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異世界の神様に選ばれました。  作者: 松本 彰
第3章 あなたは神を信じますか?
24/68

21 期待が重い

さてさて、朝に「目立たずにとけ込めるように協調性を持って」と思っていた誰かさんは一体どうしたのか?


なんかもう上から下への大騒ぎって感じで、村長達は飛ぶように部屋に駆け込んで来てスライング土下座ならぬフライング土下座をしていたよ。

ジャンピングじゃないよ、正しく3m先から飛んだね!

そして一回転してからの土下座……足は大丈夫か?


「本当に神様の御遣い様とは思わず、大変ご無礼を致して居りました!平にご容赦の程を。」


「いえいえ、そんなに畏まらずとも今まで通りにして頂いて結構ですよ。」


「いえいえいえ、そんな我等を救済して頂ける御遣い様にそんなそんな。」


「いえいえいえいえ、私はただの猫人ですよ?」


「いえいえいえいえいえ、神様の御力を使える方をそんなそんなそんな」


………『いえ』と『そんな』が増え続ける会話なんて不毛だな。


そんなやり取りのがあって、何とか普通の扱いにして貰ったよ。


泊まる家も、村長の家に替わるように言われたが、折角綺麗にしたから今までの所でいいと断ってる。

人の居る所で異空間部屋に出入りするのはマズイしな。


何をしようと受け入れられる雰囲気ではあるんだけどな。


ここにずっと居てくれっても言われるし……この辺りに居る時はって言って誤魔化したけどな。


拠点にする意味ではいいけど、この村のように村に入って色々する事で認められるってのもあるしな。

現時点では何も言えん。


なんかもう期待が大きすぎて重いよ!

それだけ虐げられてドン底の生活を強いられて来たのかも知れないけどさ。


普通の扱いって言ってもさ………。


「御遣い様。宴の準備が出来ましたぜ。」


「ロールド…………」


「みちゅかぃちゃまっ、じゅんびできまちた。」


母親の病気を治した事で俺にとてもなついているが……。


「ミーシャちゃんまで……………」


村長の発言のせいで、俺の呼び名が御遣い様に固定されてしまった。


「御遣い秀一お兄ちゃん行くデスヨ!」


ニアはわざとだな。


「だからその呼び名は止めてくれと何度も言ってるじゃん!」


「いやー、村長がそう呼んでるのに俺らが違う呼び方をするのも何だしな。」


「いや絶対面白がってるだけだ!」


「まぁいいじゃねぇか。早くお前が来ねえと宴が始められねーんだ。急いで来てくれよ。」


呼び名以外は普通なんだけどな。


宴会場となる広場(まぁここも村長の家の前だけどな)に入ると村人達が口々に「御遣い様がいらっしゃったぞ。」と言う訳だ。

居心地悪い。


灯火台キャンプファイヤー 前の少し上の段になってる所(まぁ上座だろう)に案内されて、村長の言葉で宴が始まる。


なんか村長の話だと俺はこの村の救世主で楽園へと導いてくれるらしいぞ!

凄いな俺!言ってないぞ俺!


「あのう……村長、私にはそんな力も楽園などと言う場所も知らないのですが?」


「それは判っておる…おります。ただずっと耐えるしかなかった村の事を考えますとじゃな、少しの夢でもと思いましての。」


「無理せずにいつも通りに話して下さい。」


「御遣い様、お前さんがこの村にずっと居る訳で無い事も、楽園などと在りもせん物を願っとる訳でもないんじゃ。」


「そうなんですか?」


今までの言動から考えるとちょっと信じらないのだが。


「村の者に明日を生きる為のちょっとした希望が欲しいだけじゃ。」


「そうですぜ御遣い様、明日は駄目かもしれん、明後日には皆で……なんて事ばっかり俺達は考えてた。でも今は、沢山の食料!怪我や病気で苦しんでた奴等も元気になった!明日はもっと良くなるかもしれねぇって希望を持てるようになった。」


「ロールドの言う通りじゃな。御遣い様は力を持っておらんと言われるが儂らでは持ちようも無かった物を頂いた。それは嘘偽り無く御遣い様の持っておられる力のお陰じゃ。」


ロールドが俺と村長の会話に混ざって来て、二人して俺を持ち上げてくるが、これ以上望まないなんて言いつつ『期待しています!』って副音声が聞こえてくるようだ。

俺がひねくれてるせいか?


そんな事を思っている時『てけてけてけっ』とミーシャちゃんが俺に駆け寄って来た。


「あにょねあにょね、みちゅかいちゃま、これとってもおいちぃの!みぃちゃしあわちぇ。」


ニアに貰ったのかミーシャの両手にはクッキーが握られていた。


「おかぁしゃんもなおってうれちぃの、ありがとぉ」


うん!これは素直に嬉しいな!

胡散臭いおっさん達とは全然違うぜ!


この笑顔は護ってやりたくなるな!

チッ……ニアもそうだが、「いきものがかり」は人間の世話は対象外なんだけどな。

獣人達はケモノじゃない、俺達のような人間ではないが人類の仲間だ。

動物に見えるかもしれんが間違っちゃいけない!

こっちの人類の定義を向こうに当てはめちゃダメだ。


『そんなに深く考える事でしょうか?』


突然マニュが思考に割り込んで来る。


(なにっ?)


『考え違いをされているようですが、日本では「いきものがかり」でもこちらでは違います。あなた様は神様です。護りたいモノを護って何が悪いのですか?あなた様は「いきものががり」に拘りすぎておられるかと。』


(あっ)


結局、見た目を気にしていたのは俺って事か!

獣人を人と言いつつ動物に当て嵌めようとして「いきものがかり」を言い訳にして。

大馬鹿だな、何を考えてるんだか。


(一番の屈辱はマニュに諭される事だな!)


『私はいつでも最善をナビするだけでございます。』


(一応感謝しておいてやる。悔しいがな!)


俺はミーシャの頭を優しく撫でながら村長達に告げる。


「この笑顔は護ってやらなきゃ駄目だな!俺に出来る事だけだがやってみるさ。」


「「有難うございます。」」


「みちゅかいちゃま、ありがとぉ!」


俺の言葉を聞いて感謝してくる。


「まぁ、感謝は俺じゃ無く神様にしてくれ!俺は責任は持たん!」


しっかりと逃げ道を用意する事を忘れない。

俺ってヘタレだよな~。


「お前さんらしい台詞だな。」


ロールドが苦笑い気味に答えるのだった。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


翌朝、俺達はゴブリンの巣へ向かう事にした。

結局の所、何かをしようにも思い付か無かったので最初から予定していた事をやろうと思ったのだ。


ゴブリンの巣を殲滅するのも一応村の為になるしな。


異空間部屋から直接、昨日歩いた所まで行ってもいいが、村から出発したという建前が欲しかったので村を出てから再度、異空間部屋経由で移動する予定だ。


家を出るとロールド一家が居た。


「お早うさん、お前らまた狩りに行くのか?」


「狩りは狩りだがゴブリンだな。巣を何とかする。」


「流石にお前らだけじゃ数が捌けねぇだろう⁉人数集めるか?」


「いや大丈夫だ。前にも別の所を潰した事があるからな。2~3日したら戻る。」


本当は今日一日で終わらせるつもりだけど、こちらの移動手段を知られたくないしな。

久しぶりに異空間部屋でまったりと過ごそう。

昨日のマニュの指摘でニアにも謝らなきゃならんからな。

謝罪代わりにとっびきり美味しい物を食べさせてやろう。


「御遣い様達なら大丈夫だと思いますが気を付けで下さいね。」


「みちゅかいちゃま!にあおねぇちゃ!きぉちゅけてねぇ。」


ミシュレさんとミーシャちゃんも気遣ってくれる。


ミーシャちゃんの頭を撫でて、飴を沢山あげる。


「おう!任せとけ!ミーシャちゃんがこれを食べてる間に終わらせて来るよ」


「がんばってくだちゃぃ!」


「それじゃあ行ってくる!」



村を出発して村から見えない位置に来て、異空間部屋に入る。

すぐに出入口の場所を昨日歩いた所に替えてから再度、異空間部屋を出る。

残りの距離を考えるとお昼頃には到着しそうだ。


昨日と同じように魔物をサクサク狩りながら進む。

今日はゴブリンの巣に近づいている為かゴブリンにも結構遭遇する。

コイツらは魔石以外は必要無いので、レクが美味しく?吸収した。


今回も前と同じように、足止め用の柵を創って攻撃する。

前回の反省を含めて今回は柵の高さを変える予定だ。

正確な数は判らないが、500匹以下であればニアに任せようと思っている。

ニアならまだレベルアップするのに丁度いい相手だしな。


500匹以上居ればみんなで狩る予定だ。

1000匹のゴブリン相手で俺は懲りた。

簡単でももう俺はやりたくない。



そうしてゴブリンの巣が見える所まで来てから、見つからないようにコッソリと巣の様子を伺う。


数は思ったより少なく300匹位か。

マニュの言葉を信じるなら平均位の数だな。

これならニアに任せて大丈夫そうだと思った時、巣の中心の所に見た事の無い魔物を見付けた。


最初はゴブリンに狩られた魔物かと思ったが違うようだ。

ソイツはゴブリン達に指示を出して動かしているようだ。




ソイツは豚ヅラの………オークだった。

お読み頂き有難うございます。

良かったらブックマークを付けて頂けると嬉しいデス。


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