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異世界の神様に選ばれました。  作者: 松本 彰
第3章 あなたは神を信じますか?
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18 狼人族の村

秀一達の視点に戻ります。


前話「おかしな二人」の門番の視点と比べると面白いかもしれません。

ようやく新たな村に着いた。


村の作りはこの前の村とあまり変わらない感じで、やはり素人が在り合わせの材料を使って建てましたというような家と、村を囲む柵のような防御塀(壁とは言えない)があった。


この村は狼人族の村で、村の入り口には二足歩行の狼が防具を着て立っている。

恐らく門番をしているのだろう。


門番を見る限りじゃ歓迎されてない事はすぐに判るんだけどね。

威嚇をしているのか俺達に殺気をぶつけて来てるし。


殺気と言っても向かってくる大牙猪の殺気に比べると生温い感覚なんだけどな、ニアも『?』になってるし。


「あそこに居るおじちゃんお腹痛いデスカ?変な顔してこっちを見てイマス。」


お腹が痛いと言うよりも空いているようにしか見ないが……。

やはりこの村も食料が不足しているのだろう。



こうしていても始まらないので門番に話しかける。


「私達は旅をしている兄妹です。この村で少し休ませて貰えませんか?」


門番は凄く嫌そうな顔をしている。

それはもう「ちゃんと空気を読め!」と喋らずとも判る位だ。

しかし俺も空気を読む訳にはいかないから、マニュで磨いたスルー能力を最大限に発揮して(発揮は出来てない)エアブレイカーで臨む。


門番が俺達に何か言おうとした時に(追い返す言葉だろうが)頭の中でアラート音が鳴り、マップが自動表示される。

空気を読まないヤツ(大牙猪)だ。


自分の事はでっかい棚の一番上に乗せてそんな事を考える。

猪のステータスを見る限りじゃ普通の猪よりちょっと強い感じだ。

今ならニア一人でも戦えるだろう。


「ニア、右手後方から猪!あと2分位。」


「あい!」


ニアは俺が決して無理な攻撃指示をしないと判っているので、すぐに刀を抜いて猪に対応すべく構える。


門番はそれを見てまた俺を睨み付けている。


いやいや、この位の猪なんてニアなら『へっちゃらぽんぽん』ですよ。逆に手を出したら拗ねちゃう位ですよ?


そんな門番をスルーする事にしたら、向かってくる猪が見えた。


あっ?今ちょっとニアはガッカリしてる。

門番は猪を見て驚いた顔をして固まってる。


あれ?なんか二人の対応間違って無いかい?


ニアは猪を引き付けるだけ引き付けてさっと横に避ける。

すれ違い様に刀を首めがけて突き入れる。

勢いの付いた猪に刺した刀を持っていかれないように、刀を振り落とし、首を切り裂いて自分の方に刀を引く。


勢いの付いた猪はそのまま首から血を出して数メートル先まで走ってから倒れた。


ほらやっぱり今のニアには『へっちゃらぽんぽん』ですよ。

だからその驚愕の表情はなんですか?

……もしかしてやっちゃった?やっちゃったのか?

ここはもう誤魔化すしかないよな⁉


「すみません、魔石以外の物は私達には必要ありませんので……手土産って事で差し上げますよ?だからちょっと村に入れて貰えませんかね?」


俺がそう言うが納得が出来ないのか更に目的を聞いてくる。


「私達はこの世界の神様のために、私は使徒として神様に対してみんなが信仰心を持つように各地を回っています。」


門番はいかにも胡散臭そうにこちらを見てる。

いや、何やら怒ってるようにも見えるな……そんなに嫌いか⁉

何で可哀想な人を見る目をしてこっちを見てる⁉

そんな目でこっち見んな!



門番は少し考えてから村長に相談してくると村の中に入って行った。

騒ぎを聞き付けた村人達の視線が痛いぜ。

ニアと二人(レクは念のため異空間部屋に待機)珍獣のような扱いで見られる視線に耐えて居ると、さっきの門番が数人の男達と一人の年老いた狼人(老人)を連れて来た。


「お主等は見た所、猫人族の者のようじゃが、こんな何も無い村に何の用じゃ?」


門番に言った俺の言葉は受け入れて貰えなかったようだ。


「私達、私は神様の教えを広める為に旅をしています。どうかこの村に滞在の許可を」


………だからそんな目でこっち見んなよ!

まぁ街中で突然『貴方の為に神に祈らせて下さい』って言われたら全力で逃げるけどさ!


判ってるんだよ!判ってるけど社畜はブラックな会社の指示に逆らえないんだよ⁉

社会問題化されてても減らない所か増えてるんだよ!

……『あなたは今から神様ですって』どれだけだよ。

等と思いながらも笑顔で誤魔化す。(心は涙)


「まぁよい。余計な事だけはしてくれるなよ。それであの大牙猪じゃが本当に儂らが貰っていいのか?」


「ええ、今の所食料には困ってませんので魔石さえ頂ければ。」


「食料に困って無いと言うことは、その鞄は魔法の鞄と言う訳かの?見た目だけの鞄ではあるまい。」


「そんなもんです。」


営業用スマイルが眩しいぜ!バイト位しか働いた事無いけど。


「まぁええじゃろ。さっき言った事を忘れんようにな。歓迎は出来んが村に入っても構わんよ。ロールド客人を案内してやれ。」


やっとお許しが出たようだ。

猪は一緒に来ていた男達によって運ばれて行った。

ずっと俺達を相手していた門番(ロールドと言うらしい)が案内してくれるようだ。

……入り口の見張りはいいのか?



ロールドの後を付いて行きながら村人達を見渡す。


村人は遠巻きに俺達の方を見ている者と、運ばれる猪に歓声を上げて周りに集まって一緒に歩いている者とに別れていた。


改めて前を行くロールドを見る。

身長180cm位、顔は完全に犬顔……狼か、焦げ茶色の毛並みで人間と言うより防具を着せられた狼だな。

二足歩行してなければ普通に狼と間違う自信がある。

毛で覆われているが手も人間と変わり無いから武器も持てる。

目の色は顔の深い彫りで見えづらいが黒色だ。


周りの村人も同じような感じだな。

ニアのように耳としっぽ以外は、殆ど人間と同じというような姿のヤツは見える限りでは居ない。

この村の人間は狼寄りなんだろう。



周りを見渡しながらそんな事を考えていると、ロールドが俺に話し掛けて来る。


「はっきり言ってお前達は胡散臭いが、大牙猪は正直に言ってとても助かる。」


胡散臭いってはっきり言いやがって。

俺も正直そう思うけどな!


「……本当に何も無い村だ。最近森の様子がおかしくて危険な魔物達が増えた。今は食料にも事欠く有り様だ。」


「そうなのですか?森には初めて入ったので前がどうだったかなんて判かりませんでした。」


この世界自体が判らん事だらけだけどな!


「そんな時に大牙猪の肉は有難い……が神様だの何だのってのは理解出来ん。」


デスヨネー。


「この世界は神様に寄って成り立っているんですよ。だから神様に感謝してこの世界の事をお願いしないといけないのです。」


「それが良く判らん!神様ってヤツは俺達に何をしてくれたって言うんだ⁉感謝しなきゃならん事などされた事も無い。」


うん。『やりたい放題に好き放題のフルコースでお願いします!』でお腹一杯になるまで頑張ったみたいですよ。

そこに住む生き物達の迷惑は考えずに。


「感謝されたいなら、今の俺達の事をどうにかしやがれ!って言いたいわ!」


「ガンバリマス」


「ん?なにか言ったか?」


「イエイエー、ナンデモナイデスヨ」


「ふん、まぁいい。ここがお前達の泊まる家だ。暫く使って無いから埃っぽいが掃除すれば、雨風が凌げる分、野宿よりマシだろう。」


「ありがとうございます。」


「喰う物には困って無いと言ってたから飯は自分達で好きにしてくれ。何かあれば俺の家はそこだから訪ねてくれ。今日は夜中まで門の前に居る。」


目の前の家がロールドの家らしい。


「あと長老の家……村長な。村の真ん中の大きな家がそうだ。勝手に変な事を始める前に村長の許可を得ろよ。」


変な事をするの確定事項なんだ………。


「井戸はあそこにある。他に何か聞きたい事は?」


「そうですね。今の所別になにも……そう言えばここら辺で食料に出来る魔物って何が?」


ここら辺と言うか、何が食べれるのかも魚以外は知らんがな。


「食料があるって言っといて今から狩るのかよ⁉さっきの大牙猪もそうだし、踊るキノコも毒はあるが、きちんと処理をすれば食える。」

「あっ、ゴブリンは駄目だな、邪魔なだけだ。昔は鬼ウサギってのが居たんだがみんなゴブリンが喰っちまいやがった。」


………食べれるんだ、踊るキノコ。


「ここいらには滅多に出ないが、森犬とか一角熊とかもお前らならイケるだろう。」


い、犬⁉あの犬もかよ!共食いか⁉って違う狼だったな。

食べる国もあるから、絶対無いって事は無いけどちょっとな。

一角熊ってのは知らないな、気が向いたらマップで調べよう。


「判りました。今の所は問題ありませんが、いざとなったら狩って来る事にします。」


「おう!………こう言った事を言える義理じゃないが、狩れるんなら狩って村人にも分けてくれ。」


「判りました。考えておきます。」


そう言ってロールドは村の入り口に戻って行った。



俺達に与えられた家を見ると本当に全然使って無かったのか、廃墟と言ってもいいような家だった。


「雨風が凌げるって絶対雨漏りするよな。」


「……あい」


さっきまで黙って付いて来ていたニアも家を見てビックリしてる。

ニアが河原の近くの木の洞で、寝ていた方が俺にはビックリだったけどな。


「一応、形だけでも掃除……そうだ!」


寝る所はぶっちゃけ異空間部屋を使えば問題無いが、村人にはこの家で寝泊まりしてると思って貰わなければならない。

掃除をするにも道具が見当たらないし面倒だ。

そこで思い付いたのがレクだ。

異空間部屋を繋ぎ、留守番をしているレクを呼び出す。


「レク!済まないがこの家のゴミや埃なんかを吸収して綺麗にしてくれないか?」


レクは判ったと言わんばかりに『ぷよんぷよん』と揺れて家の中で巨大化し始める。

体が部屋一杯になってから消化吸収を始める。

家の中が綺麗になるまでなんて一瞬の事だ。


本当に寝泊まりする訳じゃないから適当でもいいんだけど、無駄な労力を使うよりはレクに任せて綺麗にした方がいい。


夜になったら外から見えないように、ちゃんと戸締りして念のために布団で眠っているように、見せかければ居なくても大丈夫だろう。


さて、何かするなら村長に相談しろって事だが、狩りなら大丈夫だとロールドが言ってたな。

幸い夜中までロールドが門番みたいだし、村人に点数稼ぎって事で狩りに行くか!

ゴブリン(イ○シャル G)の巣を確認もしたいしな。


「ニア!レク!今からこの辺の魔物達を狩りに行こうか?」


「あい!」


ニアは嬉しそうにしっぽを『ぶんぶん』振り、レクも『ぴょんこぴょんこ』と器用に跳び跳ね喜んでいた。



どうなるかは判らないがやれるだけ頑張ってみよう!

お読み頂き有難うございます。

良かったらブックマークを付けて頂けると嬉しいデス。

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