表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
とらんす れぐれっしょん?  作者: 灰石
1章 とらんす&れぐれっしょん?
3/7

1-3  剣と魔法の世界へ

※発見された時の経緯がおかしかったのを修正

 小学生の時、俺は一人の"少女"に恋をした。でも、思いを伝える前に何処かへ消えてしまった。


 中高生の時、俺は一人の"青年"と友達になった。でも、そいつを守りきることができなかった。


 二度も大切な人を失い、三度目の正直と言わんばかりに神様から贈られたチャンス。俺は今度こそ、失わずに済むだろうか。今度こそ、思いを伝えることができるだろうか・・・。




 1-3   剣と魔法の世界へ




 目覚めたらなんとやらなトンデモ現象、略してMNTから二夜が明け、現在は日曜日。俺は由々しき事態に直面していた。え、なんだその略語・・・だって?気にしたら負けだ。


 さて、状況を整理しようか。現在、眼前に鎮座してあらせられるは、純白フリルの聖衣(赤リボン付き)とこれまた純白のワンピース。シャワー後の俺はタオル一枚。隣では洗濯機がゴウンゴウンとけたたましく音を立てている。


 お分かりいただけただろうか・・・?


 そう、まさに板ばさみ。フリッフリの真っ白いショーツを穿くか、タオルのままでいるか。どちらをとっても何か大切なものを失うことに変わりはない。それどころか後者の方がいろいろとヤバイ気がする。かといって前者を進んで選ぶ猛者でもない。せめて縞パンとかだったらコスプレみたいで気分的に楽なんだけど・・・。


「替えがもうそれしかないから、恥ずかしいかもしれないけど我慢してねー?」


 絶対確信犯だ、わざと買ってきただろコレ!?昨日までのシンプルな奴といろいろ違いすぎる、心の準備期間はどこ行った!告訴も辞さない!ちょっと申し訳なさそうに言ったって俺は騙されないぞ・・・と、頭の中で憤慨していると我が姉『上泉 桜』が再び戸を少しだけ開けた。


「あんまり遅いと無理やり穿かせるわよー?」

「ぴぃい!?」


 こちらの様子を窺いつつそう言うと、戸を閉めて家事に戻っていった。個人の自由はどこへ消えた。というか・・・・・・うわぁぁぁぁあ、『ぴぃ』ってなんだよ『ぴぃ』ってそんな悲鳴聞いたことないよあぁぁぁぁぁはずかしぃぃぃぃ!


 ひとしきり悶えて何とか心を落ち着かせた後、再度純白のショーツを睨みつける。あぁ、寝汗なんてかいてなかったらこんな事にはならなかったのに。いや、遅かれ早かれ穿かなければならなかったのだろうし、いまさら何を言っても仕方がないか。どの道穿くことになるなら、さっさと穿いてしまった方が後々気分的に楽になだろう。子供用の物だし、際どい下着ってわけじゃないし、これもコスプレだと思えば・・・。


 思いつく限りの理論武装を終えた俺は、ゆっくりと聖域へ足を踏み入れる。心の中で何かにヒビが入る音がした気がしたが、たぶん気のせいだろう。その勢いのままにワンピースにも袖を通し、俺は軽い足取りで脱衣所を出た。


「やっと終わったのね・・・って、優・・・顔真っ赤よ?」


 分かってることを言うんじゃないよこの姉はぁ!!



 ◇



 疲れ果ててリビングのテーブルに突っ伏していると、俺の後にシャワーを浴びていたらしい司が入ってきた。・・・あ、ちょっと顔が赤い。


「なにニヤニヤしてるんだ、お前は」


 心なしか声に張りがないのは、気のせいじゃないだろう。周りの男子がえろちぃ話をしても眉ひとつ動かさずにあしらっていた司でも、さすがにアレはきつかったようだ。そう思うとちょっと安心した。


「何でもないですよー、えぇ何でもないですとも」

「・・・そうか」

「朝ごはんできたよー・・・てなにニヤニヤしてんのよ」


 だから何でもないのですよー?ふむ、味噌汁にあまり物の煮物ですか・・・うん、今日も飯がうまい。以前なら少なく感じたであろう量の飯を胃袋に詰め込んでいると、姉が唐突に話し始めた。


「そろそろ着るものも少なくなってきたし買い物に行きたいんだけど・・・」


 そうなんですか、俺はこんな体になってしまったのでお外には出られないのです。仕方ないので姉さんに頼まれてもらおう。人並みには羞恥だって感じるのです。


「いってらっしゃい」

「二人も一緒に行くのよ?」


 何をのたまっているんでしょうかねこの姉は。こんな姿でお外に出たらきっと死んでしまうでしょう、いろんな意味で。せめてこの服はどうにかならなかったのですか?俺はまだ死にたくないのです。


「いつまでも引きこもってる訳にもいかないでしょう?今後のためにも外に出る練習は必要だと思うのだけど・・・・・」


 うぐぅ・・・言い返せない。元の体に戻るまで引きこもることだってできる、けどそれじゃ何も進展しない。それどころか、事態は最悪な方向に向かうかもしれない。いつ元の体に戻れるかもわからない、そんな状態で引きこもるのは建設的ではないだろう。そんなことは分かっている、そう分かっているんだ。でも、分かっているのと行動に移すのとでははまた話が違うのだ。


 この体なら、今までとは比べ物にならない危険が待っていることだろう。誘拐、拉致監禁、変質者・・・等々、上げていけばきりがない。羞恥も想像を絶するだろう。そんな死地に昨日の今日で赴くのはさすがに無理があると思うんだ。


「・・・・・・うーん、やっぱりまだ無理そうか。まぁ、仕方ないわね。・・・んー、どうしたものか・・・」


 姉はため息をついたきり考え込んでしまった。司のほうをちらりを見ると、こちらも何か考え込んでいるようだった。その場に重い沈黙が流れる。自分のせいなのに何も言い出せない、それがひどくもどかしかった。

  

「・・・ぁあそういえば!『VRギア』を使うのはどうでしょうか?あれなら練習にはもってこいだと思いますが」

「VRギア?・・・そうね、いいかもしれない」


 盲点だったわ・・・とつぶやく姉。


 『VRギア』 医療技術として開発していたフルダイブシステムを流用し、10年前に家庭用として発売されたそれは、ゲームが好きな者なら喉から手が出るほどほしいと思う代物だろう。しかし、ゲーミングPC すら凌ぐ価格設定の涙を呑む者も多かったという。それでも、多くの人がそれを買い求めた。余談だが、初期型は生産数が少なかったため、現在ではプレミアが付き倍以上の値段になってしまっている。


 しかし、同時に発売されたゲームはどれも完全体感型というにはあまりにお粗末なものだった。はっきり言ってしまえば、リアルさがまったくなかったのだ。触覚、視覚、聴覚、味覚、嗅覚・・・五感をすべて再現するのは、今までのゲームとは比べ物にならないほどの作業量となる。各企業は予算や時間の関係から不可能と判断し妥協してしまったのだ。期待されていただけに、ネットや世間での落胆の声は大きかった。


 あきらめムードが漂う中、とある掲示板での一つの発言が状況を一変させた。


【そんなに言うならお前らで作ればいいんじゃね?どうせ暇だろ】


 その書き込みを機に掲示板は大炎上、その波はネット全体に広がって行った。暫くすると、有志による製作プロジェクトが本当に発足されてしまった。企業では無く一般人でありあくまで趣味だ、という免罪符を掲げ時間と労力を惜しみなくつぎ込んだこのプロジェクトは、次第に大小様々なゲーム会社が人員や資金を提供し始め、どんどん大きなものとなっていった。これが大体三年前の話だ。そして今年の初め、ついにクローズドβまで漕ぎ着けたのだった。


 抽選に当たった司が、鼻息を荒くしながら熱く感想を語っていたのを覚えている。倍率が最難関と言われている大学を軽く超えていたと言うことから、司の運の良さは推して知るべしである。


 ちなみに、俺は司と一緒にアルバイトをしてβに合わせてVRギアを購入・・・しようとしたが、姉と司に揃ってバイト禁止を言い渡されてしまった。暫くして一式そろってベッドの隣においてあった時は、そりゃもう飛び上がって喜んだものだ。まぁ、βには当たっていなかったのだが・・・。


「それなら出来そう、優?」

「わかんない・・・けど、やってみる」

「・・・よしっ、じゃぁ司君のお父さんに連絡して家から持ってきてもらいましょうか」


 司のお父さんは今日は休みだったらしく、すぐに司用のVRギアを持ってきてくれた。彼は、現在のこの状況を知る数少ない理解者だ。体が変わってしまったあの日、俺を見つけた姉さんと同じように司を見つけ、ちょうど連絡を入れていた姉さんと合流、その後四人で話し合って現状を把握し今に至る。その時に、司はこっちのうちに泊まるという話になった。非常事態だし、バラバラでいるのは危険だと保護者二名が判断したためだ。こっちとしても、そっちの方が安心するからありがたかった。




 午前中のうちにセッティングも終わってしまい、昼ご飯も食べ終わり、あとは起動するだけとなった・・・のだが、俺はあることに気がついた。


「あれ、姉さんの分は?」

「一緒に行きたいのはやまやまなんだけどね、今私のは壊れちゃってるのよ。さすがに職場の持ってくるわけにもいかないし。でも、安心して、そこら辺は抜かりないから」

「司のお父さんが来るの?」

「いや、私はそういったものに疎いのでね、持ってないんだ。すまない」


 となると保護者なしか・・・。この状況じゃお世辞にも安心できるとは言えないが、いったいどうするのだろうか。


「一緒のギルドにいたリア友の奴にさっき頼んどいた」


 へ―そうなのか、じゃぁ安心だな。・・・・・・・・・って


「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

「とにかく、そろそろ待ち合わせの時間だし行くか」

「いやッ!ち、ちょっとまって!それってどういう・・・!」

「向うで会って話した方が早い」


 そういうとギアを被ってさっさと先に行ってしまった。抜かりないというよりは抜け穴だらけのような気がするが・・・。行くしかない・・・のか・・・。えぇい、ままよ!もうどうにでもなれぇ!半ばやけくそになりながらギアを被り司の後を追う。


 不安でしかたなかった。でも・・・それでも、なんとなく・・・司と一緒ならうまくいくような気がした・・・。

祝!シリアス脱却!(わーどんどんぱふぱふー

いや、これからもちょくちょく入ってくる予定なんですけどね。シリアスばっかりだと気がめいっちゃうのです。好きなんですけど。


そして次回からついにオンラインパートですぞ!

想像が膨らみますなぁ

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ