酷くしないで
「はい、冷たいお茶」
「あぁ、ありがと」
鎌李と遥が脱衣所から出たのはほんの数秒前のこと
鎌李は遥からお茶を受け取り、いっきに飲み干しす。その隣では、遥も数回に分けてすぐに飲み干した。二人ともまだ熱は冷めきっていないようだ
「ふぅ、まだ暑いな。誘った俺が言うのもなんだけど、さすがにあれはヤバかったな」
「う、うん。私も、小さい頃みたいに入れるかな?って思ったんだけど、やっぱり恥ずかしいね」
二人は頬を少し赤く染めながらも、笑顔で話す
「ねぇ、鎌李が私と付き合った理由って、聞いてもいいかな?」
「ん?そんなの、好きだからに決まってるだろ。バカか、お前」
「バカじゃないし。英語のテストは鎌李より点数良いもん」
「英語だけ、だろ?それ以外は俺より下、しかも数学なんて欠点ギリギリじゃねえか。ちゃんと提出物は出しとけよ?」
イジワルな笑みで鎌李はそういうと、遥はプイッとそっぽを向いてしまった
「でも、俺が教えた簡単な所はちゃんと覚えてたみたいだな。ルートとか累乗とか」
「にゅぅ・・・・バカ」
鎌李に頭を撫でられ、遥は嬉しそうに小さく罵倒する
「お、もう十時か。そろそろ寝るか?」
「うん、私、ちょっと眠い、かも」
コテン、と鎌李の肩にもたれ掛かるように眠ってしまった
「ったく、晩飯前にあれだけ寝てたのにまだ寝るか・・・・遥をベッドまで運んで俺も寝よ」
鎌李は遥を抱き上げ、二階にある遥の部屋まで運び込んだ
どこに寝ればいいかわからず、鎌李は遥と同じベッドで寝ることにした
◇
翌朝、鎌李の目が覚めた頃には、まだ遥は眠っていた
「ん、今何時だ?・・・・6時前、か。なんか変に早起きしたな」
鎌李が下の階に降りるが、誰も起きていないようで、誰もいなかった
少しソファーに座っていると、トントンと誰かが階段を降りて来る音が聞こえてきた
「あ、鎌李くん。おはよう、早起きだね」
「俺もさっき起きたばかりだ。霞さんこそ早起きだな」
霞は鎌李の隣に座る。まだ眠そうな所を見るに、本当にさっき起きたばかりなのだろう
「ごめん、ちょっと肩借りるね。まだ眠くて」
鎌李の許可をまたず、霞は鎌李の肩に頭を置いた
「もし、そのまま寝るんだったら。俺が霞さんに何をしても文句言うなよ?」
「ん~、頑張る」
今にも寝てしまいそうな霞に、鎌李は手に持っていた携帯で蚊の羽音を霞の耳元で聞かせる
すると、霞はゆっくりと目を覚ましていく
「もぉ、その地味な嫌がらせやめてよぉ」
「遥と違って霞さんには地味な嫌がらせが一番効くからな。でも、まさか本当にこれで起きるとは思わなかった」
鎌李がクスクスと笑うと、霞は鎌李の肩を力無く叩く
そして、また誰かが階段を降りてきたようだ
「おぉ、鎌李、霞も早いな」
「おはようございまス。俺が何か朝食でも作りましょうか?」
「ふぅん、鎌李くんってば、私には何もしてくれないのに、お父さんには気を使うんだ」
霞は鎌李の首を抱いて顔を近付けるが、鎌李は表情を変えずに霞の腰に手を回して抱き寄せた
「えっ!?」
「ん?こうして欲しかったんじゃないのか?キスくらいなら良いが、その代わりに遥とはそれ以上の事をしないと俺の気が済まないようになっちまうぞ?」
鎌李は霞と額を合わせて、小さな声でそう言うと、霞は顔を赤くして、少しずつ鎌李から離れていく
「ははは、鎌李はしばらく見ない間に見た目だけじゃなく、イタズラの方も成長したんだな。霞と遥が鎌李のおもちゃにならないか心配だよ」
「確かに、霞さんと遥をいじるのは楽しいっスよ。でも、いくら俺でも二人が本気で嫌がってたら、もうそれ以上はしないっスよ?」
そう言って鎌李は立ち上がり、台所へ向かう
「ちょっと暇なんで、朝飯作らせてもらいますね」
「あぁ、紗世ももうすぐ起きてくると思うが、あいつは7時まで何もしようとしないからなぁ。鎌李がしてくれるならあいつも楽できるから何も言わないだろう」
「そういえば、私昨日の鎌李くんのシチュー食べられてない!」
霞は、どこから聞いたのか、昨晩のシチューを食べ損ねた事をなぜか悔やんでいるようだ
鎌李は、そのシチューの残りを温め、パスタを茹で、皿にパスタを盛り付けてシチューをかける
「霞さん、できたぞ。昨日のシチューを使ったパスタ」
「やったー!それじゃあ、いただきます」
霞は、おいしそうにパスタをパクパクと食べて行き、雄仁もその隣で多めに盛られたパスタを食べている
「どうした?鎌李は食べないのか?」
「はい、今から遥を起こしにいくんで、後で食べまス」
「お父さん、鎌李くんは大好きな遥と一緒に食べたいんだって。だから、二人の邪魔したらダメだよ?」
鎌李はふっと笑い、階段を登って遥の部屋に向かった
遥の部屋の前に着いて、ドアを開けると、遥はまだスヤスヤと眠っていた
「遥、起きろ、朝だぞ・・・・はぁ、次に来るまでに起きてなかったら、蚊の羽音でも聞かせるか」
「ん、くぁ~、うにゅ。ん、鎌李?」
遥は大きくあくびをし、寝ぼけた目で鎌李の名前呼んだ
「おはよ、朝飯できてるから早くおりて来い」
「うん、わかった。鎌李、着替えさせて~、眠い」
遥は抱っこをねだる子どものように、両手を鎌李に向けて広げている。鎌李が遥の家に泊まった回数は何度もある。その度に遥は着替えさせて欲しいというが、鎌李が遥を着替えさせたことは、二人が幼い頃に二回程度。理由は、遥は朝起きたら下着も一緒に、今着ているものを全て着替えるからだ。幼い頃、といっても小学五年生の鎌李には、幼馴染みとはいえ、女の子の裸は刺激が強すぎだったのだ
その時、遥は二度寝をしていたので、鎌李の苦労に気付いていない
「いいけど、小さい頃みたいに下着のチョイスに文句言うなよ?」
「うん、わかった」
鎌李ば遥をベッドに寝かせ、制服などの着替えを出してから今着ている寝間着を脱がす。遥は寝る時はブラを着けない事を知っているので、上を脱がすと、幼い頃とは違って大きくなった胸が服の中からふよふよと揺れながら、その柔らかさを主張して出てくる
「あぁ、ある意味一緒に風呂に入った時よりエロいかも。とりあえず、早く着替えさせよっと」
鎌李はテキトーに手に取ったブラを着けさせ、次にズボンを脱がす
「ふぅ、さすがにこっちは穿いてるか。まぁ、これも脱がすんだろうけどな」
鎌李はため息を吐いて、遥のパンツを脱がし、こちらもテキトーに手に取ったパンツを穿かせる
そして、例に漏れず、遥はいつの間にか二度寝をしていた
「ったく、こんなの俺じゃなかったらヤりたいほうだいだぞ?まぁ、俺だからこうしてんのかも知れんが、もう少しは男を警戒しろっての。ほら、終わったから起きろ!」
「ん、うん。おはよぉ、鎌李」
学校の制服姿の遥は、目をこすりながら小さくあくびをした
遥は、よろよろと立ち上がると、下の階に行こうとしたのか、ドアに向かって歩き頭をぶつける
「あうぅ、痛い」
「はぁ、ドアが開いているかどうかもわからねぇのか?それとも、毎日そうやって自分をいじめてるのか?まぁ、どっちだろうが、バカかドMかしかお前に選択肢はねぇがな」
「むぅ、それならバカの方がいいなぁ。だって私、ドMじゃないもん」
「何言ってんだ?遥は完全にドMだろ?」
「ひゃんっ!」
そう言って、鎌李は遥の首に指を這わせ、遥の身体がビクンッと跳ねる
「もう、急にやめてよぉ。ビックリしたじゃん!」
「じゃあ、急にじゃなかったら良いのか?それじゃあ、するぞ?」
「急にじゃなきゃ良いってもんでも、ひゃうっ!あ、ダメ!脚は弱いの、ひゃんっ!鎌李、くすぐったいってば、ひゃぅんっ!」
身体に指を這わせる度に小さく悲鳴をあげる遥の姿に、鎌李はケタケタと笑っている
すると、急にドアからガチャリと音がしたと思えば、ドアの隙間から遥の母親の紗世さんがこちらをじっと見つめていた
「あなたたち、朝から何をしているの?イチャイチャするのは良いけど、もう少し静かにしなさいよね。下まではどうか知らないけど、廊下には丸聞こえよ?」
「え、嘘!?もう、鎌李のバカぁ!」
「いやいやいや、遥が声出してたんだろ?それじゃあ悪いのは遥だって。痛い!わかった、謝るからやめろ!」
鎌李が遥の両手を押さえて押し倒すと、遥はすっと大人しくなった
「私って、本当にドMなのかな?その、鎌李にいじられてる時が一番楽しいっていうか、鎌李にいじられないと寂しいっていうか。酷いのは嫌だよ?でも、それでも、もう少しして欲しいって思うこととかあるの」
「そっか、それなら構って欲しい時は言えよ。その時は遥が泣かないように加減してメチャクチャにしてやるからよ」
「うん。じゃあ、キスして欲しいな」
遥は体の力を抜き、鎌李は遥の唇に自分の唇を重ねた
◇
二人がキスを止めたのは、霞が二人の様子を見にきた時、大体十分は経過していたようだ
二人は朝食を食べ終えると、学校へ行く準備を済ませた
「それじゃあ、行ってきまーす!」
「お邪魔しました、行ってきます」
二人は家を出て、仲良く通学路を歩いて行く
えっと、続きです。よろしければどぞ。