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私のおしゃれは攻撃特化

掲載日:2026/05/13

「セリーナ!お前との婚約を破棄する!」


 学園の広間に響きわたるダミヤン第三王子の声。

 ……婚約してから数日も経っていないわよね?一度もしっかりお話したことないわよね?え、どういうこと?悲しみとか悔しさよりも驚きが先に来ちゃったわよ。


「……承知いたしました。理由をお伺いしても?」

「俺は着飾っている女が嫌いなのだ!お前は何だ!指輪もして、イヤリングもして、おまけに化粧もしてるときた。女は何も身につけないのが一番なのに、だ!……その点、この前出会ったラビエル令嬢は完璧だった。アクセサリーなんて一つも身につけず、化粧もしていない。――お前との婚約破棄が終わったら、婚約を申し入れようと考えているのだ」


 ラビエルさんは同じクラスにいる笑顔が素敵な男爵令嬢だ。こんな男につきまとわれるなんて可哀想に。

 確かにダミヤン王子の言うとおり、ラビエルさんはアクセサリーをしていない。昔彼女が、家が貧乏だから可愛いアクセサリーが買えない、と嘆いていた覚えがある。だけど化粧は……


「幻想を壊して申し訳ないのですけど――ラビエルさん、ナチュラルメイクしてますよ?」

「……なんだそれは?」

「自然な仕上がりに見える化粧のことです」

「な!?――つまりラビエル嬢も、化粧なんていかがわしい物をしているのか!」

「別にいかがわしくは無いですけど」


 王宮では一体どんな教育がなされているのだろうか。

 素面のまま出歩く女性貴族の方が少数派なこの世の中で、化粧がいかがわしいのだとしたら、結婚相手を探すのなんて出来るわけがないわよ。そんな事を言ってしまったら、王妃ですらいかがわしくなってしまうわ。


「まあいい。化粧は、まあ、お前が嘘をついている可能性もあるし、保留としよう。――だがアクセサリーはどうだ!お前はイヤリングもして、指輪もして、ジャラジャラ鬱陶しいわ!」


 厳密に言えばイヤリングじゃなくてピアスですけど……って、この男に言ったところでしょうがないわね。


「ジャラジャラって、ピアスと指輪の二つだけですけどね」

「二つもつけているではないか!意味も無くつけやがって鬱陶しい」

「……おしゃれだからつける、ではダメなのですか?」

「実用性がないものを身につけるなんてバカなのか?これだから着飾る奴は!」

「……ダミアン様愛刀の持ち手にドラゴンが刻印されているのは、実用性からなのですか?」


 私の言葉にダミアン王子が一瞬固まる。

 騒ぎを聞きつけたのか、いつの間にか周りに集まっていた人々から、クスクスと声を抑えた笑いが聞こえてくる。


「――う、うるさいうるさい!男は良いんだよ!男は!それに――ほ、ほらドラゴンが刻まれているとモチベーションが上がるだろう!大事なんだよ!」

「その理論でいくとおしゃれだからと言う理由も尊重されるべきですけどね。……後、言い忘れてましたど、私のおしゃれは護身用にもなるのです。――試されてみますか?」

「ふん!いいだろう!やってみろ!」

「――怪我されても知りませんよ?」

「護身用なんて適当に言っているだけだろう。怪我したら俺の日々の鍛錬が足りなかっただけだ。思う存分やるがいい!」

「ではお構いなく」


 そう言って私はピアスを耳から外すと、王子に近づき、王子の腕をピアスの針でチクッとさした。


「エイ」

「いっってぇ!いってぇ!」


 飛び跳ねるダミアン王子。針が刺さった所から血がプクッと顔を出す。

 まだまだ元気そうだ。


「エイ」

「いっっったいわ!やめんか!」

「エイエイ」

「いっっっっ!わかったわかったから!」

「エイエイ」

「いってぇええ!」


 何度か針で腕をつつくと、彼の腕は傷だらけになっていた。興が乗って、思ったよりもやってしまったわね。反省しないと。


「はぁはぁ。わかった。そのイヤリングの効果はよくわかった。確かにそれは護身用として使えるな。――だが、指輪はどうだ。さすがに護身用として、使い道などないであろう?」

「――ダミアン様。メリケンサックという武器はご存じでしょうか?」

「な、なんだそれは?」

「簡単に言うと、指にはめて使うと拳の威力が上がる道具です。指輪も似たような効果を持ちます。……そう。中央についているこの宝石が、今からあなたの顔面をえぐります。準備はよろしいですか?いきますよ?」

「な、ま、まt」

「そりゃぁ!」

「グジャベハッ!」


 私の右手がダミアン王子の顎を正確に捉える。揺れる顎。指輪でえぐれる皮膚。王子の間抜け面。

 ダミアン王子の顎に集約された衝撃は、一気に彼の体を駆け巡る。彼の体は一瞬空を舞い、地面に無様に着地した。

 ――彼が起き上がることはなかった。


******


 その後、私は学園の教師から軽い説教を受けた。やり過ぎだと。ただ、事前にダミアン王子が危害を加えられることを許可していたことと、彼が国王の認可を得ず勝手に婚約破棄したことが重なり、特に罰を受けることはなかった。

 ダミアン王子はあれ以降、アクセサリー恐怖症になったらしい。特にピアスと指輪を見るだけで、気を失ってしまうこともあるのだとか。

 ちなみにこの間、ダミアン王子はラビエルさんに婚約を申し込んだらしい。――その際ラビエルさんは唐突に指輪をつけ始め、ダミアン王子は卒倒したそうな。彼の恋が結ばれることはなさそうだ。

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― 新着の感想 ―
有名なRPGで「キラーピアス」という護身用武器が在りますけど、それに比べたら優しいですね。 無言で指輪を付けた……よっぽどヤダッタんですね。返事すらしたくないんだから(笑)
魔力的か機械的な何かがアクセサリーに仕込んであるかと思ったらまさかの物理。
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