1 マニュアル
「なんじゃそりゃっっ!!」
そんな心からの叫びと共に目覚める。
見渡せば、見馴れた自分の部屋、普通にベットに寝ていて異世界な感じは全く無い。
窓の方を見ると夜明け前でまだ暗く、星が見えるが外も何も変わった様子はみられない。
普通の学生はまだ寝ている時間、ましては家から一番近いというだけで、少しでも楽する為に選んだ学校なのだが、いきものがかりなコイツは丁度起きる位の時間帯だ。
「何でこうなったし。」
いや家が近い為に選ばれてしまったのだが…いきものがかり。
「結局、夢オチってヤツか。」
まぁ、現実はそんなにファンタジーな事は無く……。
自分の左手にはソフトボール大のガラス玉?これは水晶か?と右手にはA3サイズのハードカバーな洋書っぽい、何かファンタジーっぽい魔導書ってカンジの本を持っているが気のせいである。
気のせいなんだ、気のせいだよね?
そんな事を考えていたら、左手の水晶が手の中に吸い込まれるように消え、右手の本が中空に浮かび、光の粒になって消えてしまったようだか、気のせいである。
「………」
「さて、学校に行く準備をしないと間に合わないな!大変だな、いきものがかり!」
夢オチなのでスルーする方向のようだ。
『時間的余裕はあまり在りませんので現実逃避と妄想は程々に』
突然、何処からか聞こえてきた男の声。中々失礼な物言いである。
「現実は妄想の為にあり逃避は夢の中にある!」
思わず突っ込んでいるが、それでいいのか?
『はっはっは、流石は神様が選ばれた神様。意味が判りません。』
声がした辺りを見ると、再び光の粒が現れて人の形になっていく。
光の粒が集まり一際明るくなった後に現れたのは、燕尾服を着た身長170センチ位で、白髪というか銀髪が混じって灰色ががった髪を後ろに流し、オールバックっぽい髪型に少し垂れ目がちな目に鼻の下に髭を生やし、左側に片眼鏡 という如何にも胡散臭っ……んんっ、如何にも執事ってカンジの老人が現れた。
「今日は晴れるといいな、雨が降ると世話が大変なんだよ。」
見なかった事にしたいらしい。
「そんなだから時間が無くなって、説明が疎かになるのですよ。」
「いや、アレは俺のせいじゃないし。無いよね?無実だよ。無実だよね?」
「犯人は必ずそう言う物言いをされる。」
「私はやってない〜無実だ〜、って違うわっ!」
「お初にお目にかかります。この度、説明とナビゲーションの役を賜わりました、マニュアルと申します。宜しく御願い申し上げます。」
「名前がマンマだな、説明書って事か分かりやすいな。ってか俺の話はスルーかよ。」
「私の事はマニュちゃんとお呼び下さい、間違ってもマ○ュフェストのマニュではありませんので。」
「一気に嘘臭くて信じられ無くなるな!あと伏せれてないし!」
「本当に話が進みませんので、反対の為の反対と、先送りは止めていただきたい。あと、何度も言葉を繰り返すのは正直、ウザくてキモいです。」
「〜〜〜〜〜っつ!」
(堪えろ俺っ!ここでツッコめば益々グダクダになる。)
「…それで神様とはどういう事だ?」
「そこからですか、全く話になりませんな。」
「本人確認されたのみで、後はお前に聞けとしか言われていない。分かるように細かく詳細に噛み砕いて説明してくれ。」
「そうですか、了解いたしました。それでは、秀一様の祖先であるミドリムシさんの冒険から…」
「関係あるんかいっ!」
「関係あるかと聞かれると、全くありませんが愛と涙の感動巨編ですので。」
ツッこま無くてもグダクダである。
果たしてミドリムシの冒険に愛やら涙はあるのか?と思いつつもグッと堪える。Part2
「冗談はこれ位にして。秀一様はエンデフィールという世界の神様に選ばれました。」
「神様に選ばれて異世界に行くのではなく、異世界の神様に選ばれたと?」
「普通、自分の事を様付けはしません。その場合神に選ばれたとなりますので、『(神に)選ばれた神様』の神様は貴方になります。」
「言葉って難しいな……。」
「結構頭のいい学校に通われてるのに、嘆かわしい。」
「うるさいわ!ってか普通あり得んだろう、異世界転生やら召喚やらでチートで無双でハーレムやら全てぶっ飛ばしていきなり神様とか。」
普通、異世界転生とか召喚もあり得ない。
「そう言う厨二的発想……痛いです。」
「自分の存在否定するな!」
「まぁいいでしょう。エンデフィールという世界は特殊な環境に有りまして、今現在、召喚とか転生は出来ないのです。」
「特殊な環境ってのは?」
「まずは神と世界の成り立ちから言いますと、神は世界を創り管理をし、その世界に住まう者達の信仰心やら世界の発展、豊かさ等を自分の力とします。」
「我を崇め讃えよ、世界はそれで救われる。ってか。」
「世界が乱れ、荒廃してしまうと自分の力を得る処か力を失ってしまう事もありますし、最悪の場合は世界が崩壊し、世界の規模に比例したペナルティで神様の身に痛み等のリバウンドがあるので、しっかりと管理する必要があるのです。」
「現在エンデフィールは崩壊寸前で神様への信仰心はマイナス上限突破ですね。」
「そんな世界を俺に振るな!」
「だってほら、誰でも痛い思いってしたくないじゃないですか」
「幸いエンデフィールは生まれて間もない世界ですので崩壊したら、ちょこっとタンスの角に足の指を打つ位の痛みですね。」
「地味に痛いな・・・でもそれ位ならダメ元でやってもいいか」
「そうですな、エンデフィールに住む数億の生き物達の命と・・・あなた様でしたらプチッと」
「重いよ、重すぎるって、それに俺がプチッってなんだ⁉俺にプチッってやれってか?」
「いえいえ、あなた様に起こるペナルティーの擬音でございます。」
「いやいやおかしいだろう⁉普通はコッだろう。」
「生まれながらの神様と人間辞めた神様との差?ですかな。」
「人間辞めてねえし!」
(なんか、色々と疲れるが要約すると崩壊寸前の世界の神様やって失敗したら俺も死ぬって事か、そもそもなんで俺なんだ?)
「そもそもどういう基準で俺が選ばれたんだ?」
「『神様的フィーリング?』だったかと。」
(つまり適当に選んだんだ。)
「はぁ~っ、なんかもう朝から疲れたわ・・」
「慣れれば大丈夫ですよ。それでは早速行く?行っちゃう?」
「その言葉使いキモイわっ!」
「それでは出発っ!」
「お前も人の話を聞けーーーーーっ!」
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