくはありません!」
俺がど阿呆虎を見ながら言うと、蝙蝠人族の村長も激しく同意していた。
もちろん無言で『病気が治って元気になったんだから断らんよなぁ?』と威圧するのも忘れない。
そんな中、ど阿呆虎は『?』という感じで理解出来ていない。
前村長はそんな息子を見て納得したようだ。
「判りました。私が再び長に返り咲き、この村や近隣の村々の取り纏めもさせて頂きます。」
前村長が虎人族の長になることで、一連の騒動は終結した。
ちなみに余談ながら、この時レクは狼人族の村でミーシャと『ぷにぷに』戯れていた。
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次で区切りがつきます。





