15 ニアは頑張ります
ニアは一生懸命、健気に頑張っています。
でも………
翌日、朝食を終えて一息着いた所で、秀一はもう一つ考えた事を始める………それは。
「……昨日は……えっと…借りの……」
「狩りだな。」
「………あぃ」
ニアの読み書きの勉強である。
まだ早いかもしれないし、この世界を生きる為なら必要無いかもしれない。
しかし、レベルがありINTがある限り無駄ではないと俺は思ってる。
水晶でこちらの文字の情報を調べた所、何故か日本語だった。
考えてみれば俺は日本語でしか話してないしな。
異世界の不思議で自動翻訳とかされてるかと思ってたんだけどな。
これも俺がこの世界の神になった影響かもしれないが、俺が困って無いから問題無い。
ニアが喋る時に片言になるのも気になったっていうのもある。
日本でも遊びにまぜて母親とかが教え始める頃だろ?
俺もそうだったしな。
INTが上がればいろんな事が出来るハズだ。
俺とかレクは水晶の創造能力や魔法を使う事によりINTやMPが上がっていた。DEXもか。
逆に考えるとINTが最初から高ければ魔法とかの修得も早いのではないか?と思ったのだ。
そう言う考えの下、外に出る前の一時間程、勉強する事にした。
これも立派なレベル上げの一環だ。
日記という形でニアに書いてもらい。
俺が漢字に直してやってからニアがそれを読んで、漢字を書くというのを繰り返してる。
昔俺が読んだ子供用の本なんかを創ってやってもいいかと思ってるが、こちらの世界と違う話なので正直微妙じゃないか?
なんて事もあって、まだ実行はしていない。
今日から始めた事なので結果はまだ先だが、とりあえずニアが楽しんでるから良しとしよう。
勉強時間も終わってご褒美のお菓子を食べた後、ニアに昨日の場所へ空間を繋げてもらう。
これも慣れが必要だと思っているからだ。
無事に昨日進んだ場所に繋がって村に向けて歩き出す。
魔物が近付いて来るまでニアと手を繋いで歩くのは昨日と同じだ。
今日の最初の魔物はお馴染みの踊るキノコだ。
なんか今回は6匹でキレッキレのダンスを踊ってる。
相変わらずの謎キノコ達だ。
レクのレベルが上がったお陰で麻痺毒の回復薬が麻痺毒耐性薬にも使えるようになった。
麻痺毒ボールの時と一緒で、飲んでから5分位で効果が現れるのは変わらない。
キノコは麻痺毒と近寄った時に絡みつこうとする、触手の手さえ気を付ければ問題無い。
ニアの力では石を遠くまで投げる事は出来ないので薬を飲んで槍で突進だ。
素早く槍で軽く傷つけて後ろに下がる。
「あい!出来マシタ。」
あっ………少しだけ言葉が滑らかに……うちの子天才⁉
なんて兄バカな事を考えつつ、レクと踊るキノコ達を倒して行く。
これはもう簡単な作業と言った感じだ。
今日から俺とレクで魔物の分配も変えるようにした。
今までは魔石だけで、死骸はレクがレベルアップの為に吸収していたが、村や街に行くようになれば、素材として魔物を確保していた方がいいと思ったためだ。
具体的には魔石は全部俺が貰って、魔物の死骸は俺が倒した物を残し、レクが倒した物はレクが吸収してレベルアップする。
ニアが単独で狩れるようになったら改めて考えよう。
今回は4匹を残し2匹がレクだ。
レクには伝えているので、既に吸収済みだ。
会話は出来ないが、何気にレクは賢い。こちらの言葉は全部理解出来ているようだ。
少しづつでもニアのレベルが上がっているのと戦闘方法に慣れてきたので、結構サクサクと村に向けての旅は進んでいる。
間に『旅行って何よ?』と言われそうな、異空間部屋でのお昼ご飯を済ませ、狩りは続く。
出て来るのもお馴染みの魔物達なのでニアに調度いい。
そんな調子で進んでいると、これもお馴染みのアラートが鳴り、マップが自動表示される。
(これも一種のフラグだな。)
そんな事を考えつつステータスチェック。
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名前 サイレントマーモット 年齢 不明
種族 不明
性別 不明
JOB 不定形の魔物
LV 14
HP 180/200
MP 200/400
STR 60 DEF 60 AGI 50
EVA 100 INT 60 DEX 250
MAT 100 MDF 60 LUK 40
【スキル】
不可視の擬態
【称号】
惑わすモノ
【備考】
何にでも擬態が出来て姿が判りにくい。
身長不明、体重不明。
マーモットと名付けられているが、
最初に発見された時に擬態していた姿で付けられた。
謎だらけの不思議魔物。
擬態しているモノの弱点を継承する。
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結構レベル高いな、不思議魔物ってなんだよ!
擬態しているから何か判らないって………。
弱点は擬態しているヤツと同じって事か?
倒したら形が変わってびっくりってヤツだな。
レクとニアに情報を伝えて警戒させる。
特にレクにはニアの護りを優先させている。
武器を構えて周囲を警戒しながら進んでいるが全然判らない。
マップをみる限り近付いているのだが、それらしいモノが判らないのだ。
秀一はマップを一番至近距離での表示に変えて目の前に映す。
見えないならマップでの表示で見ればと、ゲームのスコープみたいな使い方が出来ないかと考えたのだ。
マップ越しに周囲を見渡す。
木の所にステータス表示がされているが木しか見えない。
何処だ?さらに用心深く木を見つめ敵を探す。
木の所で何か動く気配はなく、まったく判らない。
「………もしかしなくても木か?」
どんなに探しても木しかない。
何にでも擬態出来るのであれば木になっていてもおかしくない。
木ってどこが弱点よ?切り倒せばいいのか?
トレントとかだったら、顔に見える所が弱点って異世界モノとかで言われるが、どう見てもただの木だ。
「ニア!あそこの木に槍を刺してみ?」
「あい?」
臨戦態勢で槍を構えていたニアに突然言ったので『?』になっていた。
しかし、判らないながらも、素直に木に槍を突き刺す。
ちょっと揺れた気がするな。
やっぱりコイツか?
刺した時に少し動いた程度で、あとは何も変化がない。
とりあえず危険性は無いっぽいが、マップでは敵の判定になっているので斬り倒す事にした。
刀を抜き、思いっきり振り抜く。
刀の感触も木を斬る感覚で本当にこれが魔物か?と思う。
斬り倒した木を注意深く観察する。
徐々に木が変形していく。
「やっぱりコイツだったんだ……一体何がしたかったんだろう?」
「あい?」
レベルの割りに攻撃されるでもなくあっさりと倒される。
この何とも言えない……何て言うかアレだ。
わけわからん!
ニアも良く判ってないみたいだ。
こうなって来るとちょっとマップ機能を疑ってしまう。
はっきり言ってステータス倒れな魔物ばかりだ。
強いハズなのにあっさりと倒せ、楽なハズなのに怪我したり。
(マニュ!最初にマップを創った時にどういう基準にしたんだ?)
『初めてこの世界を創られた神様達の夢と希望の合言葉?』
(わけわからんわ!意味不明だ!)
『最初に創られた時の記録を元にしていますので、黒塗りされたり、改竄したり、破棄されたかも?前任者の行った事ですので。』
(どこかの国会答弁かよ!)
『最初に創った時にLVとかは目安程度にと言ったハズですが、その後の追加項目はあなた様が創られたので私としてはなんとも。』
(そう言えば言ってたな。あまりにもマニュすぎて忘れてたわ。)
『そんな、凄い!カッコいい!素敵すぎる!なんてそんな事ありますよ。』
(マニュすぎるの一言で良くそんな妄言吐けるな……)
『とりあえずマップ機能は、持ち帰りまして良く検討した上に、前向きに善処したいと考えた上で、結論を討議すべきではないかと。』
(だからどこぞの国の政治家みたいな事言うなや!やる気ないよね⁉)
『使うのも、使えるのもあなた様だけですので。因みに創るのもあなた様です。』
(文句があるなら自分で何とかしろ!ってか)
『がんばれー!』
意味の無い疲れる会話をしてる内に、サイレントマーモットの姿が完全に変わる。
なんと言うか……粘液のようなドロドロとしたスライム?
レクを見る限りこの世界のスライムっぽくはないから粘菌か?
気持ち悪いからさっさと収納したいが、擬態能力は使えそうなので、もの凄く嫌だが左手で触っておこう。
「これは後でレクが吸収な!」
あわよくばレクにも擬態能力が付けばと思ってる。
レクは嫌そうに『ぶるんぶるん』と体を器用に捻らせてる。
俺も嫌だがレクも嫌らしい。
何か疲れてやる気が失せたので今日は早めに終わる事にした。
ニアは頑張ってるのにスマン!
おいしいご飯とお菓子を創ってやるから許してくれ。
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