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プロローグ

軍の形式についてはミスがある可能性有

誤字脱字の可能性有

 星歴3574年 12月 30日


 私は冗談があまり好きではない。

 ジョークも同様に好きではない。


 故郷の星を抜け出して両親に無断で帝国軍へ入隊し、訓練では好成績を残して魔道士もいる評判のいい部隊へ配属されることになった。

 帝国軍は約千を超える惑星を支配している大きな軍隊である。


 歩兵部隊や艦隊、更には魔法を扱える人間を集めた魔道部隊なども存在する。 

 皇帝陛下自身も護衛を付けずに前線へ出ることがあるらしいのだがその戦いぶりは凄まじいらしく、陛下の前に立つことは死を意味すると言われるほどである。


 私はこの帝国軍で8年間前線にて従軍し、少将へと昇進した。

 その過程で両親からの邪魔もあったが今や皇帝陛下直属の陸空魔混合特殊部隊である“ネクロ部隊”の指揮官を務めることになった。

 歩兵部隊が2個小隊の100人。

 航空部隊が2個中隊の73人。

 魔道部隊が3個小隊の61人。

 補給部隊が1個小隊の19人

 以上の253人が私の部下となり、私が指揮する前線で大きな活躍をしていった。


 そんなある日のこと。

 訓練を終えて演習場で昼食を食べている最中、皇帝陛下の側近から私へ緊急通信が届いた。


《急に連絡してすまない少将、少し緊急の任務を任せたい。詳細は機密情報ログの確認をしてくれたまえ。···との事だそうです。本件は機密レベル5に該当する内容ですので口外した場合──》


「···勿論承知している。了解した。」


 直後に通信が切断された。

 稀にあるのだが今回は明らかにいつもと違う様子だった。

 皇帝陛下が焦っている…?いやそんなことは無いはずだ。


 そう思いながら私は端末を開き任務を確認する。

 内容は帝国軍支配下にある惑星カイードに墜落した帝国軍生物実験用艦艇███(エラー)にて実験されていた被検体の回収だった。

 如何せん極秘任務のため大部隊は動かせない。

 それ故に少数精鋭に絞るしか無かった。


 そこで歩兵30人と魔道士14人、私と補佐官や船のパイロットを含めた49名で任務に赴くことになった。

 特にこれといった注意点は説明されてないのでいつものように拘束は捕虜と同様に行い、生存者は殺害しても良いということだ。

 ███(エラー)で何があったのかは操舵ログや艦内カメラを見れば記録が残っているだろう。


「少将、部隊の召集完了しました。無線機の回線はオールグリーンです。」


「了解した。諸君、突然の招集に応じてくれて感謝する。今回我々は皇帝陛下から直々に命令を受けた。」


 私は首元の無線に先程確認した内容を話した。

 一部の兵士がざわついたが問題は無い。


「我々は人間では無い。皇帝陛下に選ばれた特別な兵士だ!我々は帝国のために任務を遂行するだけの肉の塊だ!この任務を終えれば皇帝陛下はさぞお喜びになられるだろう!帝国万歳!」


 兵士達から雄叫びが聞こえる。

 教育の甲斐があったな。


 作戦には小型輸送艦2隻と簡易司令艦の合計3隻で行う。

 司令艦に乗り込み転送装置の座標を惑星カイードへ設定する。

 何年も座標設定をしているが如何せん千を超える膨大な数の惑星を支配しているため設定に時間がかかってしまう。


 「準備できたようですね、出撃しましょうか。」


 《了解。1番艦、2番艦は転移後そのまま重力圏へ降下し作戦を開始せよ。本艦は衛星軌道上から指示を出す。》


 転移装置が起動し、蜃気楼に似た空間に歪みが生まれる。

 黒く大きな円形のゲートが出現しそこを潜り抜けると惑星カイードが姿を現す。


 「···これが惑星カイードか。」


 「昔貴金属資源が豊富にあった星です。帝国軍へ支配される前に既に内戦で壊滅状態になっていたそうで…」


 「原住民はもう居ないわけか、環境的にもあまり手を加える必要がなさそうなわけだな。」


 提供されたこの星のデータによると先々代前の皇帝陛下が残党勢力を全滅させたとの記録があった。

 少なくとも40年は手を加えられていない。


 《こちら1番艦、目標の船を補足した。このまま降下し内部探索を行う。》


 《こちら2番艦、降下後周辺探索を開始する。》


 「了解、こちらは上空から指示をする。任務完遂を祈る。」


 兵士達に付けられたボディーカメラを確認する。

 墜落した███(エラー)の外見は激しく損傷しており、外壁が飛び散っている。

 壁の割れ目から1番隊が侵入した。


 《こちら1-1、内部に侵入した。簡易生体スキャンでは今のところ反応無し。》


 《こちら2-1、周辺をスキャンしたが虫の1匹もいません。》


 生体反応が1つも無い?

 艦内どころか外も全滅しているのか?

 ならば被検体は死亡している可能性があるな。


 「了解した。2番隊は周辺のクリアリングが完了次第内部への侵入せよ。」


 2番隊へ指示を出した後、1番隊から通信が入る。


 《こちら1-3、警備兵と研究員と思わしき死体を確認したが…》


 「何かあったのか。」


 不思議に思いボディーカメラを確認する。

 するとそこには銃を握った警備兵と血で真っ赤に染まった白衣を着た研究員が壁に横たわっていた。


 「···何が起きたのだ。」


 《死体を確認しましたが、研究員は頭部に銃撃を受けて即死のようです。警備兵に関しては頭部の一部が欠損して脳みそが飛び散っています。》


 《こちら2-3、同様に警備兵の死体を確認した。胴が切断されている、斬撃を受けたように見える。》


 「銃撃戦の跡はあるか?」


 《警備兵が発砲の痕跡はありますが、何と戦闘していたのかは現時点では不明。》


 情報が少なすぎる。

 コントロールルームへのアクセス権はこちらから何とかできるため兵士に向かってもらうしかないな。


 「2番隊の2-1から2-15、コントロールルームへ向かってもらいたい。情報が足りなすぎる、万が一生存者がいた場合は処分せず情報を引き出せ。」


 《《了解。》》


 魔道士から情報に関する連絡が無いということは死体から記憶の確保が出来ないわけか。

 

 カメラを切りかえ、艦内の発電機の起動に向かった部隊へ切り替える。

 少しだけ死体が見えるがどれも損傷の激しいものばかりだった。


 《こちら2-5、コントロールルームに侵入した。監視カメラや艦内の記録を確認したが、どうやら全て記録が魔力波による干渉を受けて破損しているようだ。》


 おかしい。

 艦内の記録管理のブラックボックスはこの程度の墜落では破損しないはず。

 となれば答えは1つだけだ。


 「司令官、1-1から報告が。実験エリアを確認、強化扉が破壊されています。侵入許可を求める、だそうです。」


 「了解した。総員戦闘態勢で侵入せよ、恐らく敵性存在がいるはずだと伝えておけ。」


 経験上何となくわかる。

 これは死人がが大量に出るタイプだ。


 兵士達のボディーカメラを見ているとNo.1と書かれた実験ポッドに被検体と思わしき存在が入っていた。

 しかしバイタルは停止しておりポット内の液体も血で染っていた。


 《こちら1-3だ、確認する限りNo.4以外の全てのポッドに被検体が入ってた。既に死んでいるが回収するのか?》


 「No.4のポッドはどうなっている?」


 《破壊されているようだ。強化ガラスと内部の液体みたいなのがが飛び散ってる。》


 墜落の原因は恐らくNo.4による暴走か。

 しかし警備兵の銃を奪うのなら銃撃痕はわかるが斬撃についてはどう説明すればいいのだ。

 ナイフ?いやそれではあの切り傷は作れない。

 もっと鋭利な物でないと───


 思考を巡らせていたその時。

 魔道士1人のボディーカメラが途絶えた。

 その瞬間銃声が響く。


 《───奴だ!撃て!撃つんだ!》


 《奴を撃て!早く───》


 1人、また1人とボディーカメラの映像が途切れていく。

 映像が途切れると同時に叫び声や断末魔、銃声が響く。

 気づけば1番隊のボディーカメラは誰も映らなくなった。


 《こちら2-9!1番隊が全滅した!撤退指示を!》


 《こちら2-15!奴に魔法が効かない!防御魔法を使われ───》


 奴の動きが早すぎる。

 ボディーカメラで視認することもできないとは。

 それに防御魔法を使えることも想定外すぎる。


 防御魔法を使えるということは銃火器は無効化されてしまう。

 つまりどうしようもない。


 「総員後退!乗船次第直ちに撤退しろ!爆発物の使用を許可する!」


 隊員の1人が対車両用ミサイルを発射した。

 天井が崩れ、瓦礫に奴が飲み込まれた。


 《ここは俺が!急げ!早く後退を───》


 1人の兵士が銃を構え他の兵士は次々輸送艦に乗り込んで行った。

 残った彼は瓦礫を破壊して向かって来た奴に対して発砲する。


 だが銃弾が奴に当たることは無かった。


 ボディーカメラの映像が途切れる瞬間。


 最後に映ったのは白い刀身の剣を持った黒髪の若い青年だった─────











 星歴3574年 12月 31日


 届いた報告書を読み上げる。

 被検体の確保に失敗し部隊が壊滅的な被害を受けたことが記されていた。


 「───ネクロ部隊が壊滅か。」


 男は報告書をゴミ箱へ投げ捨てようとした。

 ソファーに座ってた男が投げた報告書を掴み取る。

 

 「よりによって監査前にこんなことになるなんてな。そうだろ?()()()()。」


 「···ああ。面倒だよ。とてもね。」


 皇帝は外に広がる宇宙を眺め始めた。

 すると何かを思いついたのか口を開いた。


 「どうせ暇なら君にこの件を任せるよ。彼を好きにするといい、執行者(エンフォーサー)。」


 皇帝は不敵な笑みを浮かべ、時計を確認した。


 時間は丁度24時を回り年が明け、新たな時代を迎えたのであった───

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